Disposition


「おはようございます、バルクホルンさん!」
「ああ、おはよう宮藤」
ランニングを終え、食堂に入ると、宮藤が笑顔で私に挨拶をしてくれた。
嗚呼、なんてすがすがしい朝なんだろう。
お前の笑顔でお姉ちゃん、今日も1日頑張れるよ。
「おはようトゥルーデ。どうしたの? 随分嬉しそうね」
「ああ、おはようミーナ……嬉しそう? 私がか?」
「ええ。もしかして、宮藤さんに挨拶してもらったのがよっぽど嬉しかったのかしら?」
「な!? そ、そんなことはないぞ……」
「ふ~ん、そうなの……あら? ねぇトゥルーデ、フラウがどこにいるか知らない?」
ミーナが周りを見渡しながら、私に尋ねる。
変だな、エーリカなら私が朝のランニングに行く前に起こしたはずだが……
「さてはあいつ、二度寝だな。全く、仕様のない奴だ」
私は、同室の眠り姫を起こすために一度食堂を後にする。

「おいエーリカ! 起きないか」
私は、部屋中に散らばっているエーリカの衣服や家具をかき分け、彼女のもとへ歩み寄る。
「う~ん、あともうちょっと……あと40分……」
タオルケットに身を包んだエーリカが、眠たげな声で呟く。
「ええい、なにがあと40分だ! 早く起きろ……ひっ!?」
私が強引にタオルケットを奪うと、そこにはタンクトップのみを身に付けたエーリカの姿があった。
つまるところ、今のエーリカは下半身裸だった。
「ふぁ~あ、おはようトゥルーデ……」
「おはようじゃない! な、なぜお前はいつも下だけ脱いで寝てるんだ! は、早く穿かんか!」
「んー、髪掴まないでよ……トゥルーデのほうこそ、いつもお風呂で私の裸見てるのに、
なんでそんなに恥ずかしがってんの?」
「そ、それはだな……」
確かに、私たちは6年以上の付き合いでお互いの裸など見慣れたものだ。
いや、だからこそ今のエーリカの格好は妙に扇情的に感じる。
私はJG52時代の同僚、クルピンスキーとの会話を思い出しながらそんなことを考えていた。

――――――――

『バルクホルン、下だけ裸っていうのは全裸よりいやらしいと思わないかい?』
『何を言っているんだ、お前は』
『例えば僕がロスマン先生のズボンを脱がすとする。こうやってね』
『きゃっ! ちょ、ちょっと何するのクルピンスキー!?』
『例えばじゃなくて本当に脱がしてるじゃないか』
『ほら、今のロスマン先生の格好、全裸よりそそられるものがあると思わないかい?』
『いや、特にそうは思わないが……それより早くロスマンにズボンを返してやれ』
『そうか、バルクホルンにはまだこの魅力が分からないか……残念だ』
『ズ、ズボン返しなさい! このエロ伯爵~!』
『うわっ、先生が怒った! 逃げろ~!』
『待ちなさい!』
『……はぁ、確か私たち、今戦争してるんだよな……?』

――――――――

クルピンスキー、あの時お前が言いたかったこと、今なら少し分かる気がする。
確かに、下だけ裸というのは全裸よりいやらしく、とてもそそられる。

「エーリカ、実は私、全裸のお前より上だけ着ているお前を見るほうが興奮するんだ」
「へ?」
突然の私の告白に目を丸くするエーリカ。
まぁ当然といえば当然の反応だろう。
「その……一緒に風呂に入ってるときは何ともないんだが、今みたいに下だけ脱いでいるお前を
見ていると胸がこう、ドキドキするんだ……すまない、いきなり変なことを言ってしまって」
「ふ~ん、つまりトゥルーデって変態さんなんだ?」
「それに関しては否定できないな」
「あはは。私、とんでもない人を好きになっちゃったみたい……でも、トゥルーデが
どんな性癖を持ってたとしても、私のトゥルーデを愛する気持ちは変わらないよ」
エーリカはそう言って私に微笑みかけてくれた。
やばい、可愛すぎる。天使だ、天使が私の目の前にいる。
「エーリカ、こんな私を、愛してくれてありがとう」
私はエーリカのことをたまらなく愛おしく思いながら、彼女を優しく抱きしめた。
「トゥ、トゥルーデ!? い、いきなりハグだなんて、ちょっと恥ずかしいんだけど」
「下に何も穿いてなくても平気なお前が今更、何を恥ずかしがることがあるんだ?」
「それとこれとは話が別だよ。好きな人にいきなり抱きしめられて、恥ずかしがるなって
言うほうが無理なんだけど……」
エーリカが顔を赤らめながら俯きそう答える。
私は先ほどより胸の鼓動が早くなるのを感じる。
ああもう、お前のその可愛さはなんなんだ。

「エーリカ」
「……なに?」
「愛してる」
私は、エーリカの頬に口付けを落とし、彼女を一層強く抱きしめた……

~Fin~


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