inception
……これは、夢?
宮藤とリーネ、ペリーヌが、基地近くの海面……アドリア海の上を歩いている。
そんな馬鹿な、とエイラは呟いた。
よく見る。ストライカーユニットも履いていない。
扶桑の曲芸……でもなさそうだ。
「サーニャ、見てみろヨ。あそこで宮藤とリーネが歩いてル」
「ホントだ。涼しそうだね、エイラ」
(そう言う問題カヨ……?)
エイラは内心呟きつつ、平静を装い、目の前で四切れ目となるケーキを頬張るシャーリーを見た。
「あれ? サーニャは何処ヘ?」
シャーリーはもそもそとケーキを食べ、呟いた。
「はあ? サーニャなら寝てるだろ」
「おやつ食べて、おねんね~♪ あたしもシャーリーとおねんねー」
「食べたらちょっくら昼寝でもするか~」
「気楽ダナ」
「まあね~」
なにかがおかしい。
良く見るとシャーリーとルッキーニが、ズボンの上にズボンを履いてベルトまでしている。
横に居る、肝油を飲んでいる美緒とミーナを見る。ズボンの上にズボンを履いてベルトまでしている。
妙だ。
これはきっと夢だ。
そう思ったエイラは、試しに目の前に居るトゥルーデの胸を揉んでみた。
「アレ? シャーリーじゃなイ!」
「……そ、それが私の胸を掴んだ言い訳か、エイラ?」
「だあッ今目の前にシャーリー居たのニ!」
「お前の目の前に居るのは誰だ? よく見ろ! そして早く手を離せ」
「あ、アア……」
(でも夢なんだよナ、これって?)
席を立つと、おもむろにトゥルーデの胸をわしわしと掴む。
「トゥルーデの胸に興味有るんだ?」
「あレ、いつの間に中尉。まあどれだけ成長したかって興味は有るネ」
「じゃあ私もトゥルーデを確かめよ♪」
「こら、二人揃ってやめんか!」
「……もう私の知ってるトゥルーデじゃない」
「何を言い出すんだ!」
「二人共お幸せにナ」
エイラは席を立つと、テラスを抜け基地の中へ。
ふと見ると、基地の建物が見えない何か……空気に侵食され、音もなく崩れていく。
「ウワ、何だコレ?」
崩れかけた建物に入る。サーニャは何処だ? サーニャを探さないと。焦るエイラ。
廊下に足を踏み入れた瞬間、天地が逆さまになり、まるで水中を泳ぐ魚の様に、ゆっくりと回転しつつ落ちていく。
「どうなってるンダ?」
ゆっくりと……しかし廊下の壁を進み、部屋へ向かう。サーニャは何処へ?
扉を開ける。
そこは懐かしい、ブリタニア基地の、エイラの部屋。
「あ、アレ? 何でブリタニア?」
窓に駆け寄り、外を見る。確かに平穏なブリタニア基地。
ベッドの上にはサーニャが腰掛け、微笑んでいた。
「サーニャ!」
サーニャに抱きつき、事情を説明する。
「とにかく基地が崩れル! 早く出ないト!」
「大丈夫よ、エイラ」
「どうしテ? 巻き込まれたら、サーニャも私モ……」
「心配しないで」
微笑んだサーニャは、身体がゾッとする様な、冷たい声で言った。
「だって、全部私の夢の中だもの」
突然の暗闇。深淵に吸い込まれるエイラ。悲鳴にならない叫び声を上げ、ただただ落下した。
「エイラ」
ベッドの上で苦しそうに呻くエイラをそっと抱きしめるサーニャ。
頭の周りで輝いていた魔導針をそっとしまうと、エイラにそっとキスをする。
「ううゥ……サーニャぁぁぁ」
「大丈夫よ、エイラ」
サーニャは目を閉じたまま必死に抱きついて来るエイラをしっかりと受けとめ、もう一度優しくキスをする。
エイラは知ってか知らずか、何度も繰り返されるキスを受けるうち、幸せそうな顔をして眠りに落ちる。
「私だけのエイラ。だから」
サーニャはエイラを抱き直し、長いキスを、もう一度した。
end