Marmalade Cake


「ふんふん……なんか良い匂いがするな~」
「うんうん、とっても良い匂い~」
ハルトマンさんとルッキーニちゃんが上機嫌な様子で厨房に入ってきた。
どうやらオーブンから漂う良い匂いにつられてやってきたらしい。
「ねぇ芳佳、今何つくってるの?」
ルッキーニちゃんが興味津々な表情で私に問いかけてくる。
「マーマレードケーキだよ、今日はリーネちゃんの誕生日だから、バルクホルンさんに
作り方を教わって作ってみたんだ」
そう、今日は私の一番の友達、リーネちゃんの誕生日。
私の作ったマーマレードケーキ、リーネちゃん、喜んで食べてくれるといいな。
「なるほど、リーネへのお誕生日ケーキってことだね……あれ? そういえば、
そのリーネは今どこにいるの?」
「ああ、リーネなら朝早くミーナと街まで出かけたぞ」
ハルトマンさんの問いかけにバルクホルンさんが答える。
「ああ、そういえば昨日ミーナがリーネの誕生日プレゼントに新しい服を買ってあげたいって言ってたけ」
「リーネちゃんの新しいお洋服かぁ……」
ミーナ隊長、リーネちゃんにどんな服をプレゼントするのかな。
リーネちゃんなら何着ても似合いそうだなぁ、えへへ。

「どうした~宮藤? ニヤニヤしちゃって」
ハルトマンさんが、不思議そうな表情で私に問いかけてくる。
いけない、私ったら。
リーネちゃんの新しいお洋服を想像してたら無意識のうちにニヤけてたみたい。
「え? な、なんでもないです」
私はなんとか平然を装って応える。
「ふ~ん、そうなの……てっきり私は宮藤がリーネの新しいお洋服を想像して
ニヤニヤしてるのかと思ったよ」
うぅ……どうやらハルトマンさんには全部見透かされたみたい。

「リーネの新しいお洋服かぁ……リーネって白いワンピースとか似合いそうじゃない?」
「いやいやルッキーニ、やっぱりリーネには裸エプロンでしょ」
「エーリカ、それはもはや洋服ではない……おっ、どうやらケーキが焼きあがったみたいだ」
バルクホルンさんがオーブンからケーキの入った容器を取り出す。
そのケーキを少し冷ました後、私はハルトマンさんらにケーキの味見をしてもらった。
「芳佳、このケーキすっごく美味しいよ!」
「うん、甘酸っぱくていい感じだよ、これ」
ハルトマンさんもルッキーニちゃんも満面の笑みでそう言ってくれた。
「良かった……初めて作るケーキだったから、美味しく作れてるか心配だったんですよ。
バルクホルンさんが丁寧に作り方を教えてくれたおかげで美味しく作れたみたいです、ありがとうございました」
私は深々と頭を下げ、バルクホルンさんにお礼の言葉を述べる。
「礼には及ばない。私は姉として当然のことをしたまでだ」
「いつから宮藤の姉になったんだ~? ところでさー、
どうして宮藤は今まで作ったことのなかったマーマレードケーキを
リーネへの誕生日ケーキにしようと思ったの?」
「えっとですね、それは――」
私がマーマレードケーキを作ろうと思った理由を話すと、ハルトマンさんは笑いながらこう言ってくれた。
「ははは、宮藤らしい理由だね。とても素敵だと思うよ。その想い、リーネに伝わるといいね」

――その日の夜、食堂でリーネちゃんの誕生会が行われた。
隊のみんながそれぞれリーネちゃんへの誕生日プレゼントを渡し、
その後はミーナ隊長のプレゼントの新しいお洋服をリーネちゃんが披露したり、
エイラさんが『運気の上がるおまじない』と称してリーネちゃんのおっぱいを
揉んだり(私も揉みたかったな)して誕生会は大いに盛り上がった。
「芳佳ちゃん、このマーマレードケーキとっても美味しいよ!」
そう言ってくれたリーネちゃんの笑顔がとても眩しかった。

――午後十時頃、リーネちゃんの誕生会はお開きとなった。
「ごめんね、リーネちゃん。誕生日なのに後片づけ手伝わせちゃって」
「ううん、気にしないで。私、ぼーっとしているより食器洗いとかしているほうが好きだし」
誕生会の後片付けを済ました私たちは、宿舎のテラスでミルクティーを飲みながらゆったりしていた。
こうやってリーネちゃんと二人っきりでいると私はとても幸せな気持ちになる。
この気持ちって……恋なのかな。
「ねぇ、どうして芳佳ちゃんは私の誕生日にマーマレードケーキを作ろうと思ったの?」
リーネちゃんが私に、先ほどのハルトマンさんと同じ質問をしてきた。
「え? い、言わないと駄目?」
「うん、今まで作ったことのないケーキを私の誕生日に作ってくれた理由、知りたいかな」
リーネちゃんが目をキラキラさせながら、私の顔を覗いてくる。
……その瞳、眩しすぎるよリーネちゃん。
本人の前でこの理由を話すのはちょっと恥ずかしいけど、
私は勇気を出してハルトマンさんの時と同じように答えることにした。

「えっとね……私のリーネちゃんへの想いがマーマレードケーキに似てたからかな」
「マーマレードケーキに似てる?」
「うん、マーマレードケーキって甘酸っぱいでしょ? 私もリーネちゃんのこと考えると
胸がドキドキしちゃって、甘酸っぱい気持ちになるんだ……ごめんね、何かいきなり訳の分からないこと言っちゃって」
「ううん、芳佳ちゃんの気持ち、すごく伝わったよ」
リーネちゃんはそう言うと、私の唇に自分の唇を重ねてきた。
「リ、リーネちゃん!?」
「ふふ、芳佳ちゃんの唇ってすごく甘酸っぱいね。私も芳佳ちゃんのこと、考えると胸がドキドキするんだよ?
今だってそう……ほら、聞いてみて」
リーネちゃんが私の耳を自分の胸の辺りに当てる。
うわ、やっぱりリーネちゃんのおっぱいってすごく柔らかい……
「聞こえてる? 私の胸の鼓動」
「うん、でも今は私の胸の鼓動のほうが大きいよ、絶対……」

――この甘酸っぱい気持ちが恋なのかはまだよく分からないけど、
今は時間の許す限りこうやってリーネちゃんに抱かれていたいな……

~Fin~


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