ジョゼの減量計画
「まだおかわりありますよー?」
食堂に下原の声が響く。
この日、ガリア方面から援助物資が届き、その中に名物の菓子である「シュ・ア・ラ・クレム」ことシュークリームも冷凍されて届いたのであった。
「あ、はいはいはい!!!!私、頂きますっ!!!!」
「ジョゼ…お前よく食うなあ…」
と緑茶が入った湯呑を片手に呆れる菅野。
「腹壊すなよ?」
雑誌を読みながら声をかけるニッカ。
「大丈夫、お腹痛くなったら自分がジョゼ君にイチジク浣腸するからねっ!」
と満面の笑みで言うクルピンスキー。
「大丈夫!大丈夫ですからっ!!!!…下原さん、お願いします」
「え…?でも3個目じゃあ…?」
「私、こう見えても『やせの大食い』なんですっ」
「ギャル曽根みたいだね、ジョゼ君」
「まさかぁ~!」
冗談のつもりで腹太鼓を叩くジョゼ。
ポンッ!
…良い音が鳴ったが、次の瞬間!
バチーンッ!!
「あれっ…?」
バシッ!!!
「あ痛っ!!!!」
なんと、事もあろうかサーシャのおでこに自分の着ていた服のボタンが勢い良くヒットしたのである。
しばらく無言で悶絶するサーシャ。その様子を笑いながらクルピンスキーは、
「うわあ、ホームビデオ大賞が受賞出来るレベルだよジョゼ君;;よりによっておでこにだなんて…あはは」
「ごめんなさいっ、サーシャさん;;;」
「…っ!!ジョゼさんそこに正座!!」
「はいぃぃぃ??!!」
食堂のフローリングに正座するジョゼ。
いつの間にか菅野とニッカは居なくなっており、その場にはサーシャとクルピンスキーと正座しているジョゼだけである。
「なんですか?!この肉は!」
ジョゼのわき腹の、少し出た肉をつまむサーシャ。
「痛たたたたた!!!!」
「ちょっと熊さん、暴力的だよ?平和に;;ね?」
「ごめんなさいっ!;;」
「それに熊さん、おでこが赤いし!」
「誰のせいで赤くなったのかしらぁ?」
「ごめんなさ~い;;」
「ったく…前から言おうと思ってたけど、ジョゼさんは食生活が乱れ過ぎです!」
「ごもっともです…」
「何を食べたか言ってみなさい!」
「えっと…今日のですか?」
「えぇ、今日のよ!」
「まず7時30分に朝ご飯で…食パン2枚ロールパン3個、目玉焼き2個にサラダ1ボール…そしてヨーグルトを食べました。あ、下原さんの分も戴きました」
「…何!?目玉焼き2個だなんて…2つも食べたらあなたコレステロールが!!」
「はいはい、熊さんは検診センターのおばちゃんじゃないでしょー。さっ、続けて」
「…洗濯物干してたりしててちょっと小腹が空いたんで、冷蔵庫にあったチーズを食べました」
「え?!ジョゼさん、2時間30分の間隔でまた食事?!」
「はい。6Pチーズのうち4P食べました」
「ほとんど食べてるじゃないの!!!!」
ジタバタ暴れるサーシャを後ろから抑え込むクルピンスキー。
「さっ続けて」
「12時過ぎにお昼ごはんで…私が担当しました。そして作った鮭のクリームパスタを2人前」
「どうりで私の分が少なかったワケね!!」
「うわあ、熊さん人間的に小さいよ;;;」
「お昼の3時に下原さんとおやつで、扶桑から送られてきたと言う塩大福3つと芋羊羹5切れ頂きました。7時に夜ごはんでふかし芋4個に北欧風ミートボールを2皿、ポタージュスープを3杯おかわりしました」
「………」
「…あれ、熊さんもうコメントしないの?」
「だって…どう言ったら良いのやら…」
「ジョゼ君、それが全てかい?」
「…あ!」
「まだ何かあるんですか??!!」
「…明け方に『キャベツ太郎』食べました」
今度は脱衣所へ移動する3人。
「ふえ~ん!なんで脱がすんですかぁ?!」
何故か下着姿のジョゼ。
「熊さん…いつもだったら女性のこうゆう恰好見ると興奮するんだけど、今日は興奮しないなあ。どうしてかな?」
「決まってます!ジョゼさんがデバラ焼き肉のたれだからです!!!!」
「………」
「………」
「ジョゼさんがデバラ焼き肉のたれだからです!」
「熊さん、二回も言わなくて良いよ…。スベってるのわからないのかい?」
「…っ!!もう早く体重計に乗っちゃいなさい!!!!」
「はいぃ…」
ゆっくりと体重計に乗るジョゼ。
「…伯爵、ジョゼさんは何キロ?」
「うーん…千葉ロッテの岡田選手の背番号だね」
***
翌朝。
「あれ?どうしたジョゼ?」
「おはようございます」
「朝練に参加するの?」
「はい!今日から私もお願いします!!」
菅野とニッカがいつもしている朝練に参加する事となったジョゼ。
サーシャによるジョゼのダイエット計画として、
①朝練による運動
②食事制限
③暇な時間は筋トレ
と言う運びになった。
朝練後、
朝食なのだが…。
「ジョゼさんは…食べないんですか?」
「大丈夫です!下原さん、このフルーツ盛り合わ……じゃない、リンゴだけください!」
ジョゼの朝食はリンゴ1個のみである。
「ロッキーみたいですね…」
サーシャによるジョゼの一日の食事メニューはこうだ。
朝:リンゴ1個
昼:ミネラルウォーター
晩:リンゴ1個
のメニューになった。
***
こうしてメニューが続いて早3日…そして事件は朝練時に起こったのだ。
「おいジョゼ、大丈夫か?」
「えぇ、大丈…夫ですからっ」
「おいおい明らかに大丈夫じゃないだろ、様子が変だぞ…?;;」
「寝て…ないからかもしれませんね………っ!!」
バタッ!!
「おいジョゼ!しっかりしろ!」
「医務室に運ぶぞ!!!!」
「………んっ」
「おっ、起きたか」
「たっ、隊長??!!」
ジョゼが目覚めると病室のベッドの上に寝かされており、
ラルが横に居た。
「まあまあ横になってろ」
「すみません…」
「栄養失調だそうだ。話を聞くと、お前あんだけ食うのに急にやめたそうだな?」
「はい、そのぉ…」
「さっき泣きながらサーシャが私に謝ってきてな…謝るのはキミにだろうって」
「でもお前もお前だ。明らかにおかしいだろ、リンゴとミネラルウォーターって」
「確かに…疑問には思ってましたが、サーシャさんが怖かったですし…」
「大丈夫、キツーく叱っておいた。だけどもう終わり、サーシャを責めたりするな」
「はい、わかりました」
「あと1時間もすれば起きても良いそうだ。それまでまだ寝てなさい」
「了解です…」
そして1時間後。
起きたジョゼがまず向かったのは良い匂いがする食堂であった
「んっ…良い匂い」
「あ、ジョゼさん!!」
声をかけたのは下原であったが、厨房にはサーシャもいた。
「サーシャさんがですね…お詫びがしたいって」
「え、でも…」
「気付いたそうなんです、カロリーが少ない物であれば普通に食べても良いのではないかって」
「あ…ありがとうございます!!!!」
こうして徐々に体力が回復していったジョゼであった………。
「おかわり!」
「えっ?!ちょっとジョゼさん?!」
「カロリーハーフは2倍食え!これがデブキャラの鉄則です!」
「あなたいつからデブキャラに転身?!………ジョゼさん、そこに正座!」
【おわれ】