無題


「ねえ、エイラ・・・」
「ん?どうした?サーニャ」
ロマーニャでの最終作戦発動前の夜、二段ベットの上にネコペンギンを抱っこしたままサーニャはエイラに声をかけた。
「もし明日、作戦が失敗したらみんなとはお別れになっちゃうんだね。」
「ん~~~、そうだナア。でも、サーニャも言ってたとおり、負けなきゃいいんだよ。私たちは11人なんだ。大丈夫ダヨ。」
力強くサーニャに言った。これ以上サーニャを不安にさせないために。
「そうだよね。。。がんばらなきゃ!!」
サーニャは笑顔でそう答えた。
「うん、だからもう寝て、明日に備えないとナ!」

「・・・うん。」

エイラとサーニャの部屋が静寂に包まれる。

もう寝ちゃったかな?エイラは、自分も寝る態勢に入り、襲いつつある眠気に身を任せようとしたところで
サーニャが声を発した。

「えいら。」
「んえっ?ん~~ナンダ~~?さーにゃ~」

「今日、みんなでお昼に一緒にお風呂入っていたとき、何を見ていたの・・・?」
ためらいがちにサーニャが聞いてきた。

エイラはぎくっ!とした。
いつもはサーニャの裸を恥ずかしさのあまり直視できなかったのに、今日に限ってちらりとのぞいてしまったのだ。
そしてそのまま日光の下にさらされる、湯気を身にまとって少し紅潮したサーニャの透き通る白い肌に目が釘付けとなってしまい、
そのまま目を離すことができなかったからだ。

「ねえ、、、エイラ。」
「い、いや、そんなコトあったケ・・・?」
顔が熱い。

(ばれてないよなナ~~~ばれてないよなナ~~///ちょっと目が合った気もするけど、きっと気のせいだヨナ~~////)

「んもうっ。エイラの・・・ばか・・・」
「サ、サーニャがなんのことを言ってるのかわからないナ~//」

すると、突然、サーニャが二段ベットから下りてきて、エイラのベットに入ってきた。
エイラはビックリして、がばっ!と上半身を起こした。

「なっ!なんだヨっ!サーニャ、いきなりっ!」
「エイラ。。。」
ジーっとサーニャはエイラを見つめ、こう言った。

「私を、見てたよね・・・?」
そう言ったとたん、サーニャは顔を真っ赤にした。

ドキン。
エイラの心臓が、力強く跳ねた。
気が動転して、頭が正常に働かない。サーニャは顔を赤らめたまま、上目遣いで私のことを見つめてくる。
逃げたい。そう思う一方で、あぁ・・・サーニャの瞳はなぜこんなにも美しいのだろう。
吸い込まれてしまいそうなほど綺麗だ、なんて思ってしまう自分が情けない。

「うん。見てたヨ。サーニャの体があまりにも綺麗だから、ずっと見てタ。」

「っ!!??」
私は口を手のひらで覆った。
今、私はなんて言った!!??なんだかとんでもなく恥ずかしいことは言ってしまった気がする!!
どうしたんだ!?私!!いつものヘタレはどうした!

発言した自分にビックリしながら、サーニャはどう思っただろうと不安に思い、サーニャに視線をやった。

「・・・。」
サーニャは、とてもビックリしたようで目を丸くし、その後、耳まで真っ赤にして、顔をそむけた。

「っ!!な、ななな、何を言っているの・・・?エイラ・・・。」

「ごごごご、ゴメン!!!!い、い、今のナシっ!!!!」
慌てて、エイラも顔をそむけた。

沈黙が続く。

(い、息苦しいっ・・・!なんナンダ、この空気は!というか、何言ってんダ、私は!)

この重苦しい空気に耐えられなくなったのか、サーニャはエイラのベットから下り、部屋の窓を開けた。
窓から月光が差し込む。とても深夜とは思えないほど空が明るい。
(気づかなかった。今日はとても綺麗な月夜なんだナぁ。)
(じゃなかっタ!今はそんなことより、大切なコトガっ!!)

窓を開け放し、夜空を眺めるサーニャに視線をやる。
ここからは顔がハッキリとは見えない。
サーニャがこちらを見ていないことをいいことに、目を懲らしサーニャを見やった。

サーニャの耳が赤い。赤いなんてものじゃない。真っ赤だ。
心なしか、体が震えていた。

(サーニャを泣かしたっ!?)

焦った私は、思わずサーニャに声をかけた。

「サーニャ?」

「・・・。」

サーニャは何も答えない。

心配になった私は、サーニャのところまで駆け寄っていき、サーニャの肩に手をかけ顔をのぞき込もうとした。

「だ、だめっ!」
サーニャが叫んだ。

「エっ!!」

「・・・。ちょ、ちょっと・・・顔・・・見ないで・・・。」
うつむいたままのサーニャ。

「で、デモ・・・。」

「あ、あああ、あの、ほんと、なんでもないから、ちょっと暑くなっちゃって夜風に当たろうと思っただけだから、
ほ、ほんと大丈夫だから ・・・。」

「あっ!!あああ、あぁ、そうか。うん、わかった、じゃあちゃんと鍵は閉めるんダゾっ!」
サーニャの肩にかけたままだった手を離し、ベットに向かう。

ベットに向かう・・・はずだった。
なのに、どうしたことだろう。
わたしは・・・どうかしてしまったんだろうか?
自分が世間で言うところの“ヘタレ”というものに属していることは重々承知していた。
大変不名誉ではあるが。

サーニャが、窓枠に両手を置いたまま俯いていたことまでは覚えている。
ただし、今のこの状況の自分は理解できない。
わたしは、そのサーニャを何かから守るかのように、まるで神聖なものを世界中にはびこる悪や邪といったものから守るかのように、自分では決して触れないように、サーニャの両手の外側から自分の両手も置き、
サーニャを包み込んでいた。

「ど、どうしたのっ!?えいら・・・」
「ウン。」
「うん、だけじゃ分からないわ・・・」

サーニャはこちらを見ようとしない。サーニャがベットを下りてから、一度もサーニャの顔を見ていなかったことに気づく。
(サーニャの顔が見たい・・・。もし501が解散してしまったら、世界の情勢が変わってしまったら、もう今みたいに一緒にいられなくなるかもしれない。こうやって、そっとそばでサーニャを守れなくなるかもしれない。)

わたしは思い切ってサーニャの顔を見ようと、肩に手をかけ振り向かせた。

「!?」

サーニャは泣いていた。それはもう顔を真っ赤にして、声が出ないように口元をキュッと結び、眉毛を八の字にして、こちらを睨むようにして。
口から出そうになっている心臓をやっとの思いで体の中へ押し込んだ。

「エイラは・・・ずるい。ずりゅいっ!!」

興奮しているからだろうか。サーニャが噛んだ。サーニャは一層顔を真っ赤にした。

(かわいい。すごくかわいい。サーニャマジ天使。いやイヤ!今は会話が先ダっ!)

「なあ、サーニャは私に見られるの、その・・・い・・・イヤだった・・・カ?」

「イっ、イヤじゃないっ!」
サーニャは首をぶんぶんと振った。まだ真っ赤だ。

一連の可愛らしいサーニャの仕草に、つい「ふっ」と微笑んでしまい、肩の力が抜けてしまった。

「ヨカッタぁ!もう心配したんダゾっ!サーニャがこっちを向かないから、傷つけちゃったかと思ったんダカラナー!」
重苦しい空気が和み、サーニャが傷ついてないと分かるやいなや、それまでの一連の流れもすっかり忘れてしまいエイラは満面の笑みで、それはもう眩しいほどの笑顔でサーニャにこたえた。

その時だった。

フワッ

ん?サーニャの匂いだ。いい匂いだナー・・・。

「っっっつ!!!!????」

サーニャの唇がわたしのそれを捕らえた。
とういことをハッキリと認識したのはどれだけの時間が経ってからだろうか。

サーニャの唇が震えている。目を開けると、ギュッと固く結んだままのサーニャのまぶたが見えた。
そして、それが、私の見た今夜の、いや、今生の眺めだった・・・。

―翌朝―

「ん~~~っ!よく寝たな~~!なんかとてもイイ夢を見た気がするぞ!今日はなんだか頑張れそうだ!」

不意に右手にぬくもりを感じ、右に目をやった。
サーニャが寝ている。しかも、サーニャと手を!手を!つないでいる!!
フッとまた気が遠くなるような気がしたが、なんとか持ちこたえる。

「サ、サ、サ、サーニャと手をつないで寝てたんダナぁ~~!!」
「こんなこと初めてダっ!!///」

嬉しさとドキドキのあまり声に出してしまうエイラ。
きっとサーニャが寝ていると思い、つい気がゆるんでしまったのだろう。
「も、もっかい、寝ヨウット!!」
そしてエイラは、とても幸せそうに二度目の眠りについた。


エイラの寝息を確認した後、サーニャはおもむろに体を起こした。
実はサーニャは興奮して眠れず、ずっと起きていたのだった。

その表情は不機嫌そのもの。気を失ったエイラをベットまで引っ張っていったのはもちろんサーニャである。
手をつないだのも。そして、キスをしたのも・・・。
しかも、そのことを彼女は、「イイ夢を見た」と賜ったのである。一世一代の勇気を振り絞った結果がこれである。

「エイラの・・・ばか・・・。」

幸せそうなエイラの寝顔。なんだか少しムカッとした。

ムカッしたので、サーニャはエイラにはお仕置きをした。

記憶のない中で、二度も唇を奪われるという、エイラにとってはとてつもなく悔しいお仕置きを。。。


~FIN~


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