ハロウィンでドッキリ作戦!プロローグ
夕方のブリーフィングルームにて。
芳佳、美緒、サーニャ、ペリーヌ、そしてエーリカの5人の魔女が何やら話している。
と言っても、作戦会議ではないので皆表情は穏やかに談笑していた。
ふとエーリカが思い出したように声をあげた
「あ、そういえばもうすぐハロウィン…だったっけ」
「はろ…うぃん?なんですの?それ」
「いや、あたしもウーシュに聞いた事だから詳しくは分らないんだけどさ…この時期になると死者の魂がこの
世に戻ってくるんだって」
「へぇ~!扶桑で言うお盆みたいなものでしょうか?坂本さん」
「むぅ…話を聞く限りでは近いようだが…」
思案顔で答える美緒。そんな時、おずおずと小さな声でサーニャが話し始めた。
「元々は収穫祭って聞きましたけど…」
「え?サーニャ知ってるの?ハロウィンの事」
「少しだけ……エイラが持ってる本に書いてました。元々はある民族の収穫祭で、それが宗教的なものに変わ
ってハルトマンさんが仰ったハロウィンになったそうです」
自分以外にも知ってる人が居て少し興奮ぎみのエーリカ。話は盛り上がっていく。
「へぇ~そうなんだ。確か…とりっくおあとりーと!だっけ?」
「そうです。10月31日に子供たちがオバケに仮装して、1件1件家を回るんです」
「回ってどうするの?」
「お菓子をくれないといたずらするぞぉ!って言って、お菓子を貰うんだって」
「ほぅ…扶桑のお盆にはない習慣だな。興味深い」
「…今は殆どお祭りのようなものみたいです。宗教的な物なので、受け入れられない地域も多少あるみたいで
すけど……」
その時、ルッキーニが入ってきた。ソファに座る芳佳の膝の上に元気良く座りながら、皆の話に興味津々の
様子。
「なになに~?面白い話?あたしもまぜて~」
「もちろん!今ね、はろうぃんについて、ハルトマンさんとサーニャちゃんから話を聞いてたんだ」
「はろうぃん?」
初めて聞く言葉に首をかしげながら続きを促すルッキーニ。
「ハロウィンになると、死者の魂がこの世に戻ってきて、子供たちは「お菓子をくれないといたずらするぞ!」
って言いながら家を回るんだって」
「うにゃー!お菓子!?やるやる!!あたしそれやるーっ!!シャーリーに言って、お菓子いーっぱい貰う
んだー!!」
お菓子と聞いて喜ぶルッキーニだが、次の芳佳の一言で落胆した
「あ、でも31日じゃないと駄目なんだっけ?」
「……ぇえー!!そんなのつまんなーい!!!」
落ち込むルッキーニ。しかしそれを見ていたエーリカがおもむろに言い放った一言で事態は急変する
「あたしもやってみよっかなー。別に、宗教とか考えずに軽い気持ちでいいんじゃない?ウチの隊、そこまで
宗教熱心な人見た事ないしさ。ここに居るみんなでやろうよ。残りの5人にドッキリを仕掛けるつもりでさ」
そう言ったエーリカの顔は、新しい遊びやいたずらを考えた子供のように無邪気だった。
「やるやるー!あたしシャーリー取ったぁー」
一番に乗ったのはやはりガッティーノだったが、あまりの勢いに美緒が待ったをかけた。
「おいおい、それは私もするのか?」
「勿論!ミーナにも息抜きが必要だよ!少佐だったら怒られないし♪」
当然のように言い放つエーリカだったが、この中で一番厄介な美緒を落としてしまえば話は早いと確信してい
た。それに美緒を味方につけてしまえば、怒られた時の罰も軽くなるかも知れない。
「な、なんだそれは!……うーん……確かに最近のミーナは仕事に追われているからなぁ…」
戦闘中は魔法を使い皆に指示を出し、帰還してからは書類に目を通したり、上への戦果報告をしたりと忙し
そうにするミーナ。
夜中には、執務室で机に突っ伏して寝息を立てている事が何度もあった。
「でしょでしょ?隊長の疲れを癒すのも副官の務めだって」
「そう…だな…よし。私も乗るぞ!たまには息抜きも必要だな。はっはっは」
美緒が乗った事で、もう1人も名乗りを上げる。
「さッ坂本少佐がするのでしたら、わたくしも是非ッ!」
「おっ!良いなペリーヌ。一緒にミーナを驚かしてやろう。はっはっは」
「はッハイ!!光栄ですわ!少佐にお供できるなんて…」
普段はツンツンしているペリーヌも、美緒が絡むとあっけない。こうして残るは二人になった。
内心ほくそ笑みながら質問する
「決まりだね。サーニャと宮藤はどうする?」
「私もやってみます。エイラはハロウィンの事知ってるかもしれないけど、それはそれで…」
「ははっ、そうだね。ま、エイラの扱いはサーニャが一番慣れてるだろうし…昨日夜間哨戒に行って今は寝て
るだろうから、寝起きってのも面白そうだね。て事で、サーニャはエイラ担当ね。後は宮藤だけだよ~?」
その場に居る9割が話に乗ってしまい、1人NOとは言えなくなった芳佳。
上官である美緒も参加するのだから、大丈夫だろうと覚悟を決めた。
「やります!私も参加します!!」
こうして6人のウィッチの「ハロウィンでドッキリ作戦」が開始されたのである。
続く