HEART TO HEART
ねぇね、聞いてよ。
うん、そう。またなの。今月何度目だって話。
死にかけた。
うん、今はへいき。だから心配しないでいいよ。
けど、今度という今度はほんとにあぶなくって、もうちょっとでスクラップになるとこだったわ。
え? あいつの方はどうかって?
あー、ぴんぴんしてるわよ。いやんなるくらい。
ニパのやつ、自分はいくらけがしても平気だからって、こっちのことはおかまいなしなんだもの。
まったく、わたしのことなんだと思ってるのかしらね。つきあわされるこっちがたまったもんじゃないわ。
これでも一般庶民には一生手のとどかない高級品よ高級品。
腕はけっして悪くないんだから、なおのことたちが悪いんじゃないの。
それにくらべておねえちゃんはいいよね。絶対に被弾しないパートナーなんて。
わかりっこないよね、おねえちゃんには。わたしの気持ちなんて。
被弾したときの意識がぶっ飛ぶようないたみや、ボディが傷つくかなしみ。そういうのわかる?
いいえ、ぜったいわからないわ。
もう、なぐさめないでよ。口ばっかり。
あーあ。あたしのパートナーが――
あ、やっぱ今のなし。
ちがうー! そんなんじゃない! おねえちゃんがかわいそうになっただけ!
交換してなんて言ってないでしょ? どうしてそうなるかな。だいたいどうやって交換するわけ?
なに笑ってるのよ。
……もういい。
あーっ。それもこれもぜんぶニパのせいなんだから!
ねぇ、ちゃんと聞いてる?
それでね、ニパっていえば……ああっ、思い出しただけで腹たつ。
ああ、ごめんごめん。
えっと、基地に帰投した時の話ね。
ポクルイーシキン大尉が仁王立ちでハンガーに待ちかまえててね、ニパったら背中に冷や汗かいちゃって。
それで第一声に「なんか壊れたみたいです」だって。
ちがうでしょ! 「壊れた」じゃなくて「壊した」よ! わたしは壊されたの!
そう! そうなの! 言ってみれば被害者よわたしは。
なのにニパってば「しょうがない」だの「どうしようもなかった」だの口から出てくるのはいいわけばかり。
加害者意識ゼロってありえなくない? 責任とれって話よ。
もちろん大尉はきっちり反論してくれたわ。わたしよりずっと論理的にね。
ああ、わたしのことわかってくれるのはポクルイーシキン大尉だけよ。
もしあの人がいなかったらわたしは何度溶鉱炉をいったりきたりしてることか。
それにはニパもだんだんいたたまれなくなっちゃって、言うにことかいて「私だけじゃないだろ!」よ。
なんなのそれ!?
ひどいと思わない? 思うっしょ?
――ま、たしかにここには壊し屋さんがせいぞろいしているけれど。
502ではブレイクウィッチーズ被害者の会の設立を検討中よ……って話を戻すわね。
それにはとうとう、いつもはやさしい大尉のきげんもななめっちゃって。
そのあとみっちりお説教されてたわ。バツ当番もね。ホントいい気味。
今日はいろいろとぐち聞いてくれてありがと。楽しかったわ。
ためこんでちゃだめね。ストレスで機体がきしみそう。
じゃあね。また同じ空でごいっしょできることを祈って。
そうそ、ニパもイッルにすっごく会いたがっているわよ。
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