今日の504


「さて、お誕生日会の準備も整ったわけですが……」
「ああ」
「まあ」
「なんと言いますか」
「あれよね」
「はい……」
「えっとね、みすぼらしい」
「ティナ、あんまりはっきり言ってはダメ」
「じゃあなんて言うの?」
「粗野とか貧乏ったいとか……」
「それ変わってないです。ていうかむしろ酷くなったです」
「質実剛健とか」
「さすが竹井。そういうことにしておこうか」
「まあ言葉でどう言おうと現実は変わらないんだけどね」

『………………』

「うがー! なんでこんなに補給がままならないんだ――――っ!!!?」
「いつもは温厚な中島さんがキレた!」
「お、落ち着いてください中島さんっ!」
「これが落ち着いてられるか! 天姫、今すぐ扶桑に帰るぞ!」
「そんなっ……」
「どうする、ジェーン? 私たちもリベリオンに戻るか?」
「大将、しかし……」
「私はともかくお前にまでこんな目にあわせてられんからな」
「…………」
「そんなっ……本当にみんな帰っちゃうの?」
「ティナ、大丈夫。私はずっとここにいるから。だから泣かないで」
「ルチアナ……」
「だって私たちには帰る国はないから」
「それに今日はせっかくの隊長の誕生日なのにねー」

「「「「………………」」」」

「すまない。さっきは言いすぎた」
「私もすまなかった。国に帰ると言ったのも取り消させてくれ」
「ありがとうございます。中島さん、ジェンタイル大尉」

「そもそもどうして私たち、こうも困窮しているんでしょう?」
「そういえば、501はどうしてるですか」
「あ、それだったら問題ないみたいよ」
「えっ!? ホント!? なんでなんで!?」
「ほら、501にフランチェスカ・ルッキーニさんっているでしょう」
「ああ。あの最年少少尉の人ですか」
「なんて彼女がロマーニャの王女様と仲がいいらしいの。この間はピアノが送られてきたとか」
「えっ!? ピアノって食べれるの!?」
「ティナ、落ち着いて。ほら口ふいて」

「じゃあねー、ボクたちもその王女様と仲良しになればいいんじゃないの?」
「あら。それはいい考えね、マルチナさん」
「それじゃあボク、さっそく行ってくるね」
「あっ。ティナ、待って!」
「ん? ルチアナ、なぁに?」
「いい? あなたは行かなくていいから。他の人が行くからとにかくダメなの」
「うん、よくわかんないけどわかった――それで誰が行くの?」
「あ、うちのも貸さないからな」
「ちょっ、大将。あまり人前でそういうことはですね」
「わ、私もムリです」
「天姫が行かないなら私もいいかな」
「じゃあアンジーはどうだ?」
「入院中です」
「そうだったな。そういえばパティはどうした」
「そのお見舞いにいきましたです」
「またか。隊長は?」
「今、誕生日会の準備が終わるのを待ってるところです」
「そっちじゃなくて」
「私か? 私も行かんぞ」
「大将! 大将じゃなくて隊長です!」
「そうかすまん」
「フェデリカ隊長だったら例の彼女のとこです」
「またなの?」
「ええい、ままならん!」

「あの、ちょっといいですか」
「なにかしら、諏訪さん」
「そもそもどうやってその王女様と仲良くなるんでしょう?」
「それは……ローマの町を歩いてたらたまたまお忍びの王女様に出くわしてそれで――」
「おいおい。そんな映画かアニメみたいなことあるわけないだろ」
「ですよねー」

「とにかく、今はじっと補給を待つしかないわね。軍人には必要なことなのよ」
「ゔぇー、また素パスタなのー?」
「大根メシか! また大根メシなのか!」
「またあの木の根を食えと?」
「みんな落ち着いて! あとジェーンさん。あれはゴボウと言って扶桑ではちゃんとした食材なのよ」
「ああ……思えばあの日から、訓練とリハビリの毎日……いいことなんてなにも……」

「どうしたの、みんな? そんな辛気くさい顔ならべて」
「あっ、隊長。これは……」
「今日は私の誕生日でしょう。みんなでお祝いしてくれるんじゃなかったの」
「それがその……」
「えっとですね……」
「うわーん! ごめ゙ん゙な゙ざい゙ー!」
「す、諏訪ちゃん! どうして泣き出すの?」
「せっかくの中尉の誕生日なのに、ろくにお祝いもできなくって、それで」
「天姫ばかりが悪いんじゃない。私だって」
「ボクも。ごめんね、隊長」
「本当にごめんなさい」
「そうだ。来年。来年こそこれを何倍にも」
「私、その時はケーキを焼きますです! すっごく豪華なやつです!」
「みんな……ううん、いいの。ありがとう」
「隊長……」
「部隊がこんな逼迫した状況でも、みんながこうして私の誕生日を祝おうとしてくれている――
 私にはそれが最高のプレゼントよ。
 たとえ今はひもじくても。どんなにひもじくても」
「今、ひもじいって2回言いましたです」
「お腹がすいたわ。パーティーをはじめましょうよ」
「ええ、そうね――いい、みんな。ツナはスプーン2杯、ミルクは1口、ビスケットは1枚よ」
「「「「「「「はーい」」」」」」」

『フェルナンディア・マルヴェッツィ中尉、お誕生日おめでとう!!!!』


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