Ein Geburtstag


たまっていた書類の記入を終え、ふと部屋の時計を見ると長針と短針がてっぺんを指していた。
もう0時か……
明日も早いのでもう寝ようと思った矢先、私の部屋のドアを叩く音が響いた。
こんな時間に誰だろう?

「トゥルーデ、起きてる?」
「エーリカ?」
ドアを開けるとそこにはブラとスパッツに身を包んだエーリカの姿があった。
お風呂からあがったばかりなのか彼女の髪からはシャンプーの甘い香りがした。
「どうした? お前がこんな時間に起きてるなんて珍しいじゃないか」
私が問いかけるとエーリカは満面の笑顔を浮かべこう言った。
「うん、日付けが変わった瞬間に祝いたかったから……」
「何を?」
「何をって……今日、トゥルーデの誕生日でしょ?」
「え?」
カレンダーにふと目をやると3月20日の欄には赤丸でチェックがされていた。
「そうか、今日は3月20日か……」
「あれ? もしかして今日が自分の誕生日だって忘れてた?」
エーリカが屈託のない笑顔で私に問いかけてくる。
「あ、ああ……しばらく出撃続きですっかり忘れてた」
「いくら出撃続きだからって自分の誕生日、忘れるかな……まぁいいや、じゃあ改めて
トゥルーデ、誕生日おめでとう」
エーリカの笑みにつられ、私も顔がほころんでいた。
「ああ、ありがとう。エーリカ」

――その後私たちは昔話に花を咲かせた。
思えばこうやってエーリカと二人きりで話をするのは久しぶりな気がする。
「あはは、そういえばそんなこともあったね……ねぇ、私たちが出会ってからもう5年半だね」
エーリカが珍しく真面目な口調で私の耳元に囁いた。
「……もうそんなになるか」
思えばこの5年半、色々なことがあった。
悲しいこともたくさんあった。
でも、それと同じくらい嬉しいこともたくさんあった。
そして、嬉しいときも悲しいときも私の隣にはいつもエーリカがいてくれた。
本当、お前には感謝してもしきれないよ。

「どうしたの? トゥルーデ。黙り込んじゃって」
「え? いや、この5年半の間、私たちは常に一緒にいたんだなと思って」
「うん……」
「嬉しいときも悲しいときも隣にはずっとお前がいてくれた。本当に感謝している」
その言葉を聞いたエーリカが一瞬悲しそうな顔を浮かべたように見えたが、
すぐにいつもの笑顔に戻ってこう言った。
「えへへ、どういたしまして。ねぇトゥルーデ、ちょっと目瞑ってて」
「え? あ、ああ」
私は言われるがままに目を瞑る。
その間にエーリカは私の後ろに周り首元に何かをかけてくれた。
「目、開けていいよ」
私が目を開けると首元にはハート形のロケットがかけてあった。
「これは?」
「えへへ、私からトゥルーデへの誕生日プレゼントだよ。開いてみて」
私がロケットを開くと中には写真が入ってあった。
「この写真……」
「うん、出会った頃の私たち」
写真には肩を組んでいる私とエーリカの姿があった。
もちろん今より幾分幼い。
「素敵な誕生日プレゼントだ、ありがとうエーリカ」
私は感謝の意を込めてエーリカの頭を撫でる。
だが当の彼女は浮かない顔をしていた。
「う、うん……どういたしまして」
「どうした? さっきから浮かない顔をしてるな。何か悩みでもあるのか?」
エーリカは下を向いたまましばらく黙り込んでいたが、やがて口を開きこう言った。
「……トゥルーデやミーナと一緒に飛べるのもあと1年だと思うと寂しくなっちゃって……」
「エーリカ……」
ウィッチは本来20歳になるとそのほとんどは魔力が衰え、飛行できなくなる。
ミーナは先日の誕生日で19歳になり、私も今日で19歳となった。
それはつまり、私たちがエーリカと一緒に飛べるのもあと一年しかないということを意味していた。

「私、もっとミーナやトゥルーデと一緒にいたい」
普段のエーリカは本能的に周囲との和を取ろうとしているため、
他の隊員を気遣ったり悩みの相談に乗ることはあっても、
自分の本音を他人にさらけ出すことはほとんどない。
だからこうして自分の悩みを私に打ち明けてくれることがとても嬉しく、愛しかった。
「……エーリカ」
私はエーリカを強く抱きしめた。
「トゥ、トゥルーデ!?」
「エーリカ、なにも寂しがることはない」
私は母親が子供を宥めるような口調でエーリカに語りかける。
「私が飛べなくなっても、それで私たちの関係が終わるわけじゃないだろ? 私たちはずっと一緒だ」
「本当に?」
エーリカは顔を上げ、私に問いかける。
「本当だ」
「約束してくれる? 5年後も10年後もその先もずっと一緒にいてくれるって」
「ああ、約束する」
私ははっきりとエーリカに言った。
「……じゃあ、約束の証にキスして」

「……へ?」
エーリカがあまりにも普通に言うものだから私は彼女の発言を理解するのに少々時間がかかった。
……キ、キス?
「お、お前はい、いきなりなな何を言い出すんだ……」
私は自分の胸の鼓動が早くなるのを感じた。
「だから、私、トゥルーデとキスしたいの……トゥルーデは私とキスするの、イヤ?」
エーリカが少し顔を赤らめながら上目遣いで私に聞いてきた。
そ、その表情は反則だ……
「……分かった。 目、瞑ってろ」
「うん」
エーリカは私の言う通りに目を瞑る。
私はエーリカの可憐な唇に自分のそれを重ねる。
「トゥルーデ……んんっ……」
「エーリカの唇、柔らかいな……」
その後私たちはしばらくの間抱き合いながらお互いの唇を重ねあった。

「……これでよかったのか? 約束の証」
「うん、これで私たちずっと一緒だね……ねぇトゥルーデ、大好きだよ」
「……私もだ」
そのまま私たちは一緒のベッドで眠りについた。

fin


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