take my life


 サウナで湯気と熱気にまみれ、噴き出す汗を全身に感じ、室内に座る二人。
 エイラとサーニャである。
 二人はよくサウナを使う。元々サウナ文化が盛んなお国柄の二人ではあるが……
特にエイラは「サウナには妖精が居る!」と言う程、サウナ好きである。どんな妖精かはよく分からないが……
芳佳は「扶桑で言う○○の精ですか?」「じゃあ付喪神ですか?」などと言ってエイラを困らせたが
ともかくエイラにとってサウナとは、神聖な場所であり、かつ、安らぎの場でもある。
 サーニャとてそれは同じで、エイラが横でのんびりと構え、白樺の枝葉で時折身体をぴしゃぴしゃと軽く叩いてくつろいでいる
のを見るだけでも安心する。
 但しサウナの中で身体を密着させるのは少々危険で、少し離れた位置に座り、じっくりと身体から汗を出す。

 サウナを出た後は水浴びに限る、とエイラは言う。
 有言実行、二人はサウナから程近い、小さな川べりにやって来た。
 誰も見てる人なんていない。二人だけの秘密の場所。
 川のせせらぎは身体の火照りを冷やすのにちょうどよく、少し行った先にはちょっとした深みもあり、
身体を沈めてじっくりと汗と熱を取る事も出来る。
 近くの川べりにある岩に腰掛け、ふう、と一息つくエイラ。
 すぐ横にサーニャが座る。
「今日ハ、歌わないのカ?」
「うん。今はエイラの横に居たいから」
「そ、そッカ」
 手を伸ばして肩を抱くか、その度胸を振り絞り葛藤しているうちに、サーニャはエイラにもたれ掛かってきた。
 自然と手が伸び、サーニャの肩を抱く格好になる。
 二人の肌が密着する。小川の冷たさでサウナの熱気は既に飛んでいたが、二人の体温がお互いを温める。
「気持ちいいね、サウナ」
「ダナ~。やっぱりサウナはイイ」
「エイラも、良い」
「えッ?」
「どうしたのエイラ。身体、暖かくなってる」
「そ、それハ……」
 サーニャが真横に居て、身体が密着して、胸が当たってるから……と言いたいのをぐっとこらえるエイラ。
 こらえればこらえる程、体温が上昇する。
 誤魔化しついでにもう一度川の水に浸かろうかとも思ったが、いつの間にかサーニャに腕を取られ、身動きが取れない。
「ねえ、エイラ」
「サーニャ?」
「もっとゆっくり、二人でこうしていられたら良いのにね」
「わ、私ハ、いつだってサーニャの横に居るゾ」
「本当?」
「嘘言わないッテ」
「じゃあ、そのまま居てね?」
「う、ウン」
 サーニャはエイラの方を向くと、そっと、耳たぶにキスをした。ぞくっとなるエイラ。
 サーニャは構わず、一度うなじの方になぞり、そしてエイラの顎から頬へと舌をちろっと這わせ、彼女の唇に回帰する。
 おずおずと、サーニャを抱きしめる。素肌が触れ合い、胸と胸が重なり……サーニャはエイラの太ももに乗る。
 キスを続ける二人。エイラの頭は沸騰寸前。足の先に浸り、流れる小川の冷たさが感じられなくなる。
 目の前に居るサーニャだけを、感じていたい。もっとしたい。
 二人は時間の流れも気にせず、川べりで愛し合う。

 やがて幾度目かの極みに達した二人は、ふらふらと体勢を崩し、ざばんと川面に落ちた。
 そのまま数メートル流され、二人はゆっくりと抱き合う。すぐに川べりに流れ着くと、二人はくすくすと笑い合った。
「気持ち良いね、エイラ」
「そうだナ、サーニャ」
「ねえ、エイラ、少しお腹減っちゃった」
「じゃあ何か作るカ? いや待てヨ、ちょうどそろそろ夕食……そうだ良い事思い付いタ」
「?」

「で、何で二人だけ饂飩を食べているんだ?」
 夕食の席、美緒が不思議そうに聞いてきた。
「いやァ~それがちょっト、何と言うか手違いデ……」
「私が芳佳ちゃんにお願いしたんです。無理言って作って貰って」
「そうか。まあ、材料と余裕が有るなら別に構わんがな。二人共しっかり食べて健康になれよ!」
 美緒は笑って席に着いた。
「サーニャ……ホントの事言わなくてモ」
 どぎまぎするエイラを見、サーニャはくすっと笑った。
「本当の事は言ったけど、言ってない事も有るよ?」
「ま、マァ、ネ」
 二人は見つめ合うと、頬を染め、つるっと饂飩を食べた。
 この前聞いた、扶桑の「言い伝え」とやらを信じ試す為に。

end


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