教えて、貴女と扶桑遊戯


「あれ、皆さん何をやっているんです?」
「あ、芳佳ちゃん」
「宮藤か。ちょうどいい所に来てくれた」
「どうしたんですか、バルクホルンさん」
「これなんだが……」
「これって……コマ、ですよね?」
「ほら、トゥルーデ! 私の方が正しかった!」
「ぬ、むぅ……」
「あの、リーネちゃん?」
「あ、えっとね。これ、扶桑からの支援物資の中に紛れ込んでたらしいの。それで、坂本少佐に詳しいお話を聞こうと思ったんだけど」
「そういえば坂本さん、今日は街の方へ行くって」
「うん、それで今皆で話てたの」
「そうなんだ」
「そうか! 宮藤、このコマと言うものには何か別に呼び名があるんじゃないか?」
「え? 別の呼び方、ですか?」
「カールスラントの堅物は諦めも悪いなぁ」
「ぐ…だ、だが、そう言うリベリアンこそ間違ってただろうが!」
「さてね? まだ宮藤から答えは聞いてないし」
「む。…それで、どうなんだ宮藤」
「あ、いえ……とくになかったと思います」
「あ、あれ? オダイ・カーンってコレの事じゃないのか?」
「ヨイーデ・ワナイカも違うのか?」
「…………」
「あ、あの、芳佳ちゃんが絶句してます」
「……どっちも…違うみたいだなリベリアン」
「みたい…だね。あ、あはは……」
「ほら、シャーリー見て見て!マキビーシ!」
「ちょ、ル、ルッキーニちゃん! それはおはじき! 使い方違うよ!」
「ハジキ!?」
「どうしてペリーヌさんが反応したんですか!?」
「あ、あら? ハジキは扶桑の炸裂弾か何かではなかったかしら…?」
「いえ、初耳です。……これは、おはじき、といって机上で遊ぶ…そうですね、ビリヤード……みたいなモノ、です」
「ルッキーニ、まだこれあるの?」
「宮藤、こっちのオダイ…じゃなかった、コマはどうやって遊ぶんだ?」
「シャーリーさんも、結構負けず嫌いですよね」
「あはは……あー、宮藤も言うようになったなぁ」
「あはは、すみません……あ、えっと、これはですね……あの、ヒモが一緒にありませんでしたか?」
「これか?」
「ありがとうございます、バルクホルンさん。ここにヒモの端をこうやって……」
「へぇ……」
「ほぅ……」
「ぐるぐるぐるりん…っと、これで準備完了です」
「それをどうするんだ?」
「えっと……あ、ちょうどいいものが」
「……鍋の蓋?」

「この前取っ手が壊れちゃったんですよ。これを裏返して下にタオル敷いて……っと。では、行きますよ……えぃやっ」
「うおおっ!!」
「なんとっ!!」
「こうやって遊ぶ物です。ちなみに複数人で遊ぶ場合は、同時に投げ入れて先に止まったり外に出たら負けです」
「なかなか面白そうだな!」
「ふむ、投げ入れる力加減も必要みたいだな」
「また、何か難しく考えるー。堅物はやらないのかい?」
「あ、待て!誰もやらないなんて言ってない!」
「ウニャー!!?」
「ルッキーニちゃん?」
「ふふん、これで私の三連勝ですわね」
「い、意外と強いね、ペリーヌ」
「うー、もう一回!今度は私が赤色のおはじきでやるっ!」
「はいはい。ハルトマン中尉は、どうなさいます?」
「ん? 私はリーネと交代するよん。では、リネット軍曹、奮戦に期待する。なんちゃって。……あ、トゥルーデ、負けてやんの~」
「リーネちゃん、おはじきのやり方は見てた?」
「えと、こうやって指で弾くように……だったよね?」
「ああ、ほら。ルッキーニさんは少し力を入れ過ぎなのです。少しだけ肩の力を抜いてみなさいな」
「む? ん~……えいやっ……やたっ!」
「ふふ、お上手ですわ」
「………えい」
「ウジュ!?」
「な!?」
「……うわぁ、リーネちゃん。なんて正確な狙撃を……」
「くぅ、ま、まだ負けた訳ではありませんわよ!?」
「先手必勝~っ……あ」
「ですから、ルッキーニさんは力の入れ過ぎです」
「くすくす」
「ふふ……あれ、どうしたんですか、ハルトマンさん」
「ミヤフジ。これって」
「これはけん玉ですね」
「いや、えっと……ああやって遊ぶ物なの?」
「はい?」
………カチ……カチャ………トスッ
「サーニャがさっきから黙々とやってるんだけど……」
「す、凄い。普通は、この木の部分を持って玉を乗せる遊び、なんですけど……」
「玉の方を持って出来るもんなんだ……いや、また器用だね、サーニャは。……それに比べて」
「はい?」
「……エイラさぁ」
「……え、エイラ…さん…?」
「ん? なんだヨ。二人とも」
「……エイラ、さっきからずっとソレばっかり」
「う……ご、ゴメン、サーニャ。……ちょっと懐かしくてサ」
「あれ、エイラさん。それ、遊んだ事あるんですか?」
「ああ。ちょっと、ナ。スオムスのとある中隊に扶桑の奴がいて……まぁ、色々あって、貸して貰ってた事があるんダ」
「ふーん、それ面白いの?」

「別に面白い事なんてねーヨ。一人でもくもくとサイコロふってコマ進めるだけなんだゾ?」
「……あの、まさか……その時もお一人で遊んでたんですか?」
「……は? 遊びってなんの事だヨ」
「……え?」
「エイラさぁ、いや私も詳しくは知らないけど、使い方違うんじゃない?」
「………エ゛?」
「ぐすっ……エ、エイラさん…ずっと…お一人で……ッ」
「……あー、エイラ……その、ごめん」
「エイラ……、エイラは一人じゃないよ。今は、皆がいるからっ!」
「ちょ、な!? ま、待テ! ちが、なんかサーニャもお前らも何か勘違いしてるゾ!!」
「エイラ……」
「エイラさん……」
「……まったく、水臭いですわ」
「エイラぁ……元気だせ?」
「………ルッキーニの言う通りだ、エイラ」
「な!? そ、そんな目で私を見んなァー!!!!!!!」
 

 
「まったく、美緒は……」
「はっはっはっ。まぁ少しくらいいいだろ?」
「買い物に付き合えだなんて言い出したかと思ったら、ボードゲームのコマに使えそうな小物探しだなんて。本当にいきなりなんだから」
「いや、な。ほら、たまには隊全員で遊びに興じるのも一興……ん?」
「あら、なんだか騒がしいわね? どうかしたのかしら」
「ふむ……とりあえず行ってみるか」
『そ、そんな目で私を見んなァー!!!!!!!』
「おい、一体どうし…………いや、どうしたんだ、この状況は?」
「トゥルーデ? フラウまで、貴女たちどうして涙ぐんでいるの!?」
「み、ミーナ…少佐ッ…う、くぅっ……」
「ミーナお願い! 何も聞かずに皆で遊んで!!」
「坂本さん! エイラ…さん…ぐす、…ずっと…一人で……ふぇ……」
「……なんなんだ、一体」
「……まぁ、美緒の予定通り、なのかしら?」
「と、とりあえずだ。ミーナと全員分のコマを買ってきたから、な?」
「ああ、もう!! あンの、味方落としのエロ狸ー!!!!!!!!!」
 
みっちゃん、ブリタニアでは今日もそんな一日を送ってます。
隊の皆で、泣いたり、怒ったり、笑ったりの毎日。
扶桑に戻ったら、お土産話がたくさんあるんだ。
だから――
 
「……こうなったら、一人延々と部屋に篭って研究し尽くしたあの日々にかけて!! 絶対に勝ってやんだかんナぁああああ!!!」
 
ボードゲームは皆で遊ぼうね。
 
 
 
おわーり


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