attract


「あー、肉食いてえ」
 夕食前、一足早く食堂に来たシャーリーはぼそりと呟いた。
「おっにく~、おっにく~♪」
 一緒に居るルッキーニが同調する。
「どうしたんですかシャーリーさん」
 シャーリーの呟きに気付いた芳佳が厨房から出て来て声を掛ける。
「あー、なんか肉食いたいと思ったんだ」
「今晩のご飯、お魚なんですけど」
「サカナは嫌いじゃないよ。ただ、今は肉が食いたい、そんな気分なんだ」
 身振り手振りを交えて話すシャーリー。
「あったしはおいしければなんでもいい~」
 ルッキーニは気楽だ。
「そうですか。すいませんけど、今日はお魚で我慢して下さい。ちょうど近くの漁港から新鮮な魚介類が届いたんですよ」
「また煮たり焼いたりするのか?」
「ええ。扶桑の味付けですけど……お魚以外にも幾つか有りますよ。貝とか……」
「あ、芳佳ぁ! ついでにタコヤキ作ってよ! タコ食べたい!」
「ちょ、タコは勘弁……。あんなもの何で食えるのかあたしには分からないよ」
「おいし~いのに。シャーリー損してるよ~」
「その点だけは、ルッキーニと永遠に分かり合えない気がする……」
 軟体動物の話を聞き幻滅する音速のリベリアン、扶桑の蛸料理に思いを馳せるルッキーニ。
「ごめんねルッキーニちゃん。今日はタコ無いから」
「つまんなーい」
「でも、何かを無性に食べたくなる事って、有りますよね?」
 芳佳と一緒に料理を作っていたリーネも、手を休めて厨房から出て来た。
「やっぱり有るよな」
 リーネの言葉を聞いて頷くシャーリー。
「暑い日はアイスを食べたくなりますし」
「分かる分かる」
「寒い日は暖かいココアを飲みたくなります」
「こっこあ! こっこあ!」
 言葉を聞いてくるくる回るルッキーニ。その横で、リーネがふと考えを巡らせる。
「でも、何でそう思うんでしょうね?」
「何でだろうな」
 シャーリーも理由を探してみる。
「例えば、何かがきっかけとか」
 芳佳が答える。
「きっかけ?」
「暑さ寒さもそうですし、直前に何処かで何か食べ物の事を見たり聞いたりしたり」
「見たり聞いたりか」
「あと、身体が栄養を求めてるから、食べたくなるって事有りますよ。扶桑の医学で、食べ物と健康の事を……」
「そうなんだ。芳佳ちゃん詳しいね」
 ほわっとした目で芳佳を見るリーネ。少しもじもじしている。
「あー、難しい理屈はパス。まあ、食いたいって思うだけでいいじゃん。そんでさ、宮藤」
「はい、なんでしょう?」
「あたしに何か肉料理作ってくれよ?」
 シャーリーの願いを聞き、食料のストックを思い出す。
「今すぐ作れるのは、肉じゃがくらいですかね……」
「それもうまいけど……もっとガッツリ肉を食いたいんだ」
「だったらバーベキューとか」
「そ、れ、だ! ……あ、でももう夕食の準備してるんだよな。時間もあんまり無いし」
「なら、手軽にシャーリーさんの缶詰はどうでしょう?」
「缶詰か……」
 ぽんと渡された青い缶詰を見、少々複雑な表情を作るシャーリー。
「まあ、これも確かに肉だけどさ……今は何か違うんだよなー」
「あたしはそれパス~」
 うんざりした表情のルッキーニ。
「あ、芳佳ちゃん、ご飯そろそろ炊けるよ?」
「ありがとうリーネちゃん、今行くよ」

 夕食後。
 芳佳の部屋を訪れたリーネは、どうしたの? と聞いた芳佳をいきなりベッドに押し倒した。
「リーネちゃん? 急にどうして」
「芳佳ちゃん……食べたい」
「ええっ? どうしたの急に?」
 リーネは芳佳にぎゅっと強くキスをし、潤んだ目で芳佳を愛で、言った。
「芳佳ちゃん、言ってたよね? 食べたくなるのは『身体が求めてる』って。だから私……芳佳ちゃんを我慢出来ない!」
「リーネちゃん、何か違うよ……ああんっ」
 リーネは慣れた手つきで芳佳の服をするっと脱がすと、すぐさま濃厚な「食事」を始めた。

end


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