闇夜のSurprise attack


夜の基地には、消灯時間を過ぎると見回りの係が各部屋を見て回ることになっている。
基本的にこうした係は指導の意味もこめて階級の高い者の仕事である。
隊の中でいうとミーナ隊長、坂本少佐、バルクホルン大尉、そして私、イェーガー大尉だ。
だいたいはこの4人で係を回しているため、一週間に1、2回当番がある。
これはそんな当番の仕事もなく、時間を忘れて私がストライカーに関する本を読んでいた日のことだ。

コトン、コトン、コトン・・・

静かな夜の基地の中で、その廊下の足音は意外に大きく聞こえる。
そういえば今日は・・・まずい、アイツが当番だ。
消灯時間を過ぎても本を読んでいたとなれば、上官としての心構えがなっていないだとか、リベリアンは規則という概念が理解できないのか、

なんて長々と説教をしてくる、アイツだ。
私は慌てて本を閉じ、明かりを消してベッドに寝たフリをした。我ながらすごい速さで一連の動作をこなしたものだと思う。

コトン、コトン、コト・・・

足音が私の部屋の前で止まる。

ガチャ・・・

あ、しまった。鍵をかけるのを忘れた。

「なんだ、鍵を閉めないで寝ていたのか」

アイツが部屋に入ってくる。説教をされると面倒なので狸寝入りをきめこんだ。

「このバカ者が・・・」

無視無視。

「・・・」

急にアイツが黙った。そしてベッドに近寄ってくる。
まずい、あの怪力でげんこつなど入れられたら一晩中眠れない痛みに襲われることになる。

「・・・」

呼吸の音が私の耳の近くまできた。しゃがんでこっちを見ているみたいだ。

「・・・すぅ」

なっ、何だ!?
何故かソイツは私の髪のにおいを嗅ぎだした。すぅすぅと犬みたいに私の首筋を嗅いでいる。
私は普段ストライカーをよくいじっているからルッキーニから油のにおいがすると整備直後によく言われる。
もともときれい好きでもあったから風呂にはよく入るし、隊の誰よりも体をよく洗っている自信はある。
それでもやっぱり変なにおいがしたのだろうか?
しばらく私の髪のにおいを嗅いだあと、ソイツは黙って部屋から出て行った。

翌日、朝食の席で何か言われるかなと思っていたが、こっちが視線を向けるとアイツは視線をそらし、特に何も言われなかった。
少々顔が赤かったようだ。風邪でもひいたんだろうか?

数日後、悪い偶然は重なるもので、またアイツが当番の日に面白そうな本を見つけて読みふけってしまった。
やはり急いでいたために鍵をかけわすれた。学習しないなぁ私・・・。

「・・・」

例によって黙ってベッドに近づいてくる。今度こそ鉄槌か?

「・・・すぅ」

うわっ! と声を上げそうになった。
今度は私の顔や首をなでながらすぅすぅとにおいを嗅いでいる。何やってるんだコイツは?
でも不思議と悪い気はしない。むしろコイツの手つきは私をやさしくいたわってくれるような手つきだ。
しばらくそうしたあと、同じようにソイツは黙って部屋から出て行った。

その後はアイツが当番の日は私もわざと鍵をかけずに寝たフリをした。
アイツの意図を確かめたかったからだ。
鍵を閉めないでいると、その度、アイツは私の部屋に黙って入り、私への行為はエスカレートしていくばかりだ。
頭をなでたり、体をさわったり、頬ずりしてきたり、私の手をとって自分の体を触らせたりしてきた。
ついに私の部屋で上着を脱いでベッドの中に入ってくるまでになった。

「シャーロット・・・」

抱き枕のように私を抱きしめ、私と肌をあわせながら、アイツは私の名前を呼んできた。
もうここまでくるとさすがに嫌がらせではなく愛情表現だと私にもわかる。
コイツの鼓動が下着一枚を通してぴったりと合わさった肌から伝わってくる。
私は、次のコイツの当番日が何よりも待ち遠しくなっていた。

次の当番日、アイツは寝たフリをしている私に馬乗りになり、私の顔に顔を近づけてきた。
こ、これって・・・キス!?
とっさに何故そんな行動をしたのかよくわからないが、私はソイツを抱きしめてこっちからキスをしてやった。

「んっ!? んぐっ!?」
「んっ・・・このごーかんま!」
「えっ!? いやっ・・・えっ!?」
「気づかないとでも思ってたのかバカ者め!」
「ひっ!? いやっ、これは・・・!!」

ダメ押しにもう一発ふかーいキスをしてやり、軍隊格闘の要領で体勢を入れ替えてこちらが馬乗りになる。
ふだんのコイツならこんな技にはぜったいにかからないだろうが、今日は気が動転しているせいか、ほぼ無抵抗だ。

「きっ、奇襲など・・・!」
「電撃戦だ」
「おまえ・・・!」
「口で言えって」
「えっ・・・?」
「好きなら好きって、口で言えよ」
「いや、そんな・・・」
「大好き」
「ほぁっ!?」
「ほら、あたしは言ったぞ。そっちも言えよ!」
「えっ・・・私が・・・!?」
「おや、カールスラント軍は相手だけに告白をさせる卑怯者の集団なのかい?」
「そんっ、そんにゃこと!」
「・・・(噛んだなコイツ。かわいすぎる)」
「えっと・・・」
「・・・」
「す、好きだ、シャーロット・・・」
「・・・うひひ・・・ひひひ・・・」
「なんっ! 貴様!」
「だーいすきっ!!」
「わあっ!」

力いっぱいソイツを抱きしめた。そのあとのことはよく覚えていないが、幸せな時間だったという感覚だけは覚えている。

次の日から、みんなの前で顔をあわせる時間はいつもアイツからの突き刺さるような視線を浴びなければならなくなった。
アイツ曰く、「みんなにばらしたら殺す!」だそうだ。なんで恋人に「殺す」なんて言うんだアイツは。

「シャーリーさん、最近すごく楽しそうですね。何かあったんですか?」
「ん? それはな・・・」
「貴様ああぁぁぁ!!!」
「うわっ、まだ何も言ってないだろ!?」
「これから言うつもりなのか!? 待てええぇぇ!!」
「へへっ、この私に追いつけるかなー?」
「コラァ! 上官二人で何を騒いどるんだ! あとで二人とも腕立て伏せと腹筋・スクワット100回ずつだ!」

うへぇ、今晩はアイツとの個人特別訓練があるのになぁ・・・。


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