ハロウィンでドッキリ作戦!ルッキーニ編


にひひ…

次はあたしの番!!皆を見てるだけなんて、いい加減つまんないしね。


そう言ったらヨシカが順番代わってくれたんだ。


ハルトマン中尉とサーニャが戻って来ないけど皆何も言わないし、質問しても曖昧に笑うだけ。ペリーヌにいたっては
顔を真っ赤にして「不潔ですわ!」って怒るくらいだし。意味分んないよー!

……まぁいっか。
あたしも早くとりっくおあとりーとって言いたいなー!


あ、仮装するの忘れてたけど…まぁいっか!軽い足取りで扉の前に立つ。
誰の部屋かって?言わなくても分るでしょ?

大好きなマーマにそっくりだけど、その事を話したら何故か怒られて追いかけられたっけ。
本当は恥ずかしくてちゃんと言えなかっただけなんだけど…
マーマとは別の意味で大好きな……そう、あたしの大好きなシャーリーの部屋!!


シャーリーならきっとハロウィンの事知ってるだろうし、早くあの言葉を言ってお菓子を貰ってシャーリーと遊びたい。
以前中佐の部屋にノック無しで入ったらこっ酷く叱られたけど、あたしのシャーリーはそんな細かい事で
怒ったりしない。
だから、シャーリーの部屋に入る時はいつもノックなんてしないんだ。

驚くシャーリーの顔が見れる時もあるし、機械いじりに集中して気付いてくれないときもあるけど…
そんなときは気付いてくれるまで待ってるしかないんだけどね…

とにかく!あたしとシャーリーはそれだけ信頼し合ってるって事!!


ばんっ!
「シャーリィー!!とりっくおあとりー………と…?」



…居ない。どこにも居ない。ベッドにも机の下にも。
私が来ることをエイラみたいに察知して、逆に驚かせようと隠れてるのかと思ってたのに。

「……つーまぁんなぁーい!…もーっ!!!シャーリーのばかっ!ばかシャーリー!!」

そうやって騒いでいてもなだめてくれる人はここに居ない。
きっとハンガーでストライカーいじりでもしてるんだ…。
ストライカーをいじっている時のシャーリーは本当に楽しそうだから、遊んで欲しい なんて言えなくなる。

今日はまだ会ってもないのに………
きっとあたしと遊んでいるときよりも、ストライカーいじってる方が楽しいんだ。


シャーリーが自分よりもストライカーを優先しているように思えてきて、凄く嫌な気分になった。
音速を超えてからのシャーリーは、何かにつけてストライカーをいじっている。あたしはと言えばシャーリーの監視が
ある時以外はストライカーに近付く事すら禁止になってしまった。

今日だってそうだ。あたしを誘わないで1人でストライカーいじりなんかして。
もうストライカーと結婚しちゃえばいいんだ。バカウサギ!食べちゃうぞ!!

そんな事を思う自分が腹立たしくて、子供っぽいと自覚するけど認めたくなくて…
散々喚いた挙句、とうとうわけが分らなくなった。


「うぅ~…」

ぼすっ

勢い良く俯せに寝転がったシャーリーのベッド。

「…しゃーりーのばかやろぉ…」

そう言って勢い良く吸い込むと、大好きな人の匂いと共に心地良い眠気が差してきた。
そう言えば今日のシエスタがまだだったっけ…

いつも使っている毛布の代わりに、ベッドの上に投げ捨てられた赤いジャージに手を伸ばす。
本当ならあの毛布が一番良く眠れるんだけど、このジャージはシャーリーがオフの時に良く着ているジャージ
だから。シャーリーの匂いが染み付いている。

そんな訳で、あの毛布同様、もしかしたらそれ以上に心地良く眠れるんだ。

「うにゅ…」

赤いジャージを抱きしめ直して本能のままに眠りにつく。

少し高い窓から注ぐ光の帯は、それこそ音速に近い勢いであたしを夢の中へと誘った。




遠くからでも分かる。
あれはきっとシャーリーだ。

ハンガーでストライカーをいじっている。

「シャーリー!トリックオアトリートだよー!お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうよ~!!」

シャーリーを見つけた嬉しさで手を振り走りながら叫ぶ。それに気付いたシャーリーが振り返って微笑んだ。

「あぁ、ルッキーニか。悪い、私結婚することにしたんだ。コイツと。」

そう言ってシャーリーが愛しそうに紹介したのは、彼女のストライカーユニットだった。

「えっ!どういう事シャーリー?ストライカーと結婚って…ちゃんと説明してよ!」
「悪いな、もう行かないと駄目なんだ。お前も元気でやれよ。じゃあな」

そう言ってどんどん遠くへ行ってしまうシャーリー。片手を挙げて微笑んだままで小さくなっていくシャーリー。
訳が分からないまま必死で追いかけた。

「ちょ、待って、まってよシャーリー!置いてかないで!待ってってば!!」

走って走って、必死になっても追いつかない所かどんどん引き離されていく。
置いていかれるのが嫌で、必死に手を伸ばすけど全然届かない。

真っ黒な何かが、あたしの体を取り込もうと追ってきた。

「シャーリィ!!シャーリー!や、やだ、助けて、しゃぁぁりぃぃ!!」







…懇親の力で叫ぶと、あたしを取り込もうとしていた黒い物は無くなって、代わりに暖かいものに頭を撫でられて
いるような感覚がした。

「…ニ、私はここにいるよ…」

…あ、そうか。これは夢なんだ。………よかったぁ…シャーリーがあたしの事放っといてどっか行っちゃう
なんてありえないもんね。

音速はシャーリーの夢なのに、それを軽視してストライカーと結婚しちゃえなんて酷いこと考えちゃった。
そんな悪い子は、怖い夢みても仕方ないよね。
とにかく目を開けよう。

そしたら、きっと私の大好きな人が目の前にいるはずだから。











ストライカーの整備を終えて戻る途中、頭に三角の白い布を巻いた坂本少佐と、何故か魔力を解放したペリーヌ
に遭遇した。

「何て格好してるんですか少佐…」
「ム、シャーリーか。これはエドウィンと言ってな、菓子を貰う為にいたずらをすると言う遊びだ!はっはっは」
「しょ少佐!それではこの世に存在しないズボンメーカーになってしまいますわ!」
「…あー…もしかしてハロウィンのことですか?」

良く分かってなさそうな少佐に的確な突っ込みを淹れるペリーヌ。
この二人、案外良いコンビだったりしてな。中佐の前では絶対言えないけど…

「そう!それだ!!はっはっは!今からミーナを驚かしに行く所だ!そう言えば、ルッキーニがお前の所に
行っただろう?」
「いや、まだ来てませんよ。アイツこんなイベント好きそうだからお菓子用意して待ってたんですけどね」

苦笑いで答えると、驚いた様子の二人。最近ストライカーに集中していてルッキーニにかまってやれず、寂しい思いをさせていたのだ。
ハロウィンをきっかけに遊ぶ口実を作ろうと思い、実はこっそりお菓子用意していたけど、中々取りに来ないのでハロウィン自体を知らない
んだと思っていた。それならそうで教えてやれば良いとも思っていた。

そんな中、思いがけない言葉を聞いて唖然とした。


「そんな事ありませんわ!ルッキーニさんとは大分前に別れた所でしてよ」
「うむ。お前の部屋に向かったようだが…」

そんな…すれ違いだったのか…!

「えっ!!そいつはマズい!私、朝から今までハンガーに居たんですよ!」
「なら早く行ってやれ。お前なら大体どこにいるか見当がつくのだろう?」
「はいっ!失礼しまぁす!!」

言うが早いか、文字通り脱兎の如く駆け出して目的地へ向かう。
きっと、待ちくたびれて寝てしまっているか、下手したらハロウィンよろしくイタズラされているかもしれない。
1人にしたことを酷く怒っているだろう。


やっと着いた自室に静かに入る。
やはりベッドの上に居た。いつもの毛布変わりに私のジャージを抱いて寝ている。

安心したのと、寝顔が可愛らしくて、つい見入ってしまった。
不意に、彼女の顔が曇る。

「…まっ、て…」

悪い夢でも見ているのかと心配になって、顔を覗き込む。私のジャージをひしと掴み、小さな睫毛がふるふると震えていた。

「シャ、リ…ぃかな…で……やだ……い…」
「ルッキーニ、ルッキーニ!私はここにいるよ…早く目覚めておいで」

できるだけ優しく、髪をすいてやる。
あーあ…こんなに寝汗をかいて…
起きたらハロウィンよりも先に風呂だな。風邪でもひいたら大変だ。


そんな事を思いながら手を動かしていたら、彼女の瞼が呻き声とともにゆっくり開いていく。


…さぁ、我が眠り姫様のお目覚めだ。

見上げた彼女の顔が満面の笑みを作り上げ、私の名前を何度も叫びながら腕の中に飛び込んできた。
あんまりかまってやれなくてごめんな。大好きだよ、ルッキーニ。


fin



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