call me


 醇子がやって来てからの501は色々な意味で賑やかだ。
「ホント、扶桑の魔女って……」
「どうしたミーナ、何か問題でも有ったか?」
「いえ。……と言うか貴方に聞くだけ野暮ね、美緒」
「?? 何の事だ?」

「ねーねージュンジュン、あそぼーよ!」
「え、でもこれからやる事有るし……」
「そんなの後でいいじゃん! ねえシャーリー?」
「おいおい、あんまり竹井大尉を困らせるんじゃないぞ」
「えーでもー」
 食堂での夕食後、賑やかに団らんする一同。醇子もすっかり501に馴染み、「研修生」とは思えぬ感じである。
 そんなかしましい一同を見て、微笑む芳佳。
「竹井さん、人気ですね~」
 芳佳が目をやる先では、シャーリーとルッキーニに遊ばれる醇子の姿が有った。
「ねージュンジュン、あそぼー」
 母親におねだりする子供みたいに絡みついていたルッキーニが、ふと芳佳の視線に気付いた。
「芳佳ぁ? どーかしたの?」
「え? ううん、何でもないよ。楽しそうだなって」
「芳佳もあたし達と一緒に遊ぶ?」
「ゴメン、後でね。私、これから厨房で片付けしないと」
「ふーん、つまんないのー。ねージュンジュン、芳佳つまんなーい」
 ルッキーニはまた醇子に絡み付いた。無碍に出来ず苦笑いする醇子、それを見てニヤニヤするシャーリー。
 芳佳は席を立ち、厨房に向かった。食事の後片付けの為だ。

「ねえ、芳佳ちゃん」
「え? リーネちゃん、どうかした?」
 厨房で二人並んで食器洗いをする。それまでずっと無言だったリーネが突然、芳佳の方を向いた。
 芳佳はリーネの素振りには気付かず、目の前の食器洗いに専念していた。
「あ、そこのお皿取ってくれる? ……リーネちゃん?」
「芳佳ちゃん」
「お皿……」
「お皿なんて良いの、芳佳ちゃん」
「えっ」
 リーネは洗剤で泡だらけになっている芳佳の手を取った。芳佳はびっくりしてリーネを見た。
「リーネちゃん、どうしたの、突然」
「芳佳ちゃん。私は、ルッキーニちゃんとは違うよ?」
「え? いきなり何の事?」
「私が芳佳ちゃんをどうして『芳佳ちゃん』て呼ぶか、分かる?」
「どうしてって……友達、だから?」
「わかってない」
 リーネは芳佳を厨房の奥に引き込むと、ぎゅっと抱きしめた。
 何も出来ず、言葉も出せない芳佳。
「私は、ルッキーニちゃんみたいに『呼びやすいから』とか、そう言う単純な理由じゃないの」
「リーネちゃん」
「私の、一番大事な人だから。分かる? 芳佳ちゃん」
「リーネちゃん」
「芳佳ちゃんも、私を呼んでくれる理由がそうだったら、嬉しい」
「も、勿論だよ、リーネちゃん」
「ホント? 嬉しい」
 誰にも見えない厨房の奥で、リーネは芳佳を抱きしめたまま、ぎゅっときつく濃いキスをした。
 熱い吐息が漏れる。頬が紅に染まり、二人は何度もお互いの感触を確かめた。
「リーネ、ちゃん」
「芳佳ちゃん」
 ぼおっとした顔でリーネを見る芳佳。リーネの瞳は潤んでいる。
「ごめんね芳佳ちゃん」
「私こそ、なんか、ゴメン。分かって無くて」
「良いの。私、なんか重いかな?」
「そんな事、無い、と思う。私の大好きなリーネちゃんだから」
「嬉しい。……芳佳ちゃん」
 リーネに絡み付かれ、唇を塞がれ、数え切れない位に口吻を重ね……
 やがて誰も居なくなった食堂の横、厨房の奥で、ふたりだけの逢瀬が繰り返される。

end


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