dive
朝礼後、朝のミーティングルーム。黒板の前に陣取るふたり。
「だから、こうギュイーって頭突っ込んで、ギュワーって加速して、地面近くなったらウジャーっと上がればいいんだよ」
よく分からない擬音とジェスチャーで、何かを必死に伝えようと努力しているロマーニャ娘。
「でもねルッキーニちゃん。私のストライカーユニット、急降下には向いて無くて」
「芳佳のユニット貧弱ぅ!」
「でっでも運動性能では負けないよ?」
「高い高度だとどうかな~ニヒヒ」
言い合う芳佳とルッキーニ。
「まあ、言いたい事もわからなくないけどさ」
「それぞれのユニットには特性があるからな」
傍目で見ていた大尉ふたりが、芳佳とルッキーニを諭す。
「特性?」
「ああ。ストライカーユニットの特徴。良いとことか悪いとことか、さ」
「今お前達が話していただろう」
シャーリーとトゥルーデに言われた芳佳は困った顔をした。
「特性、ですか。私は自分のストライカーの事でいっぱいいっぱいで」
トゥルーデは腕組みすると、芳佳の方を向いて、黒板にチョークで幾つかメモを書いた。
「我々航空ウィッチのなすべきこと。その重要な事のひとつが、自分の使うストライカーユニットの特性を把握する事だ」
「なるほど」
「ここ501には各国の様々なストライカーユニットが揃っているが、それぞれ特徴が有るのは知っての通りだ。
自分のユニットは、何が得意で何が劣っているか。敵より勝るものがあれば、それを最大限活かして攻める。
これが、我々ウィッチが戦場ですべき大事な事のひとつだ」
「はあ」
「模擬戦の場合は、相手のストライカーユニットの事も知っておいた方が良いだろう。より戦いを有利に進められる。
勿論、模擬戦で得た経験は実戦の時、幾らか役に立つ」
トゥルーデはさながら「教師」の如く理論を並べている。
「まあ、要は自分の事をよく知れって話だよ。あとは、チームワークかな」
後ろ手で腕を組んだシャーリーは気楽に答えた。
「ひとりでしゃかりきになっても、多数対多数だとどうしようもないからね~」
ちらっとトゥルーデを見るシャーリー。確かにそうだとゆっくり頷くトゥルーデ。
「勉強になります」
神妙な面持ちで答えた芳佳にルッキーニが噛み付いた。
「芳佳、まじめすぎ! なんかつまんない! あたしが言いたいのはちがうの!」
「ルッキーニはさっき何を話してたんだ?」
シャーリーが飛びついてきたルッキーニを豊満な胸で抱き止め、聞いた。
「うんとね。上からギュイーンって突っ込んで、ギュワーっと加速して……」
「急降下の一撃離脱戦法か」
「むずかしいことよくわかんないけど、多分それ」
「大型ネウロイ相手には定石のひとつだな。あと、小回りの利く厄介な相手を一撃で仕留めるにも向いているかもな」
「なるほど」
「だから宮藤も気を付けた方が良いかもね」
「えっどう言う事ですか」
「ほら宮藤、後ろ」
「へっ?」
言われて振り向くと、そこにはリーネが立っていた。
「芳佳ちゃん」
「あ、ごめんリーネちゃん、話が有るんだったよね。待たせてごめんね」
「リーネ、芳佳に用事?」
「うん」
「ごめんねルッキーニちゃん、さっきの話、また今度ね」
「うー、中途半端でつまんなーい」
「まあまあ、ルッキーニ」
「しかしルッキーニも真面目に色々考えているんだな」
「ムキー あたしはいつだって……」
芳佳とリーネは、まだ何か言いたそうなルッキーニ、そして大尉二人を残しミーティングルームから出た。
「それで、話って何だっけ」
リーネの部屋に通された芳佳は、あっけらかんとリーネに聞いた。
何故か厳重に鍵を掛けていたリーネは、振り向くと、一瞬何か言いかけた。
「リーネちゃん?」
刹那、芳佳はリーネに飛びつかれ……そのままベッドに組み伏された。
「り、リーネちゃん!?」
「芳佳ちゃんの、ばか」
リーネは芳佳の服をさらっと脱がすと、自分の服も半脱ぎ状態で芳佳に“襲い掛かった”。
「あう……うあんっ……リーネちゃん」
「芳佳ちゃん……我慢出来ない……もっと、芳佳ちゃん、芳佳ちゃん」
リーネはただただ芳佳の名を呼び、芳佳の身体を抱き、無理矢理に唇を重ねた。
回避出来ない。リーネから、逃げられない。
数分後、抵抗虚しく芳佳はリーネに“撃墜”され、ぼおっとした顔のまま、荒い息をついた。
「芳佳ちゃん……私だけの芳佳ちゃん」
リーネは満足そうに、ぼんやりとする芳佳を抱きしめ、頬ずりした。
end