ヘルマの発情
ゴロゴロゴロ...
ウーッウーッウーッ...
ニャーン!
うっ…うるさいであります…
ようやく夜が明けるという時間、外では発情を迎えたネコが鳴いていますです…。
あ、自己紹介遅れました!第131先行実験隊「ハルプ」第三中隊所属、ヘルマ・レンナルツであります!
…って、誰に向かって自己紹介しているのでしょうか?
さあ、あと少しで夜明けです。もうひと眠りするでありますか。
さっ、枕を元の位置に戻して…と、
「んっ…」
あ、ごめんなさい!静かに静かに………んっ!?
「………あら、ヘルマさん。起きちゃったかしら?」
えぇぇぇぇっ!!??
なっ!!何故私の隣に我がカールスラントが誇るエース、愛称は「スペードのエース」ことミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐
が寝てるでありますか!!??それにしかも………一糸纏わぬお姿で!?
「ああああああああの…」
「なぁに?」
「あの…何故私の隣、そして何故全裸…なのでありますか?」
「え…覚えてないのかしら?」
「恥ずかしながら…」
「ふふふ…そうゆうヘルマさんこそ」
と私はヴィルケ中佐に指差され………あれ、何も着てない…。
あ、どうりでさっきからスースーすると!
って違うっ!
「もう…夜中は散々ベッドの上で暴れたく・せ・に」
と第1期のEDにあったような動きで私の唇を人差し指で触ってきたであります…。
えと…記憶を整理しましょう。
***
あれは昨日の10時過ぎ…
「カールスラント空軍第131先行実験隊『ハルプ』第三中隊所属、ヘルマ・レンナルツ曹長、只今到着しました!」
「ご苦労様です。長旅、お疲れさまでした」
本国から連絡事項の伝達と書類の受け渡し、そして新型ストライカーの飛行テストを含めて連合軍第501
統合戦闘航空団の基地へお邪魔して…。
「いえいえ!私は疲れてなどいません!お心遣い、ありがとうございます!」
「あら、本当?実は…おもてなしをしようと他の隊員がケーキを焼いてくれてるんだけど?」
「本当でありますか?!…ではお言葉に甘えて。夕方までには帰りますので!」
「ふふ、夕方とは言わずに明日の朝でも良いのよ?」
甘い物には目がない私!なら居るしかないではありませんか!!!
うわあ、ヴィルケ中佐は綺麗で魅力的な方だなあ…と思いつつ談話室へ案内されて、
「ねーねー!名前なんて言うのー?」
「アンタのストライカーは音速を超えられるのかい?!」
「ご年齢は…おいくつですか…?」
「なあ占ってやろうか?」
「マッ、マリーゴールドには興味がありまして?!」
「紅茶では何の種類がお好みですか?」
「納豆にはネギを入れるタイプですかぁ?!」
「ねえみんな…ヘルマさんが困ってるじゃないの」
「はっはっは」
談話室のソファーに座ると501部隊の皆から質問攻めにあって…
正直、ケーキにたどり着くまで10分ちょいかかったであります。
やっとケーキにありつけた…かと思いきや、
「ハルトマン!ズボンを履けズボンを!!!!」
「ふあ~…あ、ホントだ」
こっ、この声は!!??
思わずケーキを盛った皿を持ちながら、立ち上がった私!
「ヘルマさん、お皿とフォークが!」
周りにいた隊員の方の声も聞かず(立ち上がったと同時にお皿とフォークを地面に落としてたであります)、
「ババババババルクホルン大尉!!??」
「ん…?」
ハルトマン中尉を追っていたバルクホルン大尉は私に目を向けて…っ!
や…やった!目が合ってしまったであります!!!!
本国で発売されてるプロマイドを何枚も買い占めるほどの憧れの人物がここに…!むしろバルクホルン大尉が
好きで好きで軍に入ったと言っても過言ではないくらい!………それは流石にないでありますね。
とにかく!憧れの人物が!!!!
「えと…キミは」
「もももも申し遅れました!!カールスラント空軍第131先行実験隊『ハルプ』第三中隊所属のヘルマ・レンナルツ曹長です!」
きっ…決まった…!!
お母さん、お父さん…もう私は悪いことはしません、「サッポロ一番 塩ラーメン」にマヨネーズをかけて食べたりは
しません…!!つまり何が言いたいかと言うと、もう幸せであります!会話したこと自体が!
「…あ」
「知ってるのか?ハルトマン」
「うん。ウーシュから」
「あぁ、双子の妹の?」
「ほら、技術省にいるでしょ?で、よく実験台になってるんだって。よく手紙で出てくるよこの娘」
「そうなのか」
「…部屋にトゥルーデグッズがいっぱいだとか」
「ひぃ!?」
「そろそろこの娘、現実世界に呼び戻そうか。お~い」
「…はっ!?」
「あ、戻った戻った」
「私…ちょっと異世界に飛んで行ったであります。ってハルトマン中尉!!!!」
「わっ、ビックリしたあ…急に叫ばないでよ~」
「何なんですか、あなたのその…恰好は!!」
「え~」
「本国から噂は常々聞いておりましたが…まさかあの噂は本当だとは」
「ねえ、どんな噂~?」
「上官に向かってこんな事を言うのはアレですが…日常生活においては怠惰で寝てばかりで、
勲章も床に置いてしまうほどの無頓着振り、ズボン一つ見つけるのにも苦労するほど部屋は汚いと」
「わあ!それまさしく『まとめwiki』の情報だねえ。あんまネットの情報を鵜呑みしちゃいけないって
学校で習わなかった~?」
「ムキ~!」
「まあまあまあ。ヘルマ曹長」
え…今、バルクホルン大尉から呼ばれた…?
「はっ…はいぃぃっ!!!!」
「わざわざ遠い所から御苦労。歓迎するぞ、ヘルマ曹長」
「ありがたき幸せ!!!」
「うっ…ううっ…」
「なっ、何故泣くんだ!?」
「だって…だってぇ…ぐすっ」
いけない!感極まってつい…っ!!
「泣かないでくれ…っ」
「だって…楽しい時間っていつか終わっちゃうではありませんか…ぐすんっ」
「堅物、その娘を泣かすなよ」
「べっ、別に泣かせてなどは…!!」
「うわ~ん!!!!」
その後、宮藤軍曹とリネット曹長が慰めてくれて…この隊は本当に良い人ばかりですね!
それからお茶をすすりながら、我が部隊で有名人の坂本美緒少佐と素晴らしい肉体をお持ちの
シャーロット・E・イェーガー大尉とストライカー談議に花を咲かし、気付いたら時計は夕方を差してたであります。
「あ、いけない!もうこんな時間であります!」
「なんだー、もう帰るのか―?」
「はい、早く本国へ帰って報告書の作成を」
「ヘルマ曹長!」
すると今まで何処かへ行っていたヴィルケ中佐が私の前へ現れ、
「何でありますか?!」
「あのね…この書類、不備がちょっと見つかったの。悪いんだけど私の部屋まで来てくれるかしら」
「は、ははぁ」
ヴィルケ中佐の言う通り、上官から渡された書類には若干のミスが発覚ありましたであります。
「…って事は書類の書き直しをしなくちゃならないのね…?」
「そうゆう…事になりますね。大丈夫です、私は書式などは覚えているので!」
「本当?じゃあ悪いんだけど…手伝ってくれるかしら」
「はい、喜んで!」
あぁ…笑顔も素敵だなあ、ヴィルケ中佐。
…刻々と時は過ぎ、気づいたら夜の10時!あれ、なんだかんだ言って12時間ここに居たことに…。
「ありがとう、ヘルマさんのおかげで助かったわ」
「いえいえ!」
「…あら!こんな時間だわ!!」
「急いで戻らないと!」
「待って、ヘルマさん」
「はい?」
急いで格納庫へ向かおうとする私を引き止めたヴィルケ中佐。はて?
「夜の飛行は危険なので今晩はここに泊っていけば良いわ」
「え、でもしかし…」
「大丈夫です、私からあちらへ連絡します」
「…じゃあお言葉に甘えてもよろしいでしょうか?」
「ええ。この基地には扶桑式の大浴場もあるからゆっくり浸かっていけば良いわ」
チャポン...
こんな大きな浴槽、初めてであります!
「う~ん…!!」
手足が伸び伸びと伸ばせるし、
ヴィルケ中佐の役に立ったという満足感。それに…
「バルクホルン大尉と………(ブクブクブク」
…普通、こうゆう時にはバルクホルンが偶然にも浴場へ入って来て「あれ、入ってたのかヘルマ曹長」って
言うパターンがお決まりなんだけど…ないかぁ、流石に。
ガラガラッ
「あれ、入ってたのかヘルマ曹長」
「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」
「どっ、どうした!!??」
「いっ、いえ何も!!」
「隣良いか?」
「よっよろしくお願いします!!」
「何をお願いされるんだ…?」
「そっ…それもそうでありますね、あははは」
「どうだ?ヘルマ」
「ヘルマ?!」
「風呂の中では階級などは関係なし!と坂本少佐が言ってたんでな」
「こっ…光栄です」
「ふう…気持ち良いなあ」
バルクホルン大尉!申し訳ございません!!貴方様とせっかくお話し出来る機会だと言うのに、
『色良し張り良しバルクホルン~♪』
…ハルトマン中尉が作詞作曲した歌が脳内で何回もリピートされてます!しかもここだけ!
「さっきまで食堂でリベリアンと酒の飲み比べをしていてな…ったく、アイツは限度と言うモノを知らん」
『色良し張り良しバルクホルン~♪』
邪念よ~!どこかへ行ってしまえ~っ!!
「で、とどめはスピリタスだ。あれは96度あってもはや燃料だ」
『色良し張り良しバルクホルン~♪』
おいおいおいおい…であります!!!!
「でもリベリアンがこれじゃ面白くないって言って裏でコッソリ媚薬を入れてたのを私ははっきり見てたんだ。
で、まあバカバカしくて飲むのをやめて風呂にこうして入りに来た訳だが」
『色良し張り良しバルクホルン~♪』
『色良し張り良しバルクホルン~♪』
『色良し張り良しバルクホルン~♪』
「色良し張り良しバルクホルン~!!!!お先失礼しますっ!!!!」
「なっ、どうした!?」
ダメだ!と思い…せっかくの機会なのに、私からそのチャンスを捨てて浴場から出たであります。
ごめんなさい、バルクホルン大尉………たぶん一生の良い思い出になります…。
あまりのショックで、お風呂から抜け出した私。
とりあえず食堂へ向かうと、シャーロット・E・イェーガー大尉が机に突っ伏して寝ていました。
そんな事より私は喉が渇いたであります!!なりふり構わず、机の上に置いてある水の入ったコップを手に取り、
ゴクゴクゴクッ...
「ぷはぁ!」
…んっ!!??
かっ…辛っ!!!!!!
「おおおおおおおっ!!」
これっ…お酒じゃないですか!しかもめちゃくちゃ濃い!!
…あ、ダメだ…なんか体がポカポカしてきた…
「あへ…あへへへへ…」
だんだんと動きが鈍くなってきて…そのまま地面に座ってしまい…
…と言うか、な~んかもうどうでも良くなってきたであります。
バルクホルン大尉?アレはただの「シスコン大尉」でしょ~が。
ハルトマン中尉も軍人としてなってないし。
シャーロット・E・イェーガー大尉はデカ過ぎだし。
ヴィルケ中佐はさんじゅう………。
「…んっ」
目を覚ますと誰かに「おんぶ」されてるような気分に。
「あら、起きたわね?」
「あれ………ヴィルケ中佐…」
いつの間にか食堂の片隅で座っていた私をヴィルケ中佐が助けてくれたようです。
「もう…仕事は終わったんだから『ミーナ』で大丈夫よ?」
「ミーナ」
「…呼び捨てする気?」
「ごめんなさい、なんか頭がボーッとしちゃって…」
「うん、それはなるわね。だってスピリタスだもの、96度のお酒だもの」
「うぃ…」
「しょうがないわ、今夜は私の部屋に来なさい」
「すみません…」
そしていつの間にか中佐の部屋に着き、ベッドに寝かせられる。
「さてと、私も寝るわ」
と上着を脱ぎ、下着姿に。
………あれ、なんだろう…なんかこう…体がポカポカしてきた、と言うよりムラムラ?
えぇい!お酒飲んでるから無礼講も許されるであります!
ガバッ!!!
私が中佐の体に乗りかかるような体勢になり、
「キャッ!!どうしたの?!ヘルマさん!?」
「ごめんなさい…!すみません!ごめんなさい!すみません!ごめません!!!!」
***
「………あ」
そして現在に至る…でありますっ!!(ビシッ
…ビシッじゃないこの状況…どうすしたら良いのでしょうか?
「ねえヘルマさん」
「はははははい??!!その件につきましてはすみませんでしたっ!!もう軍法会議にかけても構いませんですので!!」
「ふふ…私も『ご無沙汰』だったからついつい燃えちゃった」
「そっ…そうでありますかぁ………寝ます!」
と布団をかぶる私。
すると、明らかに怒ったような声で
「ねえヘルマさん、私ね…今まで撃墜数が200機なの。でもね、撃墜されたのは初めてなのよ?」
「グーグースースー」
もう寝たふりです!!
身の危険をものすごく感じます!!
「お酒の勢いだからって…あれは許される事じゃありませんよ?」
「グースー………」
「『スペードのエース』って言われてる以上…私もやり返さなきゃねえ…っ!」
「ひっ…ひええええっ!!??あ、明日の業務に支障が!そっ、それに!!もう朝ですし…」
「なぁに?口答えする気?まだ坂本少佐が起きるまで2時間ちょっとあるわ。
それまで…『夜の』訓練でもしましょうか!それとも『夜の』飛行テストの方が良いかしら?」
その後、言わずもがな…撃墜されました、それに3回も…。
朝の中佐はミョ~にイキイキとしてたであります。
もちろん私はゲッソリ…。
朝食後、帰るまでの時間庭へ向かい夜明け頃に発情をしていたと思われる猫を発見。
「相手は…ちゃんと選んだ方が良いであります…」
しばらく、私は「ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ」という名前を聞くだけで背筋が凍るような
思いをした日々を過ごしたであります。
【おわれ】