kiss me, right now
夜間哨戒を終え、報告を手短に済ませた後、二人で一緒にシャワーを浴びる。
いつもと同じく、温水をざーっとかけ流しながら……髪を洗いっこして……汗を流して……
服を着て、一緒に部屋に戻るまで、エイラは一人悶々とした気分のまま、
どうしようか、どうなってしまうのかとあれこれ思いを巡らせていた。
そんなエイラを知ってか知らずか、サーニャは時折エイラの方を恥ずかしげにちらっと見、また余所の方を向いてしまう。
エイラにとってはそんな仕草のサーニャも大好きで仕方ないのだが、だからと要って手を出す事も躊躇われ、
結局そのままふたりはいつもの……エイラの部屋へと戻った。
「じゃあ、少し寝よウ、サーニャ」
「うん……でも、だめ」
「エッ、何で? 寝ないと次の夜間哨戒に……」
「分かってない、エイラ」
小さな手から想像出来ない位強い力で腕を引っ張られ、そのまま二人揃ってベッドに転げ込む。
「サーニャ?」
「エイラ、何かしてくれるんじゃないかって、ずっと待ってたのに」
「ええッ!?」
「報告終わって自由になった時、シャワー浴びてる時、二人で一緒に髪を洗ってる時、服を着る時、
部屋に戻る時、ずーっとエイラの事待ってた」
「サーニャ……てか流石に他の奴の目につくところでそれはどうかと思うンデスケド……」
「分かってない」
拗ねた表情を見せるサーニャ。さっきから離さずにいたエイラの腕を更に引っ張り、エイラの手を、サーニャ自身の胸に当てた。
どきりとするエイラ。
「分かる? この気持ち」
「えット……」
ちょっと怒った感じのサーニャも可愛い。などと思うも、このままだと本格的にサーニャを怒らせてしまう予感(警報)が
頭中に響いたので、サーニャの胸に当てられた手を、そっと動かしてみた。
甘い吐息が、サーニャの口から漏れる。手はそのまま、サーニャの肩をそっと抱き寄せた。
「サーニャ、聞いテ」
「うん」
「サーニャは、私にとって一番大切。誰よりも大好きダ。だから、見ているだけで幸せナンダ」
「でも、それじゃ私もエイラも……」
「分かってル。サーニャがこの先に何をしたいのか、トカ」
「ならエイラ……」
「でもサーニャを傷付けてしまいそうで、私……」
「そんな事ない。その証拠に」
サーニャは自分から服を半分脱ぎ、露わになった素肌をエイラに見せ、手を触らせる。
ごくりと生唾を飲み込むエイラ。
「だから、エイラ……私だけのエイラで、居て欲しい」
「サーニャ、良いのカ?」
「エイラの事、大好きだから。愛してる、エイラ」
サーニャはそう言うと、唇を重ねた。一筋の涙がこぼれ落ちる。
エイラは服の袖で拭い、少しぎこちない格好で、サーニャにキスを返した。
二人の身体がゆっくりと、確実に近付く。
「本当は、もっと一緒に居たい。離れたくない。服の隙間も要らない位」
エイラの服を脱がし、中途半端に脱げかかった。
部分的に、二人の肌が密着する。
脱ぎかけの服から見える、お互いの下着、素肌。
くらっと理性が飛びかけたエイラは、サーニャにキスをする。首筋に唇を這わせ、つーっとなぞる。
「ああっ……はぁ……」
サーニャの喘ぎにも似た吐息を五感で感じ、ますます欲求が昂ぶる。
モット、シタイ。
サーニャを抱きしめたまま、もう一度濃厚な口吻を交わす。
漏れる吐息が焼け付く程熱く、お互いの頬を撫でる。
体温の上昇を感じる。
頭が真っ白になりそう。
「サーニャ」
「エイラ」
お互い何度も名前を呼び合い……そのたびにキスを繰り返し……、きつく抱き合う。
「積極的なエイラ、大好きよ。だから、もっと。お願い」
「サーニャが望むなラ」
もう、それ以上は何の言葉も交わさなかった。
何か話すよりも、たくさんキスをして、いっぱいお互いを感じる。
その行為に没頭する。
寝る間も惜しんでずっと続く逢瀬。
汗だくになりながら、二人は微笑んだ。
サーニャはエイラが、エイラはサーニャが居るだけで、他には何も要らない。
好き、愛してる、そんな言葉を言うより先に、五感で感じ伝えたい。
二人の思いはひとつに。
疲れ果てて微睡みに誘われ眠りに落ちるまで、二人は何度も繰り返した。
end