falcate moon


 その夜、トゥルーデの部屋では部屋の主ふたり……彼女とエーリカがくつろいでいた。
 昨日の今日と言う事でアイパッチは付けたまま……エーリカにずっと“強要”されっぱなしで仕方なくと、
トゥルーデは半ば諦めにも似た境地でいるうちに、まんざらでもない感じになっていた。
流されやすいのか? と自問自答するも、エーリカの笑顔を見ているうちに
どうでも良くなっている自分が居る事に気付く。
「見て、トゥルーデ」
 エーリカに腕を引っ張られ、窓際に向かう。
 指差した先に浮かぶのは、鎌の様に鋭く、細い月。
「あんなに細い月、あったっけ?」
「月齢によってはこうなる事もあるだろうな。あれは三日月なのだろうか?」
「無粋だなあ、トゥルーデ」
 エーリカはトゥルーデをぐいと引っ張り、抱きしめると、言葉を続けた。
「なんかさ、こう、神秘的な感じ、しない?」
 意味ありげな笑みを浮かべたエーリカに、トゥルーデはそっと頬を寄せて答えた。
「する」
「だよね~。月は昔から神秘的なものだって話だし」
「まあな」
「しかも今夜は何か、分かる?」
「クリスマスの前の日だ」
「そそ。だからもっと」
「エーリカ」
「何?」
「今日は皆で、明日の為のクリスマスケーキを作ったり、部屋の飾りつけしたり、色々しただろ」
「うん。したよ?」
「ついでにルッキーニの誕生祝いもした。あれはあれでなかなか愉快だったが、まあそれは良いとして」
「良いとして?」
「私は訓練でも実戦でもないのに固有魔法を使わされて荷物運びだのさせられてだな……」
「いいじゃない。トゥルーデの有効活用。だってこう言う時って私の固有魔法、使えないじゃん」
「それはな……。お前が基地の中で使ったら建物が崩壊する……気がする」
「酷いな、その見方。部屋片付ける時とか良いんだよ?」
「あれは片付けじゃなくて撒き散らしてるだけだ。その後の私の苦労を……」
 いきなりエーリカにキスされ唇を塞がれ、言葉を失う。しばしゆっくりとお互いを感じ、確かめ合う。
「トゥルーデってば、雰囲気出ないな」
「そんなこと、ないぞ」
「じゃあ私の事、愛してる?」
「勿論だ。この命を掛けても良い」
「じゃあ『愛してる』って十回言って?」
「な、何故急に?」
「言わないと……」
「分かった分かった。愛してる、愛してる、あ……」
 またも唇を塞がれ、言葉が途切れた。
「もう良いよ、トゥルーデ」
「怒ったのか」
「なんか、照れる」
「あのなあ……」
 エーリカは照れ隠しか、窓の外を見た。月は二人を微かに照らし、夜空に細く、明るい輝きを放っている。
 トゥルーデはエーリカの肩を抱いた。エーリカは嫌がる風でもなく、トゥルーデに身体を預けている。
「エーリカは、私の事を」
「言わなくても分かるよね? でも言って欲しいでしょ」
「う……それは、まあ」
 トゥルーデの耳たぶにキスした後、囁いた。
「愛してる。誰よりもずっと」
「有難う」
「ふふ、やっと何かいい感じになって来たね」
 エーリカははにかんだ笑みを見せた。
 トゥルーデはちらりと部屋の時計を見た。まだまだ夜はこれから。
「お楽しみの時間だよ」
 エーリカはそう言うと、トゥルーデに全身を預け……そのまま二人してベッドに倒れ込んだ。
 そのまま抱き合い、何度も口吻を交わし、お互いを味わう。いつもしている事なのに、何故か興奮する。
「トゥルーデ」
「エーリカ」
 お互いの名を呼び……そして行為に没頭した。


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