ハロウィンでドッキリ作戦!エーリカ編


言いだしっぺが最初にするのはセオリーだよね。
って事で、私が一番手に名乗りをあげた。最初に終らせてしまえば皆の驚く顔がゆっくり拝めるしね♪


そんなこんなで私は今、間に合わせの黒いマントを羽織ってトゥルーデの部屋の前に居る。
一応ドラキュラのつもりだけど、急だったからこんなものしかなかったんだ。

きっとトゥルーデはこの間目覚めたクリスに手紙でも書いてる所だろう。



よしっ!覚悟を決めて軽い深呼吸。

コンコン
「トゥルーデ、いる?」
「ハルトマンか?開いてるぞ、勝手に入ってくれ」

やっぱり居た。でも、これは相手に開けて貰わないと意味がない。

「トゥルーデが開けてよー!来訪者を招くのも部屋主の務めでしょー!」
「…はぁ、一体何を企んでいるんだー?どうせまたろくでもない事だろう?」
「そんな事ないよー!いいから早く開けてってばー」

中々鋭いけど、このプリティ天才美少女エーリカちゃんを侮ってはいけないよ、トルゥーデ。

「ねー!早くー!!お・ね・え・ちゃん♪」
「お姉ちゃんはやめろ!!今開けてやるから。全く、いつもは勝手に入って来るくせに…」

なんかブツブツ言いながら扉に近付いてくる。やば…これは説教モードに入っちゃったみたいだね…
でも取りあえず開けてくれるみたいだし、そうなれば電撃戦。早い者勝ちだよ!

…ガチャ
「なんだハルトマン。私は今手紙を書いている所なんだ。大体お前はいつも…」
「とりっくおあとりーと!!お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞっ!!」
「……………はぁ?」

ぷぷっ。はぁ?だって。トゥルーデ今凄い変な顔してる。クリスにも見せてあげたいな。
笑いを堪えながらもう一度言ってみる

「だーかーらー!ハロウィンだって!!お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうよ?」
「だからなんだ?そのハロウィンってのは。下らん遊びには付き合わんぞ」

呆れ返った様子のトゥルーデ。ドアを閉めそうになったから、思わず手を伸ばした。

「あっ!トゥルーデ、待ってよ!」

ドッ!
「ぐふぅっ!!」
「…あ、あれ?」

私の伸ばした手は見事にトゥルーデわき腹に入っていた。…あれ?なんで?
どうなったら私がトゥルーデにボディブロー決めれるの??

トゥルーデはお腹を抱えながらドアノブに手をついて呻いている。や、やばい。この状況は非常にマズい。
どうしよう。ひたすら謝っても、今のトゥルーデには逆効果かもしれない。こうなったら…

2回目の覚悟を決めてトゥルーデに向き直る私。
なんとか回復したトゥルーデは怒りと痛みのせいか、プルプル震えてる。ごめんね、トゥルーデ。

「エーリカァ……貴様、そこへなおれ!!…今日と言う今日は許さっッがふぅっ!!」

2度目のボディブロー。結構本気出しちゃったけど、大丈夫…だよね。わが隊のエースだし。お姉ちゃんだし。

気絶してくれれば、ベッドまで運んで「夢でした」って事にしてコッソリ抜け出そうと考えていた。



でも私の期待も空しく、トルゥーデは気絶してくれなかった。
あ、あれ?もしかしなくても、プリティ天才美少女エーリカちゃん、大ピンチ!?
トゥルーデの私を睨む目が座ってる…これは流石にやばい…逃げないと!!

「あ、私食堂に用があったんだ!じゃあそう言う事で…」

くるりと踵を返して逃げようとしたけど間に合わなかった。

「まぁ待てエーリカ。…少し話をしようじゃないか」
マントの襟首をガッシリ掴まれて走り出せない。呆気なく部屋に引きずり込まれるプリティ美少女エーリカちゃん。

扉が閉まる瞬間、廊下の角に心配そうに成り行きを見守る寮機達が見えた。
ごめん、私先に堕ちるよ…でも、任務だけは遂行させてよね…
あとは…頼んだ…よ…

そう言う意味を込めて親指を立ててみる。ちゃんと伝わってれば良いけど…


悠長に考えてたらベッドの上に放り投げられた。
何をされるのか少しおびえながらトゥルーデを見あげるけど、やっぱり目が座ってる。

ちょっとやりすぎた…よね。1回目は事故でも、2回目は本気だったし。

「ご、ごめんねトルゥーデ。殴るつもりはなかったんだよ。ちょっとテンパっちゃって…」
「ハロウィンと言うのは、お菓子がなければいたずらされるのか…?」

言い訳をする前にトゥルーデから質問されたので素直に答える。

「え?うん。そうだよ。トリックオアトリートって言って、お菓子をもらえなかったらいたずらしてもいいんだ」

大分端折ったけど、大体あってると思う。

「…なるほどな。だから私はいたずらされたのか…」
「いや、アレはいたずらって言うか事故って言うか…とにかく殴ったのは事実だから謝るよ。ごめん」

ボディーブローをいたずらだと思うのは、流石トゥルーデと言った所かな。どこか抜けてるんだよね、この
お姉ちゃんは。

一応正直に謝ったし、これで許してくれればいいんだけど…
トゥルーデは何か考え込んでいる様子でなるほど、と小さく呟き、こちらを向いた。許してくれるのかな。

「ハロウィンか…面白い行事もあったもんだ。しかしいきなり殴るのはどうかと思うが」
「だから、あれは事故なんだって!」
「2回目もか?パンチにかなり体重が乗っていたぞ。本気で落としにかかっていたようにしか思えん」

うぅっ!痛い所を…

「だっ、だから謝ってんじゃん!ごめんってば!そろそろ許してよ~」

お説教ぐらいなら聞いてあげるからさぁ。なんて火に油を注ぐような事言わないけど。

「ふむ。そうだな………いや、まだ許さん!」
「えぇ!!どうしたら許してくれるの?」

もしかして私の部屋の掃除とか?それだけは勘弁して欲しい。

「…私もハロウィンに参加しよう」
「え?どう言う…」

言い終わる前にトゥルーデが私を押し倒してきた。
か、顔!近いよっ!!恥ずかしいから駄目だってば!!!

そう言ったつもりだったけど、声が出てなかったみたい。顔を真っ赤にしながら口だけパクパクしてて、
トゥルーデがそれを見てくすりと笑った。自分だって私に負けないぐらい真っ赤なくせに。

「トリックオアトリート、だ。エーリカ」

そう言って私のおでこに軽くキスを落とした。



…今日のトゥルーデはなんか変だ。私が殴ったのはお腹だし、どこかで頭でも打ってたのかもしれない。
そうじゃないと、こんなにキザったらしい事しないはずだし。



………何よりも、こんなにかっこよく見えるはずがない。
もしかしたら、私の方が頭打ってんのかな。

とにかく、やられっぱなしは癪だから顔を真っ赤にしながらも反撃する

「わ、私だってトリックオアトリート!!なんだからっ」

そう言ってトゥルーデのほっぺにキス。

「おいおい、それ言えるのは1回だけじゃないのか」

怒った顔を作ってるみたいだけど、真っ赤になりながら言ってたら全然怖くないよ。

「私は何回使ってもいいの!!トゥルーデは駄目だからねっ!」
「なんだそれ、ずるくないか?」
「ずるくない!トゥルーデのばか!」
「なっ!馬鹿とは酷い言われ様だな…よし、仕返しにトリックオアトリートだ!」

そう言って今度は私のほっぺにキス。

顔を真っ赤にしてらしくない事をするトゥルーデがおかしくて、つい吹き出してしまった。
それにつられてトゥルーデも笑う。
お互い顔を真っ赤にしながら、おでこをくっつけたままくすくす笑った。


いつもとちょっと違う事をするトゥルーデは変だけど



……………………やっぱりかっこよく見えた。


fin



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