穴があったら入りたい


「トゥルーデ、ほらおいで」

あ、どうも。
第131先行実験隊「ハルプ」第三中隊所属、ヘルマ・レンナルツであります!
現在、私は…トゥルーデと言う名の犬と散歩中であります。
と言うのも、バルクホルン大尉が我がカールスラントを離れた直後に、
基地近くにて捨て犬のジャーマンポインターがおりましてですね…。
放っておけなくて、私が面倒を見る!と勢いだけで言ってしまい世話を見ているであります。

「あ、うんちしてる!」

***

私はトゥルーデと繋いでいた縄を川近くで離します。
犬も広々とした所で遊ばせるのが一番でありますね~…。

「はああ…」

原っぱに座り、ふとついこの間501部隊へ行った事を思い出します。
そういや、バルクホルン大尉…私はあなた様の目の前でどんなご無礼を…

『色良し張り良しバルクホルン~!!!!お先失礼しますっ!!!!』

あの一件以来、あまり501の事は考えたくないでありますね…。
そして、

『お酒の勢いだからって…あれは許される事じゃありませんよ?』

ミッ、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐っ!!あの方を思い出すと震えが…っ!!
…と言うかなんでフルネームなんでしょう?


「いやああああああ!!!!」
「っ!?」

突然、近くに居たご婦人の悲鳴がっ!?
よ~く見てみると…

「あ…」
「離れて、いやあ!離れなさいよ、この犬っ!!」

なんと、遠くで遊んでいたはずのトゥルーデがご婦人のダックスフントの上に乗りかかっていたであります!
まっ…まさか…発情期?!トゥルーデはメスじゃなかったのでありますか!?
…はっ、そんなこと思ってるヒマがあったら!

「すっ、すみませんっ!!!」
「子供が出来ちゃうじゃないの!!」
「申し訳ございませんっ!!!!」






ガチャッ...

「あら、ヘルマ曹長」
「シュナウファー大尉!お疲れ様ですっ!!」

お偉い方から油を絞られた後、基地の休憩室へ戻ると『カールスラント最高の夜間エース』こと
シュナウファー大尉が雑誌を片手に甘そうなミルクティ-を飲んでいたであります。

「あれ、これから哨戒ですか?」
「ええ。出撃前のティータイムを楽しんでるの」
「私も…ご一緒してもよろしいでありますか?」
「良いわよ~。クッキーも食べる?」
「わぁ!はい!!」


目の前に出されたクッキーを頬張る自分、いきなり大尉が聞いてきた質問は

「ねえ、怒られたんだって?」
「ブッ!…ゲホッゲホッ」
「ちょっと…むせるほど?」
「恥ずかしいでありますぅ…訓練で怒られるのは良いのですが、まさか生活面で怒られるとは…」
「トゥルーデは?」
「小屋で休んでます」
「そう。…ねえ、トゥルーデの意味って知ってる?」
「へ?」

そういや、あの犬…シュナウファー大尉が名付けたであります!

「あの…どうゆう意味でありますか?」
「あら、知らないの?」
「はい、お恥ずかしながら…」
「それはね…ゲルトルート・バルクホルン大尉のあだ名よ」
「ブッ!!!!」

本日2回目のミルクティー噴きであります!!!

「なっ、なんて事を!!??」
「え?」
「だってそれじゃあ…ずっとバルクホルン大尉をよっ…呼び捨てしてた事になりますよね?!」
「まあそうゆう事になるわ」
「うわあ…えっ、うわぁぁぁぁ…」
「…トゥルーデの事、好きなの?」
「そりゃ、ずっと世話してきましたから…」
「そうじゃなくて、バルクホルン大尉のこと」
「………そっ、それより何をずっと読んでるんです?」
「上手く話を交わしたわね。これ、旅雑誌」
「旅?どこか旅行でも?」
「えぇ。上層部から休暇を取れって怒られちゃって…せっかくだから、アフリカまで行ってオオカミとか見に行こうかなって計画中なの」
「へえ~…アフリカでアニマルウオッチングですかぁ~」
「良かったらヘルマ曹長も来る?」
「日にちさえ合えば!」
「オオカミってカッコ良いわよねえ、この食いっぷりとか!…そういや、ミーナ中佐も使い魔がオオカミだったような」

…ミーナ中佐…ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐!!??
あぁぁ、私の中での禁止ワードであります!

「あう~…」
「どうしたの?」
「いや…なんでも…」

ふと開いてるページの写真を見ると………
オオカミが無残にも骨と少しの肉だけになってしまったエルクを食い荒らしている写真…
言うなれば、オオカミがヴィルケ中佐でエルクが私…あぁぁぁぁ!!かわいそうなエルク!!

「…あ」
「………どうしたんですぅ?ぐすっ」
「何泣きそうになってるの?…そういや、ヘルマ曹長!私の代わりに501へ行ってきてくれないかしら?」
「はいです…ってへっ!!??」
「サーにゃん…じゃない、リトヴャク中尉に渡してほしいものがあるの」
「そんなの…メール便で良いじゃありませんかぁ!!」
「早く渡して欲しい物なの」
「したら、夜間哨戒の最中に」
「あらヘルマ曹長らしくないわね、哨戒中にプライベートな用事だなんて」
「………」
「明日、朝早くに出発してくれるかしら?サーにゃん…ゴホン、リトヴャク中尉を通じて私からあっちに連絡しとくわ」





そして、翌日の朝早くに基地を(嫌々ながら)出発し午後前には501基地に到着したであります…。

「カールスラント空軍第131先行実験隊『ハルプ』第三中隊所属、ヘルマ・レンナルツ曹長、只今到着しました!」
「あら、ヘルマさん。お久しぶり」
「ひいっ!?」

ヴィ、ヴィルケ中佐がぁ!!

「ヘルマさん、長旅御苦労様。疲れてるでしょう?」
「いえっ!!疲れてません、じゃあ私はこれで!!」
「何言ってるの、結構な魔力を消費したでしょう?」
「だっ、大丈夫です!」
「帰る途中に落ちたら困るわ、ウチで休んでいったらどう?」
「ご心配なくっ!!」
「あらあら…」

ヴィルケ中佐、目が笑ってない…!?

「疲れてるわよねえ、ねえ?疲れてるでしょう。いや、絶対に疲れてるでしょう」
「わかりました!わかりましたでありますから肩に力を入れないでくださいっ!痛いですっ!!」

この後、言わずもがな美味しく「いただかれちゃった」ヘルマ・レンナルツでした…。





1ヶ月後…

「シュナウファー大尉ぃ~(泣)」
「あら、どうしたの?」

やはり、相手の犬の妊娠が発覚。よしよし、トゥルーデもパパでありますね~!
…って呑気なこと言ってる場合じゃないであります!!

「とりあえず、ツタヤ行って『北の国から '92巣立ち』借りれば良いわ。妊娠をさせたらの責任をどう取れば良いのか勉強になるわよ?」
「………」
「あら、放心状態?」
「あわわわわ…」
「…あ、そうそう!またリトヴャク中尉に届けてほしいものがあるんだけど!」
「うっ…うわあああああ!!!!」

わざと基地内に聞こえるよう、そう叫びながら私はとにかく走ったであります…。
いっその事…アフリカにでも転属願いを出そうかな…?
そうすればヴィルケ中佐の事も、トゥルーデの事も………。

穴があったら…入りたいとはこの事でありますねえ~
…え、使い方違うでありますか?もう…そんなの、どうでも良いであります…。


【おわれ】



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