I want to know you.
「坂本美緒少佐」
「なんだ?」
月明かりが照らす夜、他の隊員たちがすでに眠っている頃、隊長室に私は呼び出された。
私を呼び出した張本人、ミーナの顔を窺うと彼女は気難しそうな表情で私を見つめている。
何かミーナの機嫌を損ねるようなことを仕出かしてしまっただろうか、
心当たりを考えてみるが全く思い浮かばない。
そんなことを考えている私にミーナは更に言葉を続けてくる。
「あなたに渡さなければいけないものがあります」
「私に渡すもの?」
何だろう、ミーナの表情を見るに私にとってあまり喜ばしくないものなのかもしれない。
まさか転属命令書か? いやいや、それは困る。
まだまだ私には宮藤やリーネ、ペリーヌらに教えてやらなければならないことが多々ある。
何より私は、ミーナともっと一緒にいたい。
「ミーナ、私は」
「目を瞑ってください。私がいいと言うまで目を開けちゃ駄目ですよ?
もちろん魔眼を使うのも禁止です」
「あ、ああ……」
私はミーナの言う通りに目を瞑った。
私が目を開けたとき、目の前に転属命令書が突き出されているなんてことないよな?
「目、開けて」
「ああ」
目を開けると私の首元には銀色のネックレスがかかってあった。
「ミーナ、これは?」
「誕生日おめでとう、美緒」
いつもの優しい表情に戻ったミーナが笑顔で私にそう言ってくれた。
ふと時計を見ると、針は零時を指していた。
そうか、今日は8月26日か……
つまり、このネックレスはミーナからの誕生日プレゼントというわけか。
「よく似合ってるわよ、美緒」
「ありがとうミーナ。それにしても驚いたぞ。
神妙な面持ちで『渡したいものがある』なんて言うものだから、
てっきり転属命令書でも渡されるかと思ったよ」
「ふふふ、ごめんなさい。でも、こうでもしないとあなたにプレゼントを渡せなかったから」
「どうしてだ?」
「だって、素の私であなたと接するとその……胸がドキドキしちゃって……」
ミーナが顔を赤らめ俯きながらそう言う。
そのミーナの表情が可愛らしくて、私も思わず笑みが零れる。
「はっはっは! ストライクウィッチーズの隊長も今日ばかりはただの一人の少女のようだな」
私は顔の火照ったミーナをそっと抱きしめた。
「み、美緒?」
「隊長としてのお前も素敵だが、一少女としてのお前をもっと見てみたいな」
私はミーナを更に強く抱きしめ、言葉を続ける。
「お前をもっと知りたい」
私はミーナの唇にそっと自分の唇を寄せる。
「美緒、んっ……」
普段の凛々しい彼女からは想像できないほど可愛らしい声をあげるミーナ。
私はそんなミーナが今まで以上に愛しくなり、彼女を一層強く抱きしめた。
「ミーナ、私の知らないお前をもっと見せてくれ」
「美緒、んんっ」
私たちはそのまましばらくの間、お互いの唇を重ねあった。
――素敵な誕生日プレゼントをありがとう、ミーナ。
~Fin~