power of magic
「えっ、夢を見た、だって?」
げっそりとしたエイラから話を聞いたシャーリーとルッキーニは顔を見合わせ、笑った。
「な、何で笑うンダヨ!? こっちは真剣に聞いてるノニ」
「だって、夢だろ? 夢で起きた事なんて気にしてどうするよ?」
「どうするのよー ニヒャヒャ」
「予知夢ってのも有るの知らないノカ。幸せダナ」
「なんか引っ掛かる言い方だなエイラ」
「でも、おかしな夢を見たのは確かなんだよね?」
「ああそうだゾ、ルッキーニ。皆出てた」
「しかもあたしらオールスター出演か、よりによって」
「アァ」
「じゃあ逆に聞くけど、それが何か意味有るのかい?」
「意味……あんな夢にどんな意味があるのかって私が知りたいヨ」
「あんまり考えない事だな」
「でも、シャーリーとルッキーニが……」
「あたし達はちなみに夢の中でどんな事してたよ?」
「いつもと変わらなかった」
「なんだいそれ。じゃあ尚更気にする必要なんて無いよ」
「でも何か引っ掛かるんだよナ~」
シャーリーは背後の人影に気付いて、空気を察して言った。
「じゃあ、後ろの人に聞いてみなよ」
「? さ、サーニャ!?」
「エイラ、一人で起きて何処行ってたの」
「イヤ……その……」
サーニャはエイラの横に座ると、聞いた。
「エイラ、何話してたの。面白そうだった」
「イヤ……夢の話」
「どんな夢?」
エイラは聞かせた。訳の分からない夢、最後奈落の底に落ちていく結末。
「それでエイラ、汗だくだったんだ」
「何かサーニャは訳知ってそうだな」
シャーリーがにやける。
「サーニャは何か分かる? ってエイラじゃないから分からないかー」
ルッキーニはつまらなそうに、シャーリーの胸にもたれかかった。
サーニャはエイラの手を握り、言った。
「ごめんね、エイラ」
「何でサーニャが謝るンダ? 私が勝手に夢見ただけダゾ?」
「だって、私……」
興味津々なシャーリーとルッキーニの視線を受け、口ごもるサーニャ。
「こらーお前らサーニャをそんな目でミンナー!」
「だってー、気になるし~」
「話しちゃいなよ。気になる気になる!」
「うん。話す」
「えッ、サーニャ乗り気?」
驚いて椅子から立ち上がったエイラを椅子に座らせると、ゆっくりと話し始めた。
「私が、エイラが良い夢見られる様にって、魔導針使って……」
「サーニャ、私にそんな事ヲ……」
「サーニャって、魔導針使った魔法でそんな事出来るのか。すげえな」
「夢操れるの? あたしもやってほしい~」
驚くエイラとシャーリー、楽しそうに聞こえるルッキーニ。
「そうしたらうまくいった……ううん、やっぱりうまくいかなかったみたい」
「どうして?」
「エイラ、うなされたから」
「まあ確かに、うなされたゾ」
「だから、ごめんなさい」
「でも、お二人さんは何か、幸せそうに見えるけどね」
「けどね~」
シャーリーとルッキーニから言われ、同時に互いの顔を見るエイラとサーニャ。
「エイラも怒ってないだろ?」
「そりゃ……怒る訳ないダロ」
「なら万事解決じゃん」
「そう言うモンなのカ?」
「気楽にいきなよ。愛の力、いや、魔法の力が愛に、みたいな?」
「みたいな~ニヒヒ」
再び顔を見合わせるエイラとサーニャ。テーブルの下で、そっと手を握り、うつむくサーニャ。
「顔赤いよ~ニヒヒ」
「う、うるさイ!」
その日の夜。
「じゃあエイラ、気を楽にしてね」
「本当にもう一回やるのカヨ」
「もしかしたら……今度こそ」
「サーニャは一体何を目指してるンダ?」
「エイラと一緒に、幸せになれますようにって」
「それは嬉しいケド……」
サーニャはエイラの瞼にそっと手を載せ、魔導針を発動させ、ゆっくりと息を吸い、吐いた。
二人の輪郭が、うっすらと輝く。
その後二人がどうなったかは、謎のまま。次の日まで二人は部屋から出てこなかったから。
だが身体のそこかしこに残る痕跡を見れば……二人が何をしていたか想像は付く。
そんなエイラとサーニャを見た隊の皆は、揃って苦笑いした。
end