critical


 超高高度攻撃任務の後、私は「軍規違反」と言う事で数日の飛行停止と自室待機を命じられた。
 仕方ない、当初の計画を全部ひっくり返して独断専行しちゃったんだし。皆に迷惑も掛けた。
 ……だけど、それだけサーニャを守りたいって強い気持ちが有った。
 だからこそ、しっかりシールドも張れて、サーニャを守れた。任務も遂行出来た。
 何より、僅かに見た満天の星空、二人で見たオラーシャの大地……、そしてサーニャの笑顔が、たまらなく嬉しい。

「サーニャ?」
 私は横で寝ているサーニャにそっと声を掛ける。
 極限環境下で魔力を使い果たしたのか、疲れ切って寝ている。
 まるで死んだ様に眠っている。
 ……まさか、と思い、控えめに掛けられていた毛布を少しずらす。
 サーニャの顔、肌が見える。
 私の頬を、彼女の頬に当てる。
 彼女の頬は少し冷たく……でも、温かさは残っていて、感触から、少し前は汗をかいていたと分かる。
「サーニャ」
 そっと目を開ける。ぼんやりとした目で私を見る。
「エイラ」
「サーニャ……大丈夫カ?」
「私は、大丈夫よ。エイラ」
「サーニャ、その、あの、ええっと……愛してル?」
「うん。エイラ」
 こくりと頷き、微笑むサーニャ。
 その言葉を聞きたくて、でもそれ以上は聞きたくなくて……そっと唇を重ねる。
「行こう?」
「何処へ?」
 ゆっくり身体を起こしたサーニャに、パーカーを着せた。

 私はエイラの手を取り、部屋の扉の前に立つ。
 外に誰か居る気配は無い。
 そして、誰かが来るであろう予感も無い。
 だけど私もかなり魔力を消耗しているので、予知魔法が微妙な部分も有る。
 慎重を期して、そっと扉を開ける。
 誰も居ない。
 サーニャの手を引き、部屋の外へ。
 ふと、扉の脇に台車が置かれ、上にトレーが乗っている。
 ……サンドイッチとおにぎりが、それぞれ二人分置かれていた。
 リーネと宮藤の仕業か。
 二人でそれを手に、少しずつ食べながら、先を警戒しつつ進む。
 別に、何処かへ逃亡しようと言う訳じゃない。外に出る為の理由だって有る。
 ただ、今は誰にも見つかりたくない。

 サーニャを連れ、私と一緒に階段を下りた。
 向かうはサウナ。小さいけど、妖精が住む、私達の憩いの場。
 私が食べきったサンドイッチ、サーニャが飲み込んだおにぎり。少しの糧になる。後で何か言っておこう。
 私達は手を取り、誰の目にも触れる事なく、目指す場所へと向かう。

「エイラが行きたいなら、私、良いよ」
 サーニャの呟きを聞いて、私は彼女を握る手に力が入った。

end


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