trick blade


「とりっく おあ とりーと!」
 めいめいの衣装を着て練り歩く一同。
 先頭を行くのはノリノリのルッキーニ。
 後ろにはサーニャとリーネが、そして何故かペリーヌも同伴している。
「何ですの、この奇っ怪な儀式は」
「ハロウィン」
「私とシャーリーさんの国の行事ですよ」
「まったく……年中行事の多い部隊ですこと」
「ペリーヌさんも似合ってますよ、その魔女の格好」
「お、おやめなさい! どうせウィッチだからとかそう言う下らない……」
「みんなで楽しみましょうよ」
「よ~し、まずはミーナ中佐から襲撃ぃ~」

「「とりっく おあ とりーと!」」
 執務室の扉を開けると、ミーナは一同を見て少々面食らった顔をしたが、すぐにいつもの笑顔になり
「あらあら、ハロウィンね?」
 とすぐに理解し、用意してあった飴玉を皆に配った。
「はい、どうぞ」
「わーい、ありがとミーナ中佐!」
「ミーナ中佐、ハロウィンの事ご存じで?」
「シャーリーさんから聞いたのよ」
「やけに手際が良いと思ったら……」
「ほら、他の人の所にも行ってらっしゃい?」
 笑顔で見送られ、一同は何故か出鼻をくじかれた感じになった。
「……次、どこ行く?」
「芳佳ちゃんの所に行こう」
「あの豆……たまには驚かすのも良いかもしれませんわね」
「よーし、ごーごー!」

「「とりっく おあ とりーと!」」
「うひゃっ? みんなどうしたの、そのカッコ?」
「とりっく おあ とりーと!」
「??」
「あー、芳佳知らないんだ、ハロウィン」
「ハロウィン? 何の行事ですか?」
「お菓子くれないといたずらしちゃうんだぞ~ニヒヒ」
「お菓子? ええっと、今は無いから……台所に行けば何か」
「無いの? じゃあいたずらだ~!」
 とりあえず部屋に侵入し枕の位置を変えたり人形を逆さまにしたりと悪戯する一同。
「きゃーやめてー」

「ニヒャヒャ おもしろかった」
「次は何処行く?」
「う~ん、シャーリーはハロウィン知ってるから……普通にお菓子貰って終わりそう」
「それは普通ですわね」
「じゃあ、手近なとこへ」

「「とりっく おあ とりーと!」」
「おワ!? なんで皆して仮装行列?」
 タロットカードを片手に暇を持て余していたエイラは仰天した。
「お菓子くれないといたずらしちゃうんだぞ~ニヒヒ」
「お菓子? うーん……」
 カードを一枚めくる。しばし考え込んだ後
「とりあえずコレやるヨ」
 戸棚から飴玉を出し、皆にひとつずつ渡した。
「ヴェーダディゴデー」
 早速口に入れたルッキーニが悶え苦しむ。
「私の国の銘菓『サルミ……」
 喋ってる途中でサーニャにひっぱたかれるエイラ。はうっとよろけた所で、そのままエイラをベッドに押し倒すサーニャ。
「悪戯……しちゃうからね?」
「エ?エ? お菓子あげたゾ? てかちょっとサーニャ……」
 エイラはサーニャに唇を塞がれ、しばしじたばたとした後、ぐったりとなった。
 サーニャは背後に居た一同を見た。
 視線が合った一同は、数歩後ずさり、サーニャとエイラ二人をそのままに、無言で部屋を出た。

「気を取り直して、次どこ行く?」
「坂本少佐のところなんて如何かしら?」
「少佐の部屋は……誰も入った事が無いかと」
 リーネの意味深な一言で沈黙する一同。
「ハルトマン中尉の部屋は……ちょっと」
「じゃあ残るは……」

「「とりっく おあ とりーと!」」
「うわ? 何だお前ら?」
 部屋で本を読んでいたトゥルーデは突然の襲撃に驚いた。
「お菓子くれないといたずらしちゃうんだぞ~ニヒヒ」
「ふむ……」
 しばし顎に手をやり一同を見回していたトゥルーデだが
「よし、トリックで頼む」
「えっ」
「えっ」
 トゥルーデは椅子から立ち上がると、一同に向かってずいと一歩踏み出した。
「ならばこのお姉ちゃんがお菓子をやるからイタズラさせろ」
「えっ」
「えっ」
「ちょっと、大尉?」
「バルクホルン大尉が……」
「みんな、逃げるぞぉ~」
 顔色を変えて我先に逃げ出すルッキーニ。
「お前ら待てぇ! お菓子をやるから待てぇ!」
「逃げろぉー!」
 慌てふためき逃げ惑う一同を、切れ味鋭いダッシュで追い掛けるトゥルーデ。

「ほう、あれがハロウィンというものか。変わった行事だな」
「いやー、何か違うと思うんですけどね」
「てか、トゥルーデ止めないと」
 興味深そうに騒ぎを眺める美緒、呆れるシャーリーとエーリカ。
 ハロウィンの夜はまだ始まったばかり……。

end


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