puppy love


 しとしとと雨が降り止まぬ基地周辺。
 季節柄でもなく、時折遠雷が聞こえ、雨も止む気配がない。
 そんな中、する事もなく部屋のベッドでだらりとくつろぐエイラとサーニャ。
 雨の音に耳を傾け、頭の中でメロディを作っているのか、どこか楽しそうなサーニャ。
 そんな彼女を見て、自然と頬が緩むエイラ。めくりかけたタロットの手も止まる。
 暫くカーテン越しに窓から外の風景を見ていたサーニャは、エイラの方を見た。
「どうしタ、サーニャ?」
「なんか、少しじめっとするね」
 サーニャはそう言うと、手で扇ぐ仕草をした。要するに、少々部屋が蒸し暑いらしい。
 微妙に汗をかいているエイラも、ううー、と唸った後呟く。
「なんか、最近天気がヘンなんだよナア。蒸し風呂みたいな感じ?」
「どうしよう、雨降ってるから窓も開けられない」
 その時、エイラは何か閃いたかの様に、おもむろにサーニャをぎゅっと抱きしめた。
「エイラ、どうしたの?」
 聞かれたスオムス娘は悪戯っ気混じりの笑顔で言った。
「知ってるカ、サーニャ? 世の中には不思議な現象が有るんダゾ? その名も『人間冷房』って言っテ、
抱きつくと涼しくなるんだッテ」
「本当?」
 純真無垢な瞳で見つめられたエイラは数秒も持たずに陥落した。
「ゴメン、嘘」
 微妙な空気が二人の間に流れる。
「でも、エイラ」
 サーニャの方から、ぎゅっと抱きつかれる。
「こうしていると、なんか不思議。暑いけど、なんか、気持ち良い」
「ほ、ホントカサーニャ?」
「エイラだから、かな」
 くすっと笑うサーニャ。うっすらとかいた汗、ぴとりと触れ合う肌が二人の距離をゼロにし……、
お互いの汗が混じり合い、ぽたり、と一滴の雫となり、ベッドのシーツに落ちる。
 エイラもつられて笑う。
 下着姿のまま、二人はきゅっと抱き合う。サーニャがエイラの上に乗る形で、胸を合わせ、鼓動を感じる。
 お互いの体温、それが僅かずつ上昇していくのを感じる。
 じっとりと汗をかくのもそのまま、サーニャはエイラに顔を寄せ、そっと唇を頬に当てる。そのままスライドし、唇を塞ぐ。
 軽いキス。
 長いキス。
 ねっとりと甘いキス。
 舌を絡ませる、深く濃ゆいキス。
 次第に二人は本格的に愛し合い、抱き合う切欠が何であったかも忘れ……ベッドの上で盛大にお互いを貪る。
 二人の熱く短い吐息がベッドの周囲に響き、消えていく。

 二人だけの時間を楽しんだ後、手を繋いでシャワーを浴びに行く。
「やっぱり、涼しいね」
「エ?」
「汗かいた後って、何でも涼しく感じる」
「そ、そうだよナ」
「だからエイラ、貴方の言った事、正しいかも」
「エッ?」
 びっくりした顔のエイラに、そっと唇を重ねる。
 周りで誰か見てやしないか……そんな気恥ずかしさと気まずさを感じるエイラにも、サーニャはお構いなし。
「行こう、エイラ。シャワー浴びたら、また」
 そう言って笑うサーニャ。その姿は何処か儚げ、でも妖艶で、エイラの心を揺さぶる。
 エイラはサーニャの手をしっかりと握り、うん、とひとつ頷くと、シャワーを浴びるべく風呂場を目指した。

end


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