フーフーするの
「ミーナ、お茶を淹れたんだが一緒に飲まないか?」
「あら、いいわね。じゃあ頂こうかしら」
「ああちょっと待て……ふー、ふー……さ、どうぞ」
「わざわざ冷ましてくれたの? ありがとう」
「なに、我らが部隊長の可愛い舌を火傷させるわけにはいかないからな」
「み、美緒……」
「お茶請けに羊羹もあるんだ。羊羹だけによう噛んで食べろよ。はっはっは!」
「もぅ、美緒ったら……」
「お~いルッキーニ、パスタが出来たぞー」
「わ~い、パスタパスタ~♪ いっただきまーす!」
「お、おいちょっと待て」
「熱っ! う~、シャーリー、このパスタ熱いよ~」
「そりゃそうだ。出来立てなんだから。どれ、ちょっと貸してみろ。ふー、ふー……これでどうだ?」
「うん、食べやすくなった……でもなんだろ、いつものパスタより不思議な味がする……
きっと、シャーリーがフーフーしてくれたおかげだね」
「あはは! なんだよ、それ~」
「ね、私にもシャーリーのパスタ、フーフーさせて」
「あ、ああ」
「ふー、ふー……どう? ルッキーニ風味の特製パスタは?」
「ああ、確かにいつも食べるパスタより美味いな。最高だよ、このルッキーニ風味の特製パスタ」
「ほらサーニャ、私特製のコーヒーだぞ」
「ありがとう、エイラ」
「今日は冷えるからなー。これ飲んで身体温めて……熱っ、さすがにちょっと熱すぎたか」
「エイラ、大丈夫? ちゃんと冷まさないと……ふー、ふー……」
「サ、サーニャ!? い、いきなり何を……」
「……これで少しは冷めたと思うわ。飲んでみて」
「あ、ああ……うん、さっきより飲みやすくなった。あ、ありがとう……サーニャ」
「どういたしまして……ねぇ、今度はエイラが私のコーヒー、フーフーして」
「え!? わ、私なんかがフーフーしていいのか?」
「うん、エイラにフーフーしてもらうのがいいの」
「わ、分かった……ふー、ふー……ど、どうかな?」
「うん、エイラがフーフーしてくれたからとても美味しい……本当にありがとう、エイラ」
「ペリーヌさん、カモミールティーです、どうぞ」
「ありがとうアメリー……熱っ」
「出来立てで熱いから気をつけて飲んでくださいね」
「……そ、そういうことは先に言ってくださるかしら?」
「ごめんなさい……ペリーヌさん、ちょっとカップ貸してください」
「え? ええ、どうぞ」
「……ふー、ふー……」
「ちょ、ちょっとアメリー! 何をなさってますの!?」
「ええと、ペリーヌさんが飲みやすいようにカモミールティーを冷まそうと……
もしかして迷惑でしたか?」
「そ、そんなことありませんわ……その……ありがとう」
「……アメリーが冷ましてくれたおかげでとても飲みやすくなりましたわ。
それに、アメリーみたいに暖かくて優しい味……とても美味しいですわ」
「よかった、気に入ってもらえて……ぐすん、私っ、嬉しいです」
「こらこら、誇り高きガリアのウィッチが泣くもんじゃありませんわ。涙を拭きなさい」
「は、はい……」
「ねぇアメリー、その……これからも私に美味しい紅茶を淹れてくださるかしら?」
「は、はい! もちろんです!」
「うむ、やはり芋のスープは美味いな」
「でもトゥルーデ、このスープ、ちょっと熱くない?」
「出来立てのスープだからな、当然だ。カールスラント軍人たるものこの程度の熱さで
音を上げてはいかんぞ、エーリカ」
「そうは言われても熱いものは飲めないよ……トゥルーデがフーフーしてくれたら飲めると思うけど。
ねぇトゥルーデ、私のスープにフーフーして」
「な!? い、いきなり何を言い出すのだ貴様は……自分で冷ませばいいだろう」
「だって、トゥルーデが冷ましてくれたほうが美味しそうなんだもん……それとも、トゥルーデは
私のスープにフーフーするのが嫌なの?」
「そ、その上目遣いはやめろ……反則だ」
「トゥルーデがフーフーしてくれたら、やめてあげてもいいよ」
「わ、分かった……フーフーすればいいんだな? ふー、ふー……」
「こ、これでいいか?」
「うん、トゥルーデがフーフーしてくれたから、いつものスープより一段と美味しいよ」
「な、何を馬鹿なことを……」
「今度は私がトゥルーデのスープにフーフーしてあげるね。ふー、ふー……どう、美味しい?」
「あ、ああ……エーリカがフーフーしてくれたおかげでさっきより美味しくなった……」
「えへへ、よかった。トゥルーデが喜んでくれて」
「ふぅ、今日も訓練疲れた~」
「お疲れ様、芳佳ちゃん。ミルクティー淹れたから一緒に飲もう」
「わ~い、リーネちゃんのミルクティー大好き! いっただきまーす!」
「あ、ちょっと待って、芳佳ちゃん!」
「な、なに?」
「ホットミルクティーだからまだ熱いよ。少し冷まさないと」
「あっ、そっか……そうだよね、あははは……」
「もぅ、芳佳ちゃんったらせっかちなんだから……ちょっと待ってね、ふー、ふー……
はい、これで飲めると思うよ」
「ありがとう、リーネちゃん……うん、すごく美味しい」
「本当?」
「うん、リーネちゃんのミルクティーっていつも美味しいけど今日のはリーネちゃんが
フーフーしてくれたからいつも以上に美味しいよ」
「フーフーで味って変わるのかなぁ?」
「変わるよ。今度は私がリーネちゃんのミルクティー、フーフーしてあげる。
ふー、ふー……どうかな、リーネちゃん」
「……本当だ、芳佳ちゃんの優しさが詰まった味がする……ふふふ、フーフーで味って変わるんだね」
~Fin~