Ein Kaninchenmädchen


「ねぇ、伯爵」
「何だい? 先生」
「これは一体何の真似なのかしら?」
夕食を終え、明日の教練の準備をしようとしていたところに、ニセ伯爵が何やら怪しげな箱を持ってやってきた。
私がその箱を開けてみると、中に入ってたのはウサギの耳をしたカチューシャにチョーカー、アームウォーマーとブーツ、
それと、綿でできたふわふわの尻尾。
早い話がバニーさん変身セットというわけだ。
「ほら、先生もうすぐ誕生日じゃない。これはボクからのひと足早い誕生日プレゼントってことで」
「これを私に着ろって言うの?」
私は、箱の底に入っていた布の面積が異様に狭いトップスとテープ状のズボンを見ながら言う。
なんなのよこれ! ほとんど裸じゃない。
「うん。絶対エディータに似合うと思うんだ」
「ふざけないでよ。何で私がこんな格好を……」
「ティナに手紙贈った時、ウェディングドレス着てくれたじゃん」
「あ、あれはその場のノリって奴で……」
「じゃあ、これもその場のノリで着てよ」
「お断りします」
私がぴしゃりと言い放つと、ヴァルディは目に涙を浮かばせながらこう呟いた。
「ぐすん……そうだよね、エディータは本当は私の用意した服なんて着たくなかったんだよね……いつも無茶ばっか言ってごめん」
嘘泣きだと分かっているのに、ヴァルディの可愛らしい表情を見て、私は思わずドキリとしてしまう。
……つくづく私もヴァルディには弱いわね。
「わ、分かったわよ! 着ればいいんでしょ、着れば!」
私がそう言うと、ヴァルディは一転して明るい表情になって、
「本当!? 着てくれるの? やった!」
子供のようにはしゃぎ回った。
今のヴァルディの涙に騙された女の子って一体、どれくらいいるんだろう。
ひょっとしたら、ヴァルディのネウロイ撃墜数より多いんじゃないかしら。

「えっと、今から着替えるんだけど……」
「うん。だから、ボクが見ててあげるよ」
「出て行け!」
「分かったよ。じゃあ外で待ってるから着替え終わったら言ってね。エディータの素敵な変身ぶり、楽しみにしてるから」
ヴァルディはそう言い残して私の部屋を一旦後にする。
私は、箱の中に入ってるバニーガールの衣装をもう一度見てみる。
勢いでOKしちゃったとは言え、いざ着るとなるとやっぱり恥ずかしいわね……
ええい! こうなりゃもうヤケよ。
私は勢いよく軍服とズボンを脱いで、バニーガールの衣装を身に付ける。

「……入っていいわよ」
「お邪魔しま~す……わぁ、驚いたな。天使のように可愛いよ、エディータ」
「すごく、スースーするんだけどっ……」
それもその筈、今私の下半身を覆っているのはテープ状のズボンと綿でできた尻尾のみ。
こんな格好、こいつ以外の誰かに見られたら恥ずかしさのあまり死んでしまうかもしれない。
「本当に似合ってるよエディータ。その、今夜……どうだい?」
ヴァルディが綿のしっぽを千切りながら耳元でそう囁きかけてきた。
「ひゃっ! このっ……変態!」
「痛っ!」
私は、指示棒をヴァルディの頭めがけて思いっきり投げつける。
「痛たた……ただの冗談じゃないか、エディータ」
「あんたの冗談はいつも冗談に聞こえないのよ!」
「手厳しいね。でも、すごく似合ってるよ。ボクの心のアルバムに一生焼き付けておきたいくらい」
「……寒いわよ」
「そりゃ、ほとんど裸に近い格好だからね」
「そうじゃなくて、あんたの台詞が」
私がそう言うと、ヴァルディはいつもの伯爵スマイルで微笑みながら、私の事を抱きしめてきた。
「なんならもっと寒い事、言ってあげる……エディータ、世界で一番愛してるよ」
「……ヴァルディの馬鹿」
私はヴァルディの告白に応えるように少し背伸びをして、彼女の唇に思いっきりキスをしてやった。

~Fin~


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