open-air spa


 眺望の素敵な露天風呂。
 その浴槽に浸かる二人のウィッチ。
「はあ……」
 大きく息をついたのは、501の隊長ミーナ。
 横で少し小さくなって入っているのは、時折湯気で眼鏡が曇るペリーヌ。
「この前は散々だったわね」
 誰とも無しにミーナが呟く。ペリーヌは思い出したくもないと言った感じだったが、沈黙に気圧され、
「ええ、まあ」
 と返し、自分の尻をさすった。
「まったく、油断も隙も無いわね、ネウロイは」
 ミーナがまた呟く。ペリーヌはミーナの方を見て、うんうんと頷く。
「でも中佐は、問題のネウロイを……その……」
 ミーナの視線を受け、黙り込む。
 微妙な空気が流れた後、ふう、と溜め息を付くとミーナは肩まで湯に身を沈め、何とも言えない表情を作った。
「あんな破廉恥なのが……皆に見られたのよ?」
「ええ、まあ」
「それにペリーヌさん、貴方私の方に突っ込んで来て脱がしたでしょう」
「え、いえ、それは、わたくしは問題の解決を最優先に……、その……、申し訳ありません」
「もう、いいのよ」
 顔を赤く染め、反省するペリーヌを見、苦笑するミーナ。
「そう言えばみ……坂本少佐から聞いた事が有るわ。お風呂に肩まで浸かって、百、数えると身体に良いそうよ」
「百?」
「血の巡りが良くなって疲れがよく取れるんですって」
「な、なるほど。扶桑の入浴には細かいルールが有るのですわね」
 微妙に勘違い気味のペリーヌ。
「一。二。三……」
 ゆっくりと数を数えながらリラックスするミーナ。
「そう言えば、少佐の姿が見えませんが、どちらへ?」
 ペリーヌの問いに、間を置いて答えるミーナ。
「九、十、十一……そうね、さっきまでみんなの訓練を監督するとか言っていたけど。もうすぐ来るんじゃないかしら」
「そ、そうですか」
「二十、ちょっと一区切りね」
 湯から出て、縁に腰掛けるミーナ。上気した肌が艶めかしい。
「流石にいきなり百は無理ね。のぼせちゃうわ」
「そう、ですわね」
 実はペリーヌは何も言わず四十まで心の中で早くカウントしていたのだが、ミーナの一言でカウントが途切れた。
 同じく、ざばあと湯から出て、縁に座る。
「この戦争が終われば……」
「はい」
「ここも、良い観光名所になるかも知れないわね」
「基地が観光名所に?」
「だって、この辺り一帯は、元々素敵な場所でしょう?」
「確かに」
「それにほら、見て」
 ミーナはペリーヌの肩を抱き、海の向こうを指差した。
 海の彼方、水平線の向こう。
「美しいでしょう? この空、海……私達が戦争をしてるなんて、全然思えないわね」
「ですわね。でも……」
「だから、こうやって、平和な時間を少しゆっくり楽しむのも、良い事なのよ?」
 ミーナはペリーヌの肩を抱いたまま、微笑んだ。
 純粋なことば、こころに触れたペリーヌは、何も言わず、こくりと頷いた。
「暫く、このまま海でも見てましょうか」
 えっ、っと驚くペリーヌを見、ミーナは笑った。
「そうね。あんまりのんびりし過ぎると坂本少佐に怒られちゃうわね」
「いえ、わたくし、そう言う意味では」
「それに……」
 下の脱衣所で聞こえる歓声、嬌声。
「訓練が終わったみんなの番ね。私達はそろそろ退散しましょう」
「は、はい」
「百まで数えるのは、また今度ね」
 ミーナは微笑み、ペリーヌの肩、鎖骨の辺りをつんつんとつついた。
 赤面したままのペリーヌの手を引き、ミーナは浴場を後にした。

end


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