team


 ネウロイとの交戦で被弾し炎上するストライカー。お構いなしにとどめの一撃を食らわせ敵を粉微塵にした後、
すぐさま帰還するも出力が低下し、基地の目の前で不時着を試みるひとりのウィッチが居た。
 着地スレスレでふわりと身体を浮かせ、うまくタッチダウン。
 そのままストライカーを脱ぎ捨て、服に伝う火の粉を慣れた手つきで振り払う。
 煙を上げて燃えるストライカーを眺め、ひゅーと口笛を吹いた後、一部始終を目撃していた基地の同僚ウィッチ達に笑顔で近づく。
「やあナオちゃん。いつもカッコ良くてごめんね~」
 腕組みして不機嫌そうな、小柄な扶桑のウィッチに語りかける。
「……どこがだよ。燃えてるじゃないか」
 呼ばれた直枝は、呆れ半分に言った。
「ナオちゃんだってよく壊したり燃やしたりじゃないか。もやしっ子同士仲良くしようよ。ついでに皆で幸せになろう?」
「誰が『もやし』だ。伯爵の言うことはいちいち含みがあるから困る」
 うんざりした表情の直枝。
 騒ぎを聞きつけ、続いてやって来たのはニッカ。
「あーあー。ストライカー燃えてるぞ伯爵」
「誰かさんみたいに派手に壊すよりは良いんじゃないかな。これもひとつ滑走路誘導灯の代わりに……」
「なんねえよ!」
「それよりハンガー掃除どう? 進んでる?」
「今日は掃除じゃなくて正座だよ。でも何で正座なんだよ。拷問じゃないか」
 ニッカの愚痴も聞き流しながら、すたすたと歩きつつ基地に戻る三人組。

 ネウロイを恐れず、ストライカーの破損も自らの命も上官のカミナリをも恐れぬ
 彼女達のことを、ひとはこう呼んだ。
 「ブレイクウィッチーズ」と。

「そうそう、この前のことなんだけど聞いてくれるかな?」
「聞きたくも無い……って言っても喋るんだろどうせ?」
「ちょっとした用事でブリタニアに行った時のことさ。街で可愛い子に会ったんだけど、特に二人めに現れた子がタイプでね。
だからどうしたって言われると困るんだけど」
「オレもどう返せばいいか困る」
「しかしブリタニアは雨が多いし、食べ物があまり口に合わないんだよね。行ったことないけど」
「さっき行ったって言ったの嘘かよ?」
「いや、同僚のバルクホルン……、彼女の妹さんのお見舞には行ったよ」
「そういうとこはマメなんだな」
「で、どうだった?」
「回復したって言うんでお祝い代わり花束を持って行ったんだけど、バルクホルンから『私の妹に手を出すつもりかッ!』って
えらくキレられてね」
「そりゃそうだ」
「……伯爵なら有りそうだよな」
「おいおい待ってくれよ。誤解だよ二人とも。まさか同僚の妹さんに手を出すなんて……」
「有り得る」
「だな。現に何人ものウィッチが毒牙に……」
「そりゃないよ。確かに素敵な女性に声を掛けるのはボクの義務だけどさ」
「義務とか言うな」
「ボクも流石に幼女には興味ないよ。ただ好みの女性の年齢層は、下は0歳から上は……」
「対象範囲広すぎだろ」
「もういいよ。何でもアリじゃないか」
「あれ? この話興味ない? じゃあ他の話にしようか?」
「……」
「お前に興味が無い」
「つれないなあ。そういえば知ってた? 扶桑の女湯は女ばっかりなんだって。これホント、ナオちゃん? 
今度入ってみようかな?」
「伯爵が言うと洒落にならんからやめてくれ」
「女湯に女って当たり前だろ」
「えっ、そうなの?」
「驚くところが違うぞ」
「やっぱり伯爵ヘンだよ」
「そうか、やっぱりボクは軽い変態なんだ」
「言われなくても皆知ってるからいちいち言わんで宜しい」
「冷たいなあ。そうだ、こんな話を知ってるかい?」
「今度は何だよ」
「ナオちゃんって身長12センチ位しかないらしいよ。ウソだけど……ってナオちゃん暴力反対」
「オレの身長の事で馬鹿にする奴は……」
「おおっと待った待った。そうやって顔を険しくするのは良くない。せっかくの扶桑美人が台無しだよ」
「オレを口説いてどうする」
「えっ、違うの?」
「訳わかんねーよ伯爵」
「こういう話をするとナオちゃんから二~三発殴られるんだ」
「当たり前だろ。懲りないなぁ。ナオ怒ってるぞ。あとサーシャ大尉も怒ってたぞ。帰還したら指令所に来いってさ」
「仕方ない。ナオちゃんとニパ君の分も怒られてくるか」
「今日はオレは何も壊してない!」
「私もだぞ伯爵!」
「まあまあ、それは言葉のあやって事で……ところであやって何だろうね? ニパ君知ってる?」
「知るか。もう行けよ。大尉待ってるぞ」
 クルピンスキーを足蹴にし、基地へと戻る直枝とニッカ。
「しかし、ガリア奪還は501がやってのけたってのに、オレらときたら……」
「ガリアかぁ。ガリアと言えば華の都パリだよね。パリは寒い時に行くといいよ。行ったことないけど」
「伯爵まだ居たのかよ! 早く行けって!」

「クルピンスキー中尉、聞いてますか?」
「いや、勿論聞いてますとも」
「今回の不始末、どう責任を取るつもりですか?」
「どうって言われてもねえ……ネウロイが来たから迎撃しただけだよ。まあたまたまボクも被弾しちゃったんだけどね」
「たまたま、ですか?」
「たまたま……たまたま……弾弾、なんてね。ああ、じゃなくてビームビームと言った方が良かった? あれ? 違う?
いや、そんな怖い顔しなくても」
「中尉、そこに正座なさい」
「そう言えばサーシャさん、この前風でベルトがめくれたんだって? ベルト二重に履いててよかったね~寒かったでしょ」
「真面目に話を聞きなさい!」
「いや、だって場を和ませないと。これがボクの役目だと思ってるんだ」
「貴方には役目の前にする事が有ります。……分かってますね?」

「で、二時間正座させられてどう思った?」
「いやあ、ちょっとした冒険だったね」
「冒険?」
「それ本気かよ」
「訂正。ちょっとした拷問、かな」
「まったく。足ふらふらじゃないか伯爵。しびれてるだろ」
「ああっ、触っちゃダメ……あんっ」
「気色悪っ! 伯爵が身悶えるって何かヘン」
「ナオもそう思うか? 私もだ」
「二人揃って酷いな。だいたい、正座は扶桑の人しかしないって話だよ? 何でボクらもやる必要があるんだろうねぇ? ねぇ?」
「こっちみんな」
「ま、とりあえず、ストライカーの整備でもしようか」
「伯爵のストライカーはオーバーホールが必要とかで、後送されたぞ。どうすんだよ。暫く出撃すら出来ないぞ」
「じゃ、暇潰しに雑談でもしようか」
「またこれだよ……」
「こんな話はしたっけ? ボクはどんな暗いところでも、ハルトマン姉妹を見分ける自信があるよ」
「だから何よ」

 彼女達は、ネウロイが蔓延る最前線で戦う、ブレイクウィッチーズ。
 いつも何かしらピンチだが、助けを借りたい時は、いつでも言ってくれ。

end


コメントを書く・見る

戻る

ストライクウィッチーズ 百合SSまとめ