いらん子中隊の忘年会
12月20日。
カウハバ基地近くのスナック「ふきでもの」にて、
スオムス義勇独立飛行中隊こと「スオムスいらん子中隊」の忘年会が催されたのである…。
「えと皆さん…2時間まで飲み放題だそうです!」
「何ここ…汚い店ねえ」
「中尉ぃ~私と飲みましょう?」
「こんな小娘より成熟した私と一緒に?」
「パスタ准尉はあっち行っててください!シッシッ!」
「マンマミーア!あなた私より位は下でしょ?!」
「そんなのお酒の席じゃ関係ないんですぅ~!」
「だぁっ!!もう!!!!うるさいわよアンタ達っ!!!」
「あ、あの~ぅ…」
必死に頑張って仕切るエルマ…だが、誰も聞いていない様子である。
「飲み物だけでも注文を…」
「飲み物?そうねえ…」
「スコッチを頼む」
「バドワイザーはあるかー?」
「じゃあ私は扶桑酒かな」
「じゃあ私も!」
「私もっ!!!」
「…オレンジジュース」
「じゃあ私もオレンジジュースで…」
一通り注文をし終えた一同。
だが………
「Oh!何言ってるねー、今日は一年のしめくくりねー!!いっぱいお酒飲むねー!!」
「え…でも私は…」
「…じゃあオレンジジュースとナポリタン大盛」
「ナポリタンはお酒じゃ…;;;」
「そうねえ…ウルスラはわかるとして、エルマ!あなた何か飲みなさい!!」
「えぇっ?!」
「隊長命令…だわよ?」
「はいぃ…」
急いでお酒のメニューを見始めるエルマ。
すると横に居たビューリングは、
「なんだ、飲めないのか?」
「お恥ずかしながら…」
「だったらカシスオレンジだな」
「美味しいんですか?」
「まあ…始めはこうゆう、甘いのから入ると良いぞ」
「ありがとうございます!じゃあ…カシスオレンジ!」
***
【1時間後】
智子の扶桑酒を注いでるキャサリン
「ストップ!ストップ、ストップひばりくん!…ケッケッケ」
「トモコー、明らかに飲み過ぎねー」
「さっきから親父ギャグ連発なんですよ…」
「ねえ中尉、世界四大文明と言ったら?」
「えと…エジプト文明とメソポタミア文明と黄河文明…加納典明!ケッケッケ」
「もうパスタ准尉!トモコ中尉で遊ばないでください!」
「ケッケッケ…まだ飲み足りないわ~っ!!」
そんな騒いでる集団とは打って変わり、店の角のソファーではエルマ、キャサリン、ウルスラの3人が静かに飲んでいた。
「大丈夫か?」
「はい…お酒って…美味しいですね」
「そうか…」
「…飲み過ぎには注意」
「大丈夫です、智子中尉みたいには…ならないと思います…あ、ジントニックを!」
***
【さらに1時間後】
「…ジントニック…トニック無しで」
「エッ、エルマ…どうしたねー?;;」
エルマの目が完全に据わっていた...
「あん?」
「ジントニックのトニック無しじゃただのジンだな」
とタバコを吹かし始めるビューリング。
「そこぉ!何か言いましたぁ?」
「だからジントニックのトニック無しじゃ」
「うるさい!もっと短く言ってください!!!!」
「え…?」
「ったくぅ…この隊は全く、規律がなってないんですよぉ規律がぁ」
いつの間にかエルマは度数の強い酒の瓶を持ち、空のコップに注いでいる...
「ちょっとエルマ!飲みすぎねー;;」
「うっさい、黙ってろおっぱいバカ」
「お…おっぱいバカ…?」
「そこのパッツン小娘」
「…へ???」
エルマに指ざしで指名されるハルカ
「ちょっとこっち来い」
「えと…エルマ中尉…??」
「良いから隣に座れってんだぁ!!!」
「はいぃ!!」
すぐさまハルカはエルマの座っているソファーへ移動し、隣に移動する。
「…おい、そこのパスタも!」
「はい…」
エルマが怖いのか、珍しく若干怯えているジュゼッピーナも呼ばれる…。
「あ、あの…智子中尉は呼ばなくて大丈夫なんですか???」
「あぁん?」
智子は既にソファーにて寝ていた
「よ~しよしよし…」
「ひぃぃぃぃ!!!」
「こここ今度晩御飯のおかず…一品差し上げますからお許しをぉ!!」
「ねえぱっつん小娘とパスタ~♪」
「は、はいぃぃぃ?」
恐る恐るハルカがエルマの方を向くと、満面の笑みが広がる…
そしていつでもキスが出来るじゃないか?と言う距離で…
ゴンッ☆
「キャアアアアアア!!!!」
なんとハルカはエルマによって頭突きされたのであった…
そしてハルカは気絶。
「ちょっと…中尉、どうしたんです?」
「あれぇ~?パッツン小娘、額から血が出てるぅ~あはははは」
「ヤバい…逃げるねー!」
キャサリンは未だ本を読んでいるウルスラを無理やり引っ張ろうとすると…
「あはは~!そうはさせるもんですかぁ~!!!!」
***
チュンチュン...
「あれ…っ?私ってば…」
エルマが朝起きると、医務室のベッドの上に居たのだ…。
「…気がついたか」
「ビューリング大尉…おはようございます」
「あぁ、おはよう」
「あの…昨日、私…?」
シャーッ!!
すると突然、ベッドを囲っていたカーテンが開かれる。
「エルマ・レイヴォネン中尉!あなたは…あなたはなんて事を…っ!!!!」
「ハッキネン大尉!!??」
「貴官に10日間の自室禁固、そして7日間の社会貢献活動を命じます!」
「…へ???」
「本当は営倉入りにしようとも思ったんですが…」
「え…?えと…よく話が見えないのですがぁ…;;;」
するとビューリングは無言で立ちあがり、どこからかテレビを持って来て電源を付けた。
「………」
映像の内容は、密かにビューリングが昨夜の忘年会を16mmカメラで撮影したもので、それを編集したものだ。
内容としてハルカに頭突きを決めた後の様子が生々しく映し出されていたのだ
例えば、必死に逃げようとするキャサリンとウルスラに向かって客がキープしてあったボトルの数々を投げつける。
必死にそれを止めようとするジュゼッピーナに対し、チョークスリーパーホールドを決める。
そして寝てるのを良いことに、智子を全裸にしそしてそのまま体上につまみとして出されたチーズやサラミを盛りつける…いわゆる「女体盛り」をしたのだ…。
動画は『劇終』という文字と、銅鑼の音と共に終了した。
「どうだ?」
「わあ…ジャッキー・チェンの映画のエンディングみたいですねぇ、NGシーンが流れるみたいで」
「そんな冗談言ってられるのか?」
「………そそそそそんなわけないじゃないですかぁ!!!!どうしましょぉ~ビューリング大尉ぃ~!!私、とんでもない事をみなさんにぃ~(泣)」
「そうだな…こればかりは、謝るしか」
「そうですよねぇ、そうですよねぇ…(泣)」
そして必死に謝ったが、キャサリン以外(彼女は「しょうがないねー、エルマもストレスが相当溜まってたのねー」と許してくれたが)は口を聞いてくれず、
もっと言えば智子の訓練においてエルマだけ厳しくなったり、ハルカとジュゼッピーナは全然気にしてませんよと言いつつ地味な嫌がらせを数日間受けたエルマであった…。
エルマが虐げられてるのを見て、ウルスラはこう呟いた…。
「酒は飲んでも…飲まれるな…」
みなさんもほどほどに。
【おわれ】