the night watch bell II


 厳かに鳴り響く鐘の元に、近寄る人影。
「お前ラうるさーイ! 真夜中に何鳴らしてんだヨ!? サーニャが起きちゃったじゃないカー!」
「あ、エイラさんにサーニャちゃん」
「あれ、二人は夜間哨戒じゃなかったのか?」
「私達だってたまには休ませろヨ。で、せっかくの休みかと思ったらこの騒ぎダヨ! で、何だよこの妙に残る音ハ……」
「除夜の鐘です。扶桑の風習で、百八回突くと、ひとの煩悩が消えるんですよ?」
「煩悩……そう言う習慣は扶桑の中でやってクレ。わざわざ基地の中でするなヨ。何事かと思うダロ?」
「芳佳ちゃん。私、少し、やってみたい」
「えええサーニャ、やる気?」
「うん。エイラも一緒に、どう?」
「え? う、う、うん……サーニャが言うなら、仕方ないなあ。一回だけダゾ?」
「エイラさん、サーニャちゃん、綱を持って……そう。そんな感じ。それで勢いを付けて、突いてみて」
「エイラ……手、触れてる」
「だって仕方ないじゃないカー」
「ニヒー 何か結婚式みたいだよシャーリー」
「面白いなお前達」
「シャーリー達に言われたくないヨ!」
「良い音出してね、サーニャちゃん」
「じゃあ行くよ、エイラ」
「お、オウ!」

ゴーン……

「二人共上手ですね! 良い響きです!」
「サーニャと私にかかればざっとこんなモンだナ」
「でも何か……エイラ、煩悩増えてね?」
「なっ!? シャーリー、ナニイテンダ!? そんな事……」
「ちょっと貴方達、真夜中に一体何の騒ぎですの!? まったく五月蠅くて眠れやしない! 今何時だと思って……」
「あ、ペリーヌさんにリーネちゃん」
「芳佳ちゃん、さっきからずーっと聞こえてたヘンな音って、これ?」
「扶桑から取り寄せたんだよ。除夜の鐘って言ってね……」
「宮藤さん、貴方また扶桑の迷惑な……」
「そうでもないぞペリーヌ。これは百八回鳴らす事で人の煩悩を消し去る、とても有り難いものなのだ」
「しょ、少佐! いつの間に?」
「いやあ、ちょっとミーナを追い掛けて、な……」
「あ、坂本さんお帰りなさい」
「何だ、結局殆ど来てるじゃないか。どうだペリーヌ。お前も一回位突いてみたらどうだ?」
「そっそれは勿論、有り難く、やらせて頂きますわ!」

ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン……

「うむ。良い音だ。ペリーヌもなかなかうまいな」
「ととんでもない! 少佐、ありがとうございます!」
「でもペリーヌぅ、そんなムキになって連打しなくてもぉー」
「ペリーヌ、それハ煩悩あり過ぎって事カ?」
「ペリーヌ、お前煩悩幾つ有るんだー?」
「そそそんな事有りませんわ!? 三人共、変な詮索はお止めなさい!」
「芳佳ちゃん、一緒に突こう?」
「うん、良いよリーネちゃん。一緒に……」

ゴーン……

「うむ。良い音だ。二人共見事だ……ん? 宮藤、もうリーネから離れても良いんだぞ?」
「はっ!? いえ、何でも無いです、大丈夫です」
「宮藤、お前煩悩が増えてないか?」
「きっ気のせいです!」
「なるほど、これが扶桑の鐘か。大きいな」
「おお、バルクホルンとハルトマン」
「結局トゥルーデと一緒に来ちゃった」
「せっかくだからお前達も鳴らすと良い。ほら」
「少佐が言うなら……」
「ちょっとバルクホルン待て。魔力解放はしなくて良いからな。お前の場合はそーっとで良いんだ」
「この鐘はそんなに脆いものなのか?」
「いや堅物、あんたの力が強過ぎるんだよ」
「何だとリベリアン?」
「良いからトゥルーデ、一緒にやってみよう?」
「ああ。試しにやってみるか」

ゴーーン……

「近くで聴くと、また迫力が有るな……余韻も凄いな」
「はっはっは! これで煩悩がまたひとつ消えた訳だ」
「そうかなぁ、少佐? 増えてないですかね?」
「何? シャーリー、どう言う事だ?」
「いや、まあ良いんですけどね……」

end



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