ヘルマの失態


突然ですが、カールスラントでは「黒猫が座った樽のワインが最も出来が良い」という言い伝えがあります。
私は…もちろん!お酒はまだ飲めない年齢であります!士官学校でも、決して飲める年齢になっても溺れるな!と念入りに言われたであります。
今回のお話は、その「お酒」にまつわる話であります………って!?何でストーリーテラー気取りをしてるでありますか??!!

***

チュンチュン...

さわやかな朝がやってきたであります!…が、私が目を覚ますと何故か頭がズキズキしていたであります。

「んっ…」

ものすご~く頭が痛いであります…なんかこう…ガンガンと…するような?

「…あれっ」

な~んか…何か違和感を感じる私!?
落ち着けヘルマ・レンナルツ!!こう見えても若干13歳ながら、空軍でも中高位のベテランエースが顔を揃える第131先行実験隊に異例の抜擢を受けたんであります!!!
…あれ、服は?一応、下着類は着けてるけれど…。
でっ、でも…デジャヴュが………。

恐る恐る、隣にある物体に手をかけたであります…

「あ、あの~ぅ…」
「んんっ………今、何時?」

はあああああああ…っ...
また…またやってしまったでありますか??!!
ヴィルケ中佐だけでなく、今度はシュナウファー大尉と!?
…落ち着けヘルマ・レンナルツ、こう見えても若干13歳ながら、空軍でも(ry

シュナウファー大尉が寝返りを打つと…擬音にすると「ぷる~ん」と胸を揺らしながらこっちを向いてきたであります。

「………(ゴクリ」
「…どこ見てるの?」
「いっ、いえ私はそんなっ!!」
「ヘルマって…ヴィルケ中佐と一夜を共にしたんでしょ?」
「ななななっ!!??」
「どうにかならないのかなあ…」
「へっ???」
「寝言。寝言よ!何で食堂のメニューを全て暗記してるの、そしてそれを寝てる時に言うの?!」
「あの…まったく記憶にございません;;;」
「極めつけは『代打、ガルべス』…なんで野球選手よ?!はあ…あとそれに」
「そもそも、何故に私はここに…?」

すると大尉は無言でテーブルを指差したであります…

「そっからは本題よ」
「あ~…そうでありましたね…」

テーブルの上には開けたワインの瓶3本と、食べかけのチーズとソーセージ。
あ、言っておくでありますがもちろん私は未成年なので断ったでありますよ?!
でも、此処は軍。必要以上に上官命令を断ると私の昇進が…。

「…そもそもヴィルケ中佐と肉体関係がある時点で昇進はないわね」
「なぜ心の声を?!」

一応、私もジェットストライカーのお陰ではありますが大型ネウロイの撃墜数が多い事から新世代のエース候補と期待されてるですよ?

「でも、ヴィルケ中佐と肉体関係…」
「だからなぜ心の声が!?」

同じ過ちを2回を犯すだなんて…はああああ…

「ヘルマ…大変だったんだからね」
「へっ?!何がですか??!!」
「ベッドの上で暴れて暴れて…」
「………」
「私、今夜の哨戒行けるかなあ…」
「あの…全く記憶にないんで、話して頂けますか…?」

***

昨日の話。

「一杯…どう?」

大尉は自慢げにワインボトルとグラスを私に見せてきたであります

「わっ、私はまだ未成年であります!!カールスラント軍人は規律に則るべきだと思います!」
「そんな堅い事言わないでさ…私のお酒に付き合ってよ?」
「あのですね、1に規律2に規律、3に規律で…」
「あ、この前言ってたマルセイユ大尉の話…ちょっとしたコネが出来たんだけど」
「本当でありますか??!!」
「もしかしたら会えるかもよ~」
「ぜひお願いします!!!」
「じゃっ」

…ボトルを私に渡す大尉。
これって………

「あ、強要じゃないわよ?あくまでも自分の意思で注いで、自分の意思で飲むんだもんね?」
「…これってパワハラ!?」
「こんなやらしい事言いたかないけど…私って、この軍で結構重要なポジションに就いてるのわかるわよねえ?撃墜数ベースによる四強って言われてるほどの」
「これって職権乱用じゃないですかぁ!!」
「別に嫌だったら飲まなくても良いわよ?でも…明日から肩身の狭い思いをすると思うわよ~」
「ううっ…ズルいであります…」

この方には逆らえない!と思い、グラスにワインを注ぐ自分…。
それにしてもこのワイン、綺麗であります…!

「綺麗な白ワイン…」
「でしょ?撃墜数がどうとかで、お偉いさんからもらったの。結構高いらしいわよ」

ここはポジティブシンキン!!
いつもは孤独で戦ってる大尉、でも私を巻き込んで飲むだなんて何かあるハズ!!

カチャン...

「乾杯」
「乾杯…であります」

ワインをチビチビと喉に通すであります…

「…ヴェーダディコレー」
「何、そのどっかで聞いたことのあるようなフレーズ;;」
「にっ、苦いであります~!!ゴホッ」
「あらら…そんな?このワイン…甘くて有名なんだけど」
「やっぱり私にワインは…」
「じゃあこうしたらどう?」

…と何処からかオレンジジュースの入った瓶を持ってくる大尉。

「ワインをね…オレンジジュースで割るの」

あっと言う間に白ワインの色は消え、オレンジ一色に。

「さ、飲んでみて」

ゴクッゴクッ...

「…あ、これは!!」

美味しい!美味しいであります、さっきと違って飲みやすいでありますね!
色はオレンジ一色でありますが、白ブドウとオレンジの香りが…!

「美味しい…であります」
「でしょう?これはサングリアって言うの」
「サンガリア?あのラムネとか作ってる…」
「サングリア!ヒスパニアの方の飲み方なの」






飲みやすさが手伝い、いつの間にか私は何杯も…

「大尉!もう一杯!!」
「ヘルマ…飲み過ぎよ、それにあなた午前中に実験があるんでしょう?」
「へへへ~…そんなの知りませ~んであります!」
「もうやめなさいって」
「大尉の好きな体位はなんですかぁ~?ふへへへ」
「ダメだ、完全に酔ってる…;;もう良い加減、自分の部屋に帰りなさい!」
「…大尉、そこに正座!」
「………はぁ??!!」
「私はですねえ…ひっく、カールスラントのクマさんになるであります!」
「カールスラントのクマさん?」
「502部隊のアレクサンドラ大尉ですぅ!そんな事も知らないのでありますか、このおっぱい眼鏡!」
「おっ、おっぱい眼鏡…?」
「私だって…エースになりたいであります…ひっく」
「はあ?」
「いつか…いつかハルトマン中尉の記録を破って、いつかバルクホルン大尉と肩を並べる…いや、認められるエースになりたいんです…」
「はあ…」
「そのためには…撃墜数を稼いで、そしてどっかの中隊の隊長になってですねえ………」
「…で?」
「………すーすー」
「寝ちゃった…」

そのまま寝てしまったそうです、私;;
運んで行くわけにもいかないから、大尉がそのままご自分のベッドに寝かせてくれたそうなのですが…

「………気持ち悪い」
「わっ!ビックリしたぁ!…え、なんだって??」
「気持ち悪い…であります…」
「ちょっと…!!」

一応、本能かとっさにベッドから降りたらしい私。
急いで部屋の扉を開け、廊下まで行って………

「おぇぇぇぇぇぇ…」
「…やっちゃったか」
「大尉ぃ…おえっ…助けてくださいぃ…」

***

チュンチュン...

「…って事があったのよ」
「もう廊下は…悲惨だったわね…匂いとか。思わずもらいそうになったし…」
「すみません…と言う事は清掃等は…?」
「もちろん私がやったわよ!!!!」
「ごっ、ごめんなさいであります…」
「まあ廊下は大丈夫だったんだけど、服が…ね?」
「服に全てを…」
「………」
「服に全てを…?」
「察しなさいよ!!」
「はいぃ!!」

かろうじて「朝チュン」では無かったものの、それよりもタチの悪い………はああ。
軍服をクリーニングに出す必要上、飲酒は大尉の手で揉み消してもらって一応、食あたりで気分が悪くなった…という表向きの理由にしてもらったであります。
この日の実験の前にウルスラ・ハルトマン中尉からラッパのマークのお薬をもらったりしたであります…。もっと言えば、私の体調を考慮してこの日の実験は中止。

この日。自室にて使い魔の黒猫を抱きながら反省をする一日を送っていたであります…。

「色んな人に迷惑かけちゃったでありますねえ…」

どうやってお詫びするでありますか…?
とりあえず今度休暇を取って、百貨店へ行って迷惑をかけた関係各所へ商品券を買いに求めるでありますか。
大尉には新しいワインを………あれっ?

「大尉って15歳じゃあ…?」

ちなみにカールスラントは16歳以上から飲酒OK。
大尉は…ギリギリアウトでありますねっ;;



お酒は楽しく適量を、そして飲酒可能な年齢になってから!
ヘルマ・レンナルツからのお願いでであります!

【つづく】



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