ファラウェイランド1945 舞台裏の取引
「ちょ、ちょっとこれはどういう事っ!?」
「見ての通りだが?」
眼を覚ましたらいきなり下着姿+リボンで拘束&デコレーションされていて天蓋付きのベッドに転がされていた。
ベッドサイドには黒髪に黒い下着とズボンを纏って首からスコープを提げた女性がたっていて、私を見下ろしている。
イヤ、ホント分けわかんないんだけれど……。
「しかしなぁ……」
目の前の女性はこちらが眼力で殺す勢いで睨みつけてるのをものともせずにこちらの胸元を覗き込み……。
「はぁ……」
と、大きく溜息をついた。
ちょ、何か失礼じゃないのその態度!
「何のつもりよっ!」
「いや、残念な大きさだと思ってね」
「お、大きなお世話よっ!」
「だが、こうしてみるとキミも悪くない」
「え、ちょっと何? どういう事っ!?」
「妹の方が好みではあるが、『鉄火場の女』の名はキミの方がよく似合う」
ベッドに膝から上がってのしかかってくる黒髪の女性。
言葉は、カールスラント訛り?
って、そんな事を冷静に観察してる場合じゃない。
リボンで縛られているせいで動きの不自由な私はあっという間に組み敷かれてしまう。
暴れようとしても相手の方が力が強い。
こっちだって上がりを迎えてるとは言えウィッチだって言うのに……相手もウィッチ?
「もっと抵抗しても構わない。好きに暴れてみてくれ」
「くっ」
唇をかんでにらみつけるけれど、ちょっとあってから考え直して全身の力を抜いた。
相手が女性なら、貞操の事も何も無い。犬に噛まれたと思って済ませられるからだ。
「フ、観念してしまったのか。では楽しませてもらうとしよう」
彼女の進撃が始まった。
そして、身を任せたのが失敗だったとう事にはすぐに気付く事ができた。
彼女は真性で、女性の弱点を確実に突いてきた。
指使いが、舌使いが、的確で気持ちよすぎて何度も意識が弾ける。
女性同士は際限が無い。まるで快楽の迷宮に囚われたかのように彼女の技巧に嵌まり込み、いつしか解かれていた拘束も私に逃亡する気を起こさせることは無かった。
そして気が付くと、私だけがベッドに寝ていて、彼女はロッキングチェアに深く腰掛け、ウィスキーの入ったグラスを傾けていた。
「目が覚めた?」
暗い照明の下で見る彼女の物憂げな流し目は、同姓の私でも胸を高鳴らせるほど色っぽかった。
「じ、事情を話してくれてもいいんじゃない?」
気圧されない様に、雰囲気に流されないように精一杯の虚勢を張って、強い口調で言う。
でも、私の言葉など意に介さないかのように彼女は口を開く。
「夜は短い。夜明けと共に魔法は解ける。君が望むなら次のラウンドだ。先ほど以上に素敵な時間を約束しよう」
魅力的な声でそう告げてから、再びグラスを煽る。
「あ、あのねぇ、わたしには……んむっ」
上半身を起こして反論しようとした私に対して、優雅に立った彼女はそのまま唇を重ねてくる。
ウィスキーの強いアルコールと彼女の仄かな体臭とが、柔らかく固い舌と共に私の口腔へと押し込まれて絡みつく。
長い長い大人のキス。
数分の間、お互いに舌を絡み合わせて快感を貪り合う。
「……いいわ」
彼女の言葉に期待を得てしてしまった私は、自己嫌悪から目線を逸らして頷く。
「フフ」
妖艶な笑みを浮かべ私を見下ろす彼女。
流されてしまった。
毒を喰らわば皿までとか色々と心の中で言い訳してみるけど、雰囲気と快楽に流されたのには違いない。
次にやってくる悦楽へと期待の眼差しを向けてしまった彼女が次にとったのは奇妙な行動だった。
首から提げたスコープで、私を見ている。
「?」
期待の眼差しは疑問系に変わり、奇妙な彼女を首を傾げて見つめ返す。
「ここ?」
すると彼女はおもむろに手を伸ばし、私の体に触れた。
「ヒッ!」
指一本で、軽く下腹へと触れただけなのに、電撃のような強い刺激が走る。
そして、彼女の攻勢は続く。
スコープ越しに私を見ながらひたすら肌の上に指を走らせる。
指の向かう先からは信じられないほどの快感が溢れて来て、翻弄される。
色々とはしたない事を叫んだような気もするけれど、意識が殆ど飛んでいたのであまり覚えていない。
そして気が付けば朝。
「おはようウィルマ」
「お、おはよう……」
「キミも想像以上に良かったよ。さすが私のお目がね適った少女の姉だ」
「もしかして、あなたリーネの事を欲しいって言った……」
「いかにも。私がガランドだ」
「ちょっ、この変態将官!」
「まぁまぁ、抑えて欲しい。キミの行為で妹は親友と共に飛べるんだ」
「え?」
「なぁに、色々と取引があったのさ」
「ちょっとぉ、それどういう事!?」
「ヒミツだ……それとももう一晩付き合うかい?」
「バカッ」
「ルースポリ大尉からの最新の写真も全て君に届けよう」
「え?」
「そのくらいの権限はあるということさ。今後ともいい関係を続けたいものだ、ウィルマ」
「ベーだ」
子供っぽいかと思いながらも思いっきりあかんべーをして、急いで服を着て高級ホテルだったらしい部屋を出て、心のどこかでまた呼ばれてしまう事を期待してる自分を抱えたまま家路へと付いた。
501JFWが再結成されたというニュースを聞いたのは、それから数日後のことだった。