witch doctor remix
●case 1
「おお、元気かバルクホルン!」
「ああ……少佐か。どうかしたか?」
「どうもこうも有るか。魔法力が弱っているそうじゃないか。どうだ、具合は」
「ミーナに暫くの間飛行停止と自室待機を命じられた。まあ、自業自得だな」
「お前が居たからシャーリーが助かりネウロイも倒せた。そう自分を卑下するな。
それに、逆に言えばそれだけミーナがお前を思っての事だ。ミーナの為でも有る、決して無理はするなよ?」
「少佐が『無理するな』と言うとは……」
「おかしいか?」
「いや。何でもない。とにかく、私は大丈夫だ。見ての通り暫くはおとなしく寝ているから……ん? な、何だこの臭いは?」
「お待たせしました!」
「おお、来たか宮藤」
「宮藤!? 一体何事だ」
「バルクホルンさん、ちゃんと寝てなきゃダメですよ」
「こんな不気味な臭いを嗅がされて、おとなしく寝ていられるかっ!?」
「まあ落ち着けバルクホルン、お前をどうこうするつもりはない」
「いや、その異臭で言われても説得力が……。で、二人にひとつ聞きたいのだが」
「何だ」
「何でしょう?」
「宮藤が持っている、その標本らしき物体は何だ?」
「ハブ酒です。あと、スズメの黒焼きに、マムシの黒焼き……」
「標本じゃないのか。と言うか何故そんなものをここに?」
「これ、食べると元気になるんですよ?」
「扶桑ではこういったものを食べると精がつくと言ってな。無理を言って、お前の為に用意した」
「い、いや……、気持ちは嬉しいのだが……」
「遠慮するな! 宮藤も一生懸命料理したしな! はっはっは!」
「はい! バルクホルンさんの為に頑張りました!」
「まあ……。た、確かに、ははは……。栄養が有れば味など関係ないッ! 有り難く頂こう!」
「さ、坂本さん、バルクホルンさんが倒れました!」
「うむ。あまりの旨さに気を失ったか。もしくは、精が付き過ぎたか? はっはっは!」
「違うと思います。とにかくお医者さんを呼ばないと」
「宮藤、お前、診療所の娘だろ? 何とかならんか?」
「ええっ?」
●case 2
「何だいバルクホルン、せっかく見舞いに来てやったのにその姿は。だらしないなあ」
「だらしな~い、げんきなーい!」
「ああ、シャーリーにルッキーニか……何の用だ」
「……あれ? 何か、倒れる前よりもやつれてね?」
「そ、そんな事は無い。ただ、食欲が無い時に食べ慣れない物を無理に食べたのでちょっと気分が」
「そっか。じゃあこれは要らないか」
「何だ、それは?」
「鼻も利かなくなったのかい。重症だな。まあ、これ食って元気出せよ。あたし特製のバーベキュー」
「で、こっちのフライドポテトはリーネと芳佳に揚げてもらったの。さますのはペリーヌの役目~」
「ば、バーベキューか。食べたいのは山々だが、今は食欲が……」
「じゃあ、ポテトはあったしがひとくちもらっちゃうよ~」
「……あれ? この前まで食欲有ったのにどうした? そう言えば筋トレもしてなかったっけ?」
「ウジュー バルクホルン大尉、元気なさそう」
「お前ら……見て気付け!」
「堅物、何か顔色悪いぞ?」
「だから寝てるんだろうが!」
「この前芋の皮むきしてた時は割と元気だったのに」
「扶桑の……いや、何でもない」
「さては宮藤に甘えさせて貰ってメロメロなんだな?」
「なんだな~? ニヒャヒャ」
「……この顔色で、そんな事出来ると思うか?」
「そういやそうだ。でも、甘えたかったんだよな」
「ち・が・う」
「じゃあ、あたしのこの胸に飛び込んで来な! 今日だけサービスするぞ!」
「サービスサービス……ってこれあたしの!」
「そんなサービスは、要らん」
「何で一瞬間が空いたの?」
「気のせいだ」
「まあ良いから食いなよ。料理はあたしのサービスだ」
「……そこに置いといてくれないか? 後で改めて貰う」
「冷めたらまずくなるぞ?」
「ぞぉ~?」
「どんな料理だそれは……もういい、皿を貸せ!」
「何だ、食いっぷり良いじゃん」
「これ位、カールスラント軍人とし……うっぷ! 何だこの味付けは!?」
「焼いたり煮たりの調理は、あたし」
「あじつけは、あったし~! 厨房に有った調味料全部入れてみた! ウジュジュ」
「この、でたらめで下衆で限度を知らない味の加減……貴様ら、私を殺す気かっ!?」
「わーいバルクホルン大尉がおこった~」
「逃げろ~」
「貴様らあっ! うっ、いかん、吐き気が……立ちくらみまで……ぅああっ」
●case 3
「どーしたんだヨ、大尉。元気ダセヨ」
「バルクホルンさん、元気出して」
「ああ、エイラとサーニャか。お前達こそ、こんな時間にどうした?」
「私とサーニャは夜間哨戒ダゾ。その前にちょっと顔見に来タ」
「見て楽しい様な顔じゃないぞ」
「大尉が冗談言うとは珍しいネ~。アレ、何だこの料理……」
「いかん! それは食べるな! 窓から投げ捨てろ!」
「えっ何その危険物みたいナ」
「……なんか匂いがおかしい」
「シャーリーとルッキーニが、でたらめに作ったバーベキューとか言う代物だ。食うと吐くぞ」
「オイオイ……」
「それで、こんなにげっそりして……」
「いや、その前にも少々有ったんだがな」
「バルクホルンさん、宜しければ、これ」
「それ、は……?」
「サーニャが作った、オラーシャの『ペリメニ』ダゾ。美味いから食えよナ」
「何故美味いと分かる? まさかエイラ、引っ掛けじゃ……」
「んな事アルカ!? 仮にもサーニャの料理でイタズラなんてしねーヨ!」
「そ、それもそうだ……疑ってすまなかった」
「でも、何でバルクホルンさん、そんなに疑い深く……それに前よりもやつれて見えます」
「色々有ってな。謎の料理を食わされたり、破壊された味付けの食……あれはもはや食料でも無いが、を食べさせられたり」
「じゃあもうお腹いっぱいカ?」
「サーニャの料理なら食べるぞ」
「はい、どうぞ。食べやすい様に、コンソメスープ仕立てにしてみました」
「ふむ。有り難い。胃が激しく荒れていたんだ……うーむ。美味い。これぞまさしく料理だな」
「何感慨に耽ってるんだよ大尉。まるで今まで拷問を受けてきたみたいだぞ」
「みたいじゃない。そのものだ」
「一体何が有ったんだヨ……」
「しかし、サーニャの料理は優しい味がするな。まさに妹の様な……」
「ちょっと待て大尉。途中からおかしいゾ」
「何か変な事でも言ったか?」
「自覚なしカヨ」
「そう言えばエイラ。お前にはお姉さんが居ると言う話を聞いたぞ。本当か」
「うえッ!? 何処からその話を……」
「何でも装甲歩兵だと聞いたが……陸戦ウィッチか? さぞや苦労されている事だろう」
「ま、まあネ。でも何で大尉と関係あるんダヨ?」
「分かる、分かるぞ。同じ妹を持った姉として、その辛さ、よぉ~く分かる」
「ちょっト、大尉?」
「確かにサーニャと比べるとお前は全然妹らしくないが、こうしてみると、なかなかどうして妹らしいじゃないか」
「大尉やっぱり寝てた方が良いゾ。悪化してるゾ」
「そんな事は無い。この通り、ペリメニも最後のひとつまで……ん。何だこの食感……うぇっぷ」
「当たりダゾ大尉。その中身はスオムスの銘菓、サルミアッキだゾ。それを占いに……」
「貴様ぁっ!」
「用事を思い付いたし夜間哨戒だからサヨナラなんダナ大尉。逃げようサーニャ」
「でも……」
「お、おい、待て……けほっ、ぐへっ……何で、私がこんな目に……」
●case 4
「トゥルーデ、大丈夫?」
「ちっとも元気にならないじゃん。どうしたの」
「ああ、ミーナにエーリカ。すまない。心配掛けて」
「……なんか、この部屋おかしな臭いがするわね。色々なものが混ざった様な。トゥルーデ大丈夫?」
「混ざり過ぎで困ってるんだ」
「何が有ったのトゥルーデ」
「こ、これだけは言える。……無茶苦茶な皆の料理のせいで、私の身体はボロボロだ!」
「叫ばなくても顔色見れば分かるわよ」
「やっぱり、ジェットストライカー履いたから?」
「いや、あれは試作機だから。その後がだな……」
「じゃあ、芋の皮むきで倒れたとか?」
「そうじゃない!」
「何だ、顔色の割には元気そうじゃん」
「あのなあ……」
「とりあえず、元気そうで安心したわ、トゥルーデ。もう無茶しないでよ。これは命令ですからね」
「わかった、ミーナ。心配掛けて済まなかった。どうしてもあいつを助けたかったんだ。分かってくれ」
「解ってるわ。だから、ゆっくり休んで」
「すまない、ミーナ。……ところでミーナ?」
「どうかしたかしら? 私の顔になにかついてる?」
「何か、今日は肌の張りが妙に良いな。色艶も良い……」
「ええ、ちょっと。さっき宮藤さんから身体に良い料理を少し分けて貰って……」
「あ、あれを食べたのか!?」
「美味しかったけど、どうかした?」
「いや……味覚は人それぞれだからな。何でもない、気にしないでくれ」
「そう。じゃあ、私は任務が有るから先に失礼するわね。ゆっくりしてって」
「有り難う、ミーナ。……エーリカは行かないのか?」
「心配だからね。居るよ」
「有り難う。……でも、料理は作ってないだろうな?」
「私に作るなって命令したの誰よ?」
「そうだったな」
「それに、もうトゥルーデ何も食べたくないんでしょ?」
「あ、ああ。今は……」
「じゃあ、私が食べる」
「何を」
「トゥルーデを」
「はあ? エーリカ、お前は一体何を言って……ちょっ、放せ、何をする!」
「病人らしく包帯でちょっと縛ってみました~」
「みました~じゃないだろ! こっこれくらい」
「魔法力回復してないから力出ないよね?」
「う、言われてみれば……何か前にもこんな事が有った様な気が……」
「じゃあ、いただきま~す♪」
「ちょ、エーリカ、やめ、今は……あっ……んん……んあああっ!」
endless
●case 5
「ねえ、美緒」
「どうしたミーナ」
「宮藤さんから、扶桑の身体に良い料理を少し分けて貰ったわ。お酒に、焼いたものに……」
「ほほう、ミーナもか。って、大丈夫だったか? バルクホルンはあれで……」
「あの子はちょっと味覚がおかしいから。私は平気。美味しかったけど?」
「そうか、なら……どうした?」
「ねえ美緒。し・ま・しょ?」
「お前は何を言っているんだ」
「二度も言わせないで♪ ね、美緒♪」
「ちょっと、何のつもりだ……ってこら! 強引にベッドに連れ込むな!」
「逃がさないわよ、美緒♪」
「な、何だ!? いつもより力が増している……ミーナの魔法力が高まっている!」
「うふふ。トゥルーデに肌の張りも良いって誉められたわ。扶桑の料理ってステキね、美緒と一緒で」
「お、おい! 一体どうなっているんだ!?」
「私の身体が熱いのよ! この火照りを美緒、貴方で冷やして! いえ、もっと熱くなりましょう!」
「鬱陶しいわ! み、宮藤! 宮藤は居ないか! 誰かぁ! うわあ!」
end