thousand nights
真夜中、任務を終えたトゥルーデが部屋に戻る。
部屋ではベッドに腰掛けたエーリカが帰りを待っていた。
まずは軽く、お帰りのキスを交わす。
任務……と言っても書類整理だの雑用をミーナ達に手伝わされて困った、と愚痴るトゥルーデ。
「お陰で遅くなってしまった。すまない」
「良いよ。時間が無くなる訳じゃないから」
エーリカは前向き発言をして笑った。
その屈託のない笑顔に何度励まされて来たか。トゥルーデは思わずぎゅっとエーリカを抱きしめる。
「どうしたの、トゥルーデ?」
「こうしていたいんだ」
「トゥルーデがしたいなら、良いよ」
「ありがとう」
エーリカの温もりを、腕から、重ねた服から、胸からじわりと感じる。そしてほっとする。
「トゥルーデ、分かるよ」
「何が」
「今、スキだらけだよ」
「そう言われてもな……」
「それだけ安心してくれるんだね。嬉しい」
エーリカも、手を伸ばしてトゥルーデの髪を触る。
「書類整理とか片付けしていたから、埃っぽいかも」
「別に大丈夫。私の部屋で慣れてるから」
そう言って笑うと、エーリカはトゥルーデの髪しばりをふたつ、するりと解いた。
自由落下に任せた髪は、緩くひとつのまとまりとなり、首筋にしだれ落ちる。
エーリカはその髪をそっとすくい、さらさらと指から零してみる。香りを嗅ぎ、唇を当てる。
「トゥルーデの匂いだね」
「汗臭いか? もう一度風呂に……」
「このままで、良い」
「分かった」
トゥルーデもエーリカの首筋にそっと唇を這わせる。強く吸い口を付ける。
エーリカの身体が微かに震えるのを感じる。
「トゥルーデ、何してるの」
「つ、つい。思わず……」
「じゃあ、私も」
エーリカも同じ事を、トゥルーデの同じ場所にする。あっ……と短くため息が出る。
「トゥルーデはさ、何で髪縛ってるの?」
「それは……髪がまとまっていないと戦闘中邪魔だから」
「髪を下ろしたトゥルーデも似合うよ」
「そう言ってくれるのはエーリカだけだ」
「だって、髪しばり外すの、トゥルーデ以外だと私位でしょ?」
「まあ、確かに」
「トゥルーデもさ、早く制服脱いで、寝よう?」
「ああ」
トゥルーデはしゅるりと服を脱ぎ……それをエーリカが適当に辺りに放り投げていく。いつもの事なので、トゥルーデとしてももはや諦めているフシがある。
下着姿の二人は、揃ってベッドに横になる。エーリカがトゥルーデの胸に顔を埋める。
「トゥルーデ、結構有るよね」
つんつんと胸の膨らみをつつく。
「戦いには必要無い」
「でも、何かしらの意味はあると思うよ。ルッキーニじゃないけど、私はこうしてトゥルーデと一緒に居るのが好き」
「私も、お前と一緒に居ると、何故かほっとする」
「同じだね」
くすっと笑い合う。そして見つめ合い……距離が近付き、そのまま唇が触れ合う。
軽く触れただけのキスは間も無く深く濃ゆいキスへと変わり、頬も紅色に染まる。
唇を離す。吐息が頬を撫でる。
「ちょっと眠いけど……トゥルーデは、寝る気無いでしょ」
「もう少し」
「良いよ。トゥルーデなら」
実はトゥルーデも眠気が強くなっていたが、お構いなしにエーリカと口吻を交わす。
いつまでもそうしていたい。それが無理でも、出来るだけ、していたい。沸き上がる情欲を抑えきれない。
やがて二人は抱き合ったまま眠りに落ちる。直前までしていた行為の痕を身体に刻みつけたままの、浅く緩い眠り。
起きた時には「またやってしまった」と少々後悔する事もしばしば。
だけど、隣に居るいとしのひとを見ると、そんな気分も何処かへ飛んでしまう。
それだけの価値が有り、それ程の魅力を互いに感じ、離さない。
これからもずっと重ねられるであろう二人の“愛情表現”は、変わる事なく、続く。
end