花畑


「アメリー、ちょっといいかしら」
「は、はい! なんですか?」
昼食を終え、自分の部屋に戻ろうとしたところをペリーヌさんに呼び止められました。
なんだか気難しそうな表情で私のほうを見つめています。
私、何かペリーヌさんの機嫌を損ねるようなことしちゃったかな?
「その……あなた、今日何か予定はあるかしら?」
「へ? な、何もないですけど」
「そう、良かった。ちょっとこれから付き合ってくださらない? あなたに見せたいものがあるの」
「見せたいもの……ですか?」
「ええ。ちょっと歩くことになりますけど」
ペリーヌさんのその言葉を聞いて私は、ほっと胸を撫で下ろす。
良かった、少なくともペリーヌさんは不機嫌ではないみたい。
それどころか、私を外出に誘ってくれた。
もちろん、大好きなペリーヌさんからのお誘いを断る理由などどこにもない。
「はい、どこへでもお供します! ところでペリーヌさん、なんだか顔が赤いですけど、大丈夫ですか?」
「……な、なんでもありませんわ! とにかく、行きますわよ」
「は、はいっ!」
こうしてその日の午後、私はペリーヌさんと一緒に出かけることになりました。

「さ、着きましたわよ」
「わぁ、すごく綺麗……」
基地から歩いて十数分ほど、辿り着いたその場所には、一面のお花畑が広がっていました。
私がお花畑の美しさに目を奪われていると、ペリーヌさんが後ろからそっと抱きついてきました。
「ふぇ!? ペ、ペリーヌさん!?」
ペリーヌさんにいきなり抱きしめられて、私の胸の鼓動は激しく脈を打ち始めました。
こ、困りますペリーヌさん。人の心臓が一生のうちに鼓動する回数って決まってるっていうじゃないですか。
「アメリー、誕生日おめでとう」
胸の鼓動が鳴りやまない私に、耳元でそう囁くペリーヌさん。
「え? ペリーヌさん、私の誕生日、覚えててくれたんですか?」
「私が僚機の誕生日を忘れるわけないでしょう? 特に、あなたは私にとって大切な存在なんだから」
『大切な存在』――ペリーヌさんが私のことをそう言ってくれたのが嬉しくて、気が付けば私は涙を流していた。
「ペリーヌさん、あ、ありがとうございますっ……ぐすっ」
「もう、すぐ泣かないの。ほら、これで涙を拭きなさい。せっかくの可愛い顔が台無しですわよ?」
ペリーヌさんはそう言って、私にハンカチを差し出してくれました。
「は、はいっ、ありがとうございます」
私はそのハンカチを受け取って、涙を拭きとりました。

「ねぇアメリー。ちょっと目を瞑っててくださらない?」
涙を拭きとり終わった私に、ペリーヌさんがそう言いました。
「え? は、はい……」
私はペリーヌさんの言う通りに目を瞑りました。
その直後、私の唇に柔らかいものが触れました。
……こ、これってもしかしてペリーヌさんの唇!?
「ペ、ペリーヌさん!?」
落ち着いていた私の胸の鼓動が、再び激しく脈を打ち始めました。
ペリーヌさんが私にキ、キスを……!
「ふふっ、アメリーの唇ってすごく柔らかいのね」
そう言って悪戯っぽく笑うペリーヌさん。
「もう、ペリーヌさんばっかりずるいです……んっ」
今度は私がペリーヌさんの唇に口付けを落としました。
ふふっ、顔を赤らめてるペリーヌさん、すごく可愛いです。
「ペリーヌさん、顔真っ赤ですよ」
「……あなただって」
「ふふっ、おんなじですね、私たち」
「ええ、おんなじね、私たち」
お互いに顔を真っ赤にした私たちは、なんだか可笑しくなってしばらくの間笑いあいました。

「はい、これでいいかしら?」
「わぁ、ありがとうございます」
数分後、ペリーヌさんがお花畑の花で作った花飾りを私の首にかけてくれました。
この花飾り、ペリーヌさんのように暖かいです。
「ペリーヌさん、今日は本当にありがとうございました。私、大好きなペリーヌさんに誕生日を祝ってもらって、
とても嬉しかったです……ぐすっ」
「もう、何度も泣かないの。誕生日なら来年も再来年もその先もずっと祝ってあげるから」
「え? ペリーヌさん、私とずっと一緒にいてくれるんですか?」
「当然でしょう? その代わり、あなたも私の誕生日をこれから先、ずっと祝ってくれる?」
「はい、もちろんです! ペリーヌさん、大好きです」
「私も大好きよ、アメリー。じゃ、帰りましょう」
「はいっ!」
私は笑顔でそう応え、ペリーヌさんと一緒に、夕日が染めるお花畑を後にしました。

~Fin~


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