北アフリカ1944 シャーロット


 …………。

「お、おいマルセイユ! こんな所でこんなことしてどうするつもりだ!」
「見ての通りだが?」
「何が見ての通りだ! 良いからこの手錠をはず……ひゃんっ、耳を舐めるな」
「ふふ、気にするな。ただちょっと確かめたいことがあるだけさ」
「ななな何をするつもりだぁっ! っていうか酒臭いぞ! 酔ってるだろお前!」
「ふふふふふ、それだけ大きいんだったら……ミルクとかも出るんじゃないかと思ってな」
「ちょ! 出るわけ無いだ……あああああんっっ! や、めろって……そんなにっ、激しく……」
「大きいだけじゃなくて感じやすいんだな、シャーリー……」
「ああああああんっ!!!」

 …………。


●北アフリカ1944 シャーロット

「今日も暑いー」
「暑いですね」
「ま、砂漠だしね。でも夜はちゃんと涼しくなるでしょ」

 炎天下に三人で佇む。
 私とルッキーニ少尉は屈んでお洗濯。
 お姉さまは私達の様子を見るためにちょっと立ち寄ったみたい。

「あーいうのは涼しいんじゃなくて寒いっていうの。外で毛布で寝られないよ」
「ああ、それは身体に悪いと思います」
「そうね、ちゃんとテントで寝なさいな」

 流石に屋外で寝るのはその軽装ではかなりつらい気がします。

「っていうか洗濯がツマンナイ! シャーリーがいないからもっとツマンナイ!」
「まぁまぁ、マルセイユが大尉同士でミーティングって言ってたんだから仕方ないじゃない」
「少佐の言うとおりです。実戦部隊は事実上マルセイユ大尉が率いていますから、上級指揮官同士での意識合わせは必要だと思います」

 お姉さまに同意して理詰めでのルッキーニ少尉の説得に参加。
 でも、ルッキーニ少尉はこういうのあまり通じないんですよね。

「扶桑もカールスラントも固いよ~、適当で良いじゃん」
「そういうわけにも行かないでしょ。ま、そろそろ来る頃だと思うから仲良くしてね。私も書類仕事があるからもう行くわね」

 案の定といった具合の適当な態度に愛想をつかしたわけでもないと思うけれど、お姉さまが言ってしまう。
 でも、言葉の雰囲気からするとすぐにシャーリー大尉が戻ってくるんでしょうか?
 よくわかりませんがお姉さまの言う事なので頷きます。

「はい、少佐」
「ウジューいてらー」

 と、お姉さまを見送った後一分もしないうちにルッキーニ少尉が口を開く。

「ねー、マミ、ヒマ」
「暇じゃないですよ。お洗濯してます」
「洗濯しててもヒーマーなーのー」
「いや、でも、何度も言ってる通りしっかり洗濯しようと思うと結構奥が深いんですよ。きっと楽しくなってきます」
「あたしはマミじゃないからこんなの楽しくないよ」
「うーん……なんと言えば良いのか……」

 ああ、会話にならない……。
 こういう天真爛漫な娘は見ていて楽しくはあるのだけれど、現実に軍という組織内で一緒に行動するとなると話は別です。
 お姉さまならどう諭すんでしょうか。
 と、悩んでいたら突然背後から人の声がした。

「暑い……」
「わっ」
「ウジャ?」

 あわてた振り返るとそこには暑さにだれた様子のシャーロットさんがいた。

「シャーロットさん」
「フニャ? マミ、この娘はシャーリーじゃないよ」
「マミちゃん、この娘は?」
「え、ええと……」

 シャーロットさんの突然の訪問に驚きつつルッキーニ少尉の当然の疑問を解消するために互いの自己紹介の仲介を行う。

「お互い顔合わせは初めてですよね。こちら、カールスラント陸軍のシャーロットさん。で、こちらはロマーニャ空軍のルッキーニ少尉です」

 いいながら、そういえば私達の部隊にロマーニャやリベリオンの人が混ざるのは初めてかも、と改めて認識する。

「そうなんだ。初めまして、ロマーニャのかわいい少尉。私は……」
「ニヒッ、えいっ」
「え? ってルッキーニ少尉!?」

 ルッキーニ少尉はシャーロットさんに抱きついてその胸に顔を埋めていた。
 って、この人なんでこう懲りないんですかぁ!

「ンニュー……努力賞?」

 しかも不満そうにひどい判定してる!
 た、たしかにシャーロットさんはカールスラントの人としては多分年齢相応くらいだとは思うんだけど私よりもよっぽどあるはずなのに……。

「…………」
「シャーリーと同じ名前だから見た目よりもあるかと思ったんだけどなー」

 そんな滅茶苦茶な……。シャーロットさん純粋に魔力が大きいですから、怒らせたら怖い気がするんですけど……大丈夫でしょうか?

「ルッキーニちゃん、楽しい?」
「うん、洗濯なんかよりずぅーっと楽しいよ」

 あ、よかった。
 怒っている様子はないみたい。むしろルッキーニ少尉に興味を持ってる気がする。
 結構人見知りする方だからルッキーニ少尉みたいな物怖じしない人とは合うのかな?

「へぇ、そうなんだ……真美ちゃん、えいっ」
「ひゃっ」

 不意打ちだった。シャーロットちゃんの手が私の胸伸びてその膨らみを確かめるべく動かされる。
 まさかシャーロットちゃんがそういう行動に出るとは……。

「マミちゃんはあんまり無いね」
「ウミュー、そうなんだよねー、マミは残念賞」

 うう、なんだか先日に引き続いて残念賞攻撃。
 口には出せませんけど私だっておっきいのには憧れてたりするんですよ。
 扶桑人なんで開始時点から不利ですけれど、せめて同じ年齢の時にはお姉さまの様になりたいと思いつつ過去の写真を見るに既に夢だったりするんですよね。

「でもお人形さんみたいでかわいくて似合ってると思う」

 笑顔でフォローというか素直な感想を言っているのは分かるんです。それは分かっているんですが追い討ちと感じてしまうのは私の心が狭い証左なんでしょうか。教えてくださいお姉さま。

「エイッ」

 私が項垂れている内に今度はルッキーニ少尉の胸に手を出していた。

「ニュハ、あたしはまだまだこれからだよ」

 ルッキーニ少尉は腰に手を当てて胸を張ってさも当然というように答える。

「でも今は残念賞?」
「ちーがーうーのー、あと何年かしたらばいーんばいーんになるんだから今はノーカウントなのっ」

 相変わらずなんだか言ってることが飛んでいるけれど短時間のうちに大分慣れた気がします。
 改めて自分の胸に手を当ててみる。
 ぺたぺた。
 無いですね、絶望的に。
 年齢からすれば本当はもうちょっとあってもいいと思うんですよ。
 お姉さまからは空を飛ぶのには空気抵抗が無くて良いじゃないとも慰められてましたが、マルセイユ大尉を見てる時点で説得力が皆無な上に、シャーリー大尉まで来てしまってはお姉さまの言葉とはいえもう素直に頷くことが出来ません。

「そうなんだ、すごーい」
「ふふーん」

 そんな私が落ち込んでいる間も二人の会話は継続している。

「フレデリカさんみたいになるのかな?」
「ふれでりか?」
「うん、私の上司で保護者。凄くおっきいよ」

 あー、確かにあの人もかなり大きい。かなりいい勝負なんじゃないかと思うけど、実際のところどっちが上なのかな?

「えー、きっとシャーリーのほうがおっきいよ」
「そういえばさっきも言ってたけどシャーリーって、誰?」
「え、ああシャーリーはシャーリーだよ。名前はシャーロット・イェーガーでリベリオンではやくておっきくてやわらかいのっ」
「よくわかんないけどおっきいんだ」
「うんっ」
「確めてみたいな」
「ダーメ。シャーリーのおっぱいはあたしのなの」
「え? えと……じゃ、じゃあフレデリカさんのを触っちゃダメ」
「ヴー、シャーロットのけちー」
「だってルッキーニちゃんが先に……」

 なんだか頭の痛い会話です。
 あー、でも、さっきお姉さまが言っていた仲良くしてあげてねっていうのはこういう事だったのかな。
 そうだとするとルッキーニ少尉とシャーロットちゃんの現状はとても望ましい状況だと思えます。
 何となく嬉しくなって目を細めながら二人を見守る。

「ねぇマミ!」
「マミちゃん」

 突然二人の話題の矛先が私に向けられる。

「あ、えと……何でしょう?」
「そういうわけで行って来るねー」
「また後でね、マミちゃん」
「えっ、あのっ、何処へ!?」
「フレデリカって人を探した後シャーリーのところ行って来るー」
「うん、それでどっちがより大きいか確認する」
「は、はぁ」

 や、やっぱりついていける気がしません。
 でも、もしかしたらああやってはしゃいだりするのがシャーロットちゃんの本当の姿なのかな?
 私の場合は、自分でも思うけれどちょっと態度が硬すぎる気もしますし……。

「いこっ、シャーロット!」
「うん、ルッキーニちゃん」
「いってらっしゃい」

 暑い中ばたばたと砂を巻き上げながら走っていく二人を見送りながら、はたと思い出す。

「あああっ、お洗濯!」

 結局一人で残りをやる羽目に……はぅ。


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