ロマーニャ1945 ふたりのきそく・早い寝起き
ねぇ、トゥルーデ。
いまだ眠りの中にある聴覚へと聞きなれた声の呼びかけが響く。
まともに働いていない思考はそれを夢の中の出来事だと決め付けて睡眠を継続しようとする。
トゥルーデってば!
少し強い口調の呼びかけ。
大好きなその声。
例えどんな声色であってもその可憐さは失われず、天上の調べとして脳裏に届く。
この安らかな眠りの中でもっとその声を聞いていたいと思い、精神が現状の維持を決定する。
起きないならこうだもんね。
そんな声の後、微かな金属音が響いたと同時に息苦しさが私を襲う。
鼻に僅かな痛みが走り、口は何か柔らかくて暖かい物で塞がれている気がする。
明らかに呼吸が阻害されていた。
無意識下でも生存本能は機能している。
口内に侵入して私の舌を優しく愛撫する湿った感触にもう少し甘えたいという気持ちを、窒息する可能性への対処という生命維持行動が上回り、その対象の排除へと体が動く。
「わわっ!」
そんな声に少し遅れて何か大きな物が落ちるような鈍い音が響き、同時にシーツと毛布と私の首が横からの力に引っ張られる。
その声が悲鳴だと認識できている割には何故か思考は危機感を覚えない。
何だろう?と細い鎖から金属音を響かせながら身体を起こし、鈍い頭を持ち上げてその声の根源を探る。
と、そこにはエーリカがいた。
「あいたたた……酷いよトゥルーデ」
「ああ……そうか、エーリカか」
多分寝ている私に珍しく早く目を覚ましたエーリカが悪戯をしたのだろう。
そうであれば無意識の私によってそれが排除されるのは当たり前であるし、その結果ベッドから落ちる羽目に陥っているという事ならばそこには同情の余地は介在しない。
「ああそうかじゃないよ。突然突き飛ばすなんて酷いじゃない」
言いながらベッドへとよじ登ってくるエーリカは、なんと一糸纏わぬ姿だった。
「なっ、エーリカ!? 何て格好を……」
「トゥルーデだって一緒じゃん」
「え!?」
「あ、ちょっと違うよね。首輪してる分だけ私よりちゃんと服着てる感じかな」
「あ……」
指摘され、就寝する前にエーリカと……いや、この年下のご主人様と行っていた淫らな行為を思い出し、顔を赤くして一瞬前まで真っ直ぐにその瞳を睨みつけていた目線を思わず逸らす。
「まだ外は暗いんだ。二人の時間は終わってないよ。わかるでしょ、トゥルーデ。ふふ、赤くなってる。かーわいい」
いまだ私の首輪に繋がったまま小さな音を立てるその左手に握られた鎖の存在が、二人の関係を意識させて精神を追い込み、弄ぶ。
ご主人様はそんな私にお構い無しで上半身を起こした私の横に胡坐をかいて座った。
それは逃げる私の心に追い討ちをかける行為で、私が折角逸らした視線の先には天使/悪魔のはしたなくも開かれた女性器が晒される事になる。
もう一度逃げを打とうとした私の視線がそこから離れるよりもよりも早く、ご主人様はの声が回り込んで退路を塞ぐ。
「どこ見てるの? トゥルーデ」
「なっ、なにもッ……」
慌てて首ごと横を向くけれど、既に私の瞼には薄暗い照明の下で少し厚めの肌色に護られてなまめかしいぬめりを帯びた桃色の粘膜が焼きついてしまっていた。
耳まで赤くなっているのが自覚できる。
「ね、トゥルーデ。わたしに酷い事したのをもし悪いと思ってるんなら、ちょっとお話に付き合ってよ」
「え?」
「何だか気分よく目が覚めちゃったからお話したいの。ほら、体起こして、向かい合わせでさ」
あれよという間に同じ姿勢=胡坐をさせられる。
二人の動きに合わせて小さく響く鎖の音がわたしを縛り、ただひたすらご主人様に隷従する方向へと走らせる。
膝と膝が触れ合う距離で、大きく股を開いたまま向かい合う二人。
ご主人様は身体より後ろに両手をついて状態を反らし、私の全景を捉えるように視線を走らせている。
私の方はその姿勢が恥ずかしくて、足首に手をついて正面からの視線が股間へと届く事を遮断し、あまり意味がないとは思いつつ背を丸め、前かがみになって少しでも自分の身体が曝け出されるのを防ごうとする。
羞恥に縮こまる私の姿に満足したのか笑顔のご主人様が話をし始めた
「でね、トゥルーデ、ちょっと聞きたい事があるんだ」
そのあまりにも砕けた口調と様子に、なんとなく今の二人の関係を忘れそうになりながら次の言葉を待つ。
「トゥルーデは、おちんちんが欲しいと思ったこと、ある?」
「えっ!?」
無邪気な表情と口調とは裏腹に、ずいぶんと際どい事を聞かれて一瞬硬直してしまう。
「だーかーらー」
するとご主人様は身を乗り出し、余裕を湛えて獲物を追い詰める狩猟犬の表情で同じ言葉を強調しながら繰り返す」
「トゥルーデはー、お・ち・ん・ち・ん・が、欲・し・い・と思ったこと、あーる?」
「そっ、それは……」
そんな質問されても、困る。
それは……その、欲しいと思ったことはある。
こんな関係でいるくらいだから「もし自分が男だったらエーリカと本当に繋がる事ができたのに」とか夢想した事くらいは当然……と言ってしまっていいのかわからないけれども確実に有ることは有るのだ。
でも、私の羞恥心がそんな妄想の話を口にする事を躊躇わせる。
さっきから恥ずかしくてただでさえ目線を合わせられないのに、そんなことを言われては本当に、今以上にどうしていいかわからなくなってしまう。
「ね」
私の右手が取って引かれる。
引かれた先には潤いを帯びたご主人様の股間、女性器。
「!」
完全に視線も首も横に向けているけれど、手の動きと感触で二人の体勢を理解しゴクリと唾を飲み込んでしまう。
喉からは思ったよりも大きな音が響いた気がした。
その音で全てを見透かされてる。と、そんな確信めいた予感を胸に抱きながらも精一杯の精神力でこれ以上の自分の崩壊を防ぐ為に誤魔化そうと最大限の努力をする。
「そ、そんなこと……考えた事……無い」
はじめの「そ」の音が派手に裏返ってしまう。
これでは嘘をついてごまかしているのがバレバレじゃ無いかと思うと同時に「嘘を罰してもらえる」「淫らな妄想をした自分を責めてもらえる」といった被虐に溢れた思考が頭をもたげ始めた。
「ね、トゥルーデから嘘をついてるときの匂いがするよ」
「それは……んっ」
二の腕を得も言えぬ感触。
横目の狭い視界へと、私の腕にゆっくりと舌を這わす姿が映り込む。
「嘘をついてる味がする」
たかが腕を舐められているだけだというのに、ひどくそこが敏感な気がして唇から喘ぎが漏れてしまう。
身体のずれに合わせて指の背に、手の甲に触れるご主人様の粘膜の感触が興奮を加速させ、自分のそこも濡れそぼり、乳首が硬さを増していくのが自覚できる。
「ね、トゥルーデ、こっちみて……うん、やっぱり。今のトゥルーデの瞳、嘘をついてるときの色だよ」
言われるままに目線を合わせるとそう断言される。
そんな匂いも味も色も無いと理性はそう言い切れるのに、実際嘘をついてしまっている負い目のせいなのか何だか逆らえない。
そんな私の隙をつくように今度は右手が私の無防備な場所へと滑り込んできて、しなやかな中指で何の躊躇もなく包皮に覆われた突起に触れる。
「ひっ」
わたしの悲鳴なんてお構いなしでソコを柔らかく優しく指の腹で愛撫する行為を続けながら、目の前の天使/悪魔が念を押してきた。
「ここに、おちんちんがあったらいいなって考えた事、あるよね?」
潤んだ瞳の視界を正常化しようと無意識のまばたきを繰り返すと、目の前には私と同じ様に頬を染めて瞳に快感の炎を揺らめかせ、熱い吐息と共に語りかけるご主人様の顔があった。
コクン。
雰囲気に飲まれ自らの作り出す熱い吐息に導かれるようにして首を縦に振る。
でも、ご主人様は不満げな表情を作って首を横に振り、ダメ出し。
上目づかいにご主人様の指示を待つと「顔を上げて」と言われるので言うとおりにする。
「あのね……」
唇を半開きにして舌を突き出し、顔を近づけ、正面を向いた私の唇を舌先でなぞってきた。
緊張で身を固くし、ただされるがままに唇で舌先の柔らかくて硬い感触を受け止める。
再び、唾を飲み込む。
ゴクリと、大きな音。
動揺を伝える音。
「両手がふさがってたから、ね……。今舌で触ったソコでちゃんと教えてよ。お互い動物じゃないんだから、人間の言葉でちゃんと教えて」
瞳を見つめながら逡巡。
お互い声を出していないのに、鼓動と呼吸の作り出す雑音が大きすぎて静寂は訪れない。
どれくらいの時間が流れたのだろうか?
自分の中の羞恥心を、これからご主人様によってもたらされるであろう行為への期待感が上回るのを感じた。
越えてはいけない一線を越えてしまう背徳感が被虐的思考を後押しして、私にご主人様が望んでいるであろう言葉を作らせる。
「私は……男性器が欲しいと思ったことが……あります」
「んー、ちょっと違うなー」
やっとの事で作った言葉に再びダメ出しをされて戸惑う。
「そんなに事務的な言い方でいいの? トゥルーデが考えてた事ってそんなに乾いてそっけないコト? もうちょっとさ、わたしに伝わりやすいように心を込めて伝えて欲しいなー」
そう言われて何となく理解できてしまう。
要はもう少し俗語を使ってみろということなのだ。
恥ずかしさを堪えるあまり、事務的に表現した言葉を、もっといやらしく言い換えなければいけなかった。
ご主人様が喜んでくれそうな言葉を探すうちに本来自分のしたことのある妄想に行き着いて、覚悟を決める。
「おちんちんを生やして……ご主人様と繋がりたいって……ずっと、そう思ってた」
「ずっと思ってた? わたしの事を想っててくれた? ねぇ、だったら聞きたいな。トゥルーデがどんなエッチなこと考えてたのか、トゥルーデがそのおちんちんでどんな事をしたいのか」
無邪気な天使/悪魔の声が心のたがを弾き飛ばし、私の中から何かが崩れながら表へと溢れ出て行く。言葉という形で。
「エーリカを優しく抱いて、柔らかくて、熱くて、狭いココに……」
熱に浮かされたようにして言葉を紡ぎ、ご主人様のソコに触れていた手を180度返し、てのひらでその粘膜全体を優しく愛撫する。
「私のモノを、おちんちんを突き入れて。男性の様に、気持ちよくなるって、そう……そんな事を、考えていた……」
「うん、トゥルーデの中ではゲルトルート・バルクホルンがエーリカ・ハルトマンを犯してるんだね。トゥルーデが男の子だったら……ゲルハルト?」
「そ、そう。私がエーリカのソコに溺れる様にして、気持ちよくなって、腰を振って……気持ちよくなって……、二人で気持ちよくなるんだ。きっと……そう、私は、そんな事を考えていた……」
果たしてそうなんだろうか?
何となくそんな妄想はしていたとしても具体的にどうしたいとか細部にわたってまで考える事ができていたのだろうか?
それでも、今こうして止まらなくなっている私の中の劣情は過去に遡って淫らな私を捏造し、事細かにどれだけエーリカ・ハルトマンと繋がりたかったかという思いを創り出し、搾り出していく。
言葉にする度に、それが私の中で真実になっていく気がした。
これは妄想と言う曖昧だった思いを、言葉とう形にする事によって輪郭を際立たせ、自分の中ではっきりさせていくという作業……いや違う。崇高な儀式だ!
だから、いま語っている「私におちんちんがあったら」という稚拙な作文はもともと私の中にあったもので、それは別に捏造でもなんでもない、私のエーリカ・ハルトマンという少女に対する真摯な精神活動の一つなのだ。
右手の濡れた感触が心地よくて、時折押し込まれる陰核への刺激が気持ちよくて、そんな感覚にも後押しされて私の熱を帯びた独白は続く。
私の股間にあるそれがどういう大きさで、どんな感じ方をして、どの部分が一番よくて、どうされると弱いのか?
「ふうん、そんなに大きくて、クリトリスより敏感で、先っぽの方が一番良くて、下側に沿った部分が弱いんだ」
エーリカを抱くに当たって、どういう状況で、どんな服装で、どんな脱がし方をして、どんな触り方をして、どういう風に感じさせて、どんな風に初めてを奪うのか?
「こんな二人きりの部屋で、いつもの軍服を、破くように乱暴に脱がして、エッチなところにいっぱいキスマークをつけて、蕩けて何も分からなくなっちゃうくらい感じさせて、痛みよりも快感が震えさせて処女を奪ってくれるんだ」
本来行為が行われるべき場所である女性器に飽き足らず、口で、胸で、脇で、太腿で、髪で、尻で……その細い身体のあらゆる場所を性欲処理の為に利用する自分がどれだけ淫乱で浅ましいのか?
「そんな情熱的に言われたら、髪の毛の先まで気持よくなれちゃいそう……トゥルーデはそんなにおちんちんで私の事を犯して、メチャクチャにして、気持ちよくえっちな動物になりたいんだ」
想像できるだけ、考えられるだけの自分の中の言葉を並べて語りつくす。
おちんちんというものがある自分が、どれだけ今まで以上に目の前の少女に溺れる事が出来るかという事を。
「ふふ、凄く伝わった。トゥルーデってばそんなこと考えてたんだね。嬉しいよ……ちゅ」
顔を寄せ、頬に触れるだけのキス。
柔らかいくせに油断しているととんでもない事をしでかすその唇の感触が、わずかばかりでも自分に与えられたというだけで全身が多幸感に包まれてくらくらする。
「でもね……」
期待通りの、本当に期待していた通りの言葉が耳に触れる。
そうだ、私のご主人様はただ私が気持ちがよくなって、表層的に気分よくなり続けるような虫のいい話をそのまま放置することなんてありえない。
「もしも、おちんちんがあったからって、わたしはトゥルーデにいいように犯されたりなんかしないよ」
そう、ご主人様は私を堕としてくれる。
私の心を弄んで突き落とそうとする天使/悪魔の言葉が紡がれて、それだけで私の理性は蕩けて役立たずになり、身体のいやらしい場所が昂ぶりを押さえきれなくなってくる。
「ね、弱点が増えるとは全然考えなかった?」
「え……ひぎっ!!」
突如、一番敏感な場所に鋭い痛みが走る。
「トゥルーデわかってない。ねぇ、トゥルーデ、ココは誰の物?」
酷い痛みだった。
質問と共にその力が緩められて初めて自分が陰核を包皮ごと抓り上げられたのだという事を理解した。
ご主人様の言葉は理解できているのに、衝撃が大きすぎて目に涙を浮かべたまま何も出来ない私へと次々に追い討ちがかかる。
「ココは?」
しなやかな指が、私の肌を上へと滑り、へそへと到達する。
「ココは?」
左手が伸びてきて、私の左の乳房を掴む。
「ココは?」
へそを触っていた右手がそこから離れ、わき腹を滑ってお尻を撫でる。
「ココは?」
押し倒されながら首筋に舌を這わされる。
ココは? ココは? ココは?
繰り返しながら全身をまさぐられ、快感に流されて、あっという間に絶頂の手前まで押し上げられた所でその攻勢は中断される。
息も絶え絶えの状態で私の腹に馬乗りになっているご主人様を見上げる。
「ね、質問に答えてよ。トゥルーデは、いま、だれのもの?」
「私は……ご主人様の、もの……」
「うん、そうだね。だからわたしもね、トゥルーデにおちんちんがあったらいいなって、そう思ってたんだ。わかる?」
「…………」
うまく理解できなかった。
多分自分は今相当バカになってしまっているんだと思う。
心のどこかで思っていた事を形にして吐き出して、さらに自分の全てがご主人様の物だと宣言してしまって、自分の発言だけでこんなに気持ちよくなれるなんて事を教えられてしまって、凄く浮ついている気がする。
だから、バカになってしまった自分は、なんだかご主人様の言葉がうまく繋がらくて理解できない。
「わからない? それじゃ教えてあげる。トゥルーデにおちんちんがあったら、わたしのモノが増えるって事になるんだよ。素敵だと思わない? トゥルーデの身体に、わたしのモノが増えるんだよ」
理性がまともに働いていたのなら滅茶苦茶な話だと切って捨てる様な内容なのに、今の私にはそれがとても甘美な事に思えて、心の深いところにストンと落ちた。
きっと私に本当におちんちんがついていたら、それは私の妄想していた様なエーリカという少女に対する一方的な感情と感覚の投射ではなく、ご主人様によって制御され支配された素晴らしい双方向のやり取りになるだろう。
それは、傍から見たら私が一方的に苦痛を受けているように見えるかもしれないけれどそんな事は無くて、その時の私はただあまりに幸福すぎてどんな表情でいればいいかが分からなくなっているだけなのだ。
「それは……凄く、素敵だ」
「でしょ!」
「ああ……私は、私の少しでもたくさんの部分を、ご主人様のモノにして欲しい……」
「うん、トゥルーデ……イイ子」
ご主人様が私の頭を撫でる。
そうしてその手の触れられる場所の全てが自分の身体の一部でありながら自分のものではないと認識する事が、堕ちるという感覚を助長して性感を高めてくれる。
「続きをしようよ」
ご主人様が私の胸の上でその両側に膝を付いて立つ。
目の前、私の荒い息が届く場所にご主人様の濡れた割れ目があった。
腹の上にはひんやりとした感覚。
それはずっとぐっしょりでいたご主人様のその場所の残滓。
「トゥルーデの全ては私のものだから、今トゥルーデがしたいようにするのが、きっと私のしたい事だよ」
本能のまま、魔法を使う。
高揚感と共に犬の耳と尻尾が現れて、常任の何倍もの力を引き出せるようになる。
今のご主人様なら簡単に押し倒して滅茶苦茶にできるだけの大きな力を持つ私は、その羽根のように軽い天使/悪魔の肢体を持ち上げて私の顔へと座らせた。
「んんっ……トゥルーデ、私の事分かってくれてる……嬉しい。あはあっ……」
愛らしい外見のどこにこんなものを隠せていたんだろうと思えるほどの淫らな雰囲気を持ったソコに、舌を這わす。
妄想と言葉遊びをしているだけでは決して届かないこの場所には、真実の匂いと味と色があった。
むしゃぶりついて可愛い喘ぎ声を引き出していく。
私は今、言葉も忘れて犬の様に一心不乱に舌を動かし、ご主人様を悦ばせている。
私の意思はご主人様の意思だ。
だからどこまでも好きなことが出来る。
主導権がは私にあるようでいてその実ご主人様に丸投げしているというのに、全てを預けていられるからこそ得られる安心感と開放感が私の心を走らせる。
大きく身体をそらせたご主人様がたどたどしい後ろ手の動きで私の股間に手を伸ばして来て、敏感な粘膜に爪を立てた。
「ッッッ!」
「ああっ!」
痛いけれど、その強すぎる刺激そのものがご褒美としか思えない程には、私の頭はご主人様で一杯になっている。
それが絶好のタイミングだったから。
ご主人様を逝かせようと思った丁度その時に来たのだから。
二人で、絶頂を迎えられるから。
そう、ここでの二人の規則。
一緒に達して果てる事。
そんな約束を守らせてくれる行為だったから。
「トゥルー……デぇ、すごく……よかった……」
ご主人様が私の頭を撫でて、褒めてくれる。
「…………」
ご主人様の腰はいまだ私の顔の上で、ゆるゆるとグラインドする様に動いていた。
そうやって刺激を求めるご主人様の女性自身が私の口を塞いだままのせいで人間の言葉で答を返せない。
だから私は動物のやり方で感謝の気持ちを返す事にした。
再びご主人様を持ち上げ、今度は後ろを向かせてからもう一度顔の上に座ってもらう。
「んっ……」
再び舌を差し入れる。
「あっ、イったばかりで敏感なのに……やぁんっ、トゥルーデぇっ!」
黙々と、それでいて極力変化をもたせて舌を動かし続ける。
妄想したところで私におちんちんなど無いのだから、今あるもので最大の快楽を得ようと、与えようと努力して、気持ちよくなってご主人様に褒めてもらいたい。
唇と舌の届く限り、触れる限り、分かっている全てのご主人様の弱点へと触れて一杯気持ちよくする。
「あんっ、ほんとぉっ……トゥルーデ、いぬみたいっ……んっ、あああっ」
その声があっという間に切羽詰ったものに変わる。
それでもきっとご主人様はちゃんと二人の規則を守れるように、私にそれ相応の刺激を与えてくれるはずだ。
もしそうでなくてそのまま達してしまうようであれば、規則を守れなかった私にそれ相応の罰が与えられるはずだ。
どちらに転んでも、私はご主人様という天使/悪魔のてのひらの上で弄ばれ続けることが出来る。
こんなに嬉しいことはないから。
すごく幸せだから。
だからずっと気持ちよくして欲しい。
私のご主人様。