伯爵にまつわる一枚の写真


「あら伯爵、読書?」

深夜、ロスマンは誰も居ないはずの食堂に水を飲もうと足を運ぶとソファーに座り本を読んでいるクルピンスキーを見かける。

「先生、どうしたんだい?こんな時間に」
「水を飲もうと」
「残念、ボクを欲しがってるのかと」
「バカ…何読んでるの?」
「え?本だよ」
「それはわかるわよ;;何の本?」

読んでる本が気になったロスマンはクルピンスキーに近付く。

「ん?これだよ、カントの哲学書」

本には『Zum ewigen Frieden. Ein philosophischer Entwurf(永遠平和のために)』と書いてある。

「…まあ驚いたわ。あなたってばゴシップ誌しか読んでないイメージがあったから」
「失敬な!『anan』だって読んでるさ!…セックス特集だけね!」
「まっ、明日の訓練に響かない程度で切り上げて寝なさいよ」
「いや…もう寝ようかな」

パタンと本を閉じ、スッと立ち上がり笑顔で…

「では先生、グーテ ナハト」
「えぇ」

クルピンスキーが自室へ戻ったため、食堂はロスマン一人になった。

「さっ、私もお水を飲んで…んっ?」

ふと足元を見やると何やら一枚の写真が落ちている。

「これ、伯爵のものだわ…」

拾って、写真を見たロスマンだが...

「だっ、誰なのこれっ!!??」


***


翌日の食堂。
みんな一斉に起きてきて、朝食を摂っている。

「ごちそうサマンサタバサー♪」
「伯爵!そんなふざけて!」
「やー熊さんが怒ったー!食われちゃうー!」
「待ちなさい、エセ伯爵!!」

サーシャとクルピンスキーはふざけており、何処かへと消えた...

「…あっ、あのラル隊長」
「どうした?」
「その…昨夜ですね」
「昨日の夜どうしたんだ?あ、ジョゼおかわり頼めるか。…どうした?」
「その…こんなのを拾ってしまいましてですね…」

テーブルの真ん中に拾った写真を置く。

「かっ、可愛ぃ!!!!」
と素早く下原が反応する。

そう、そこに映っていたのは長髪で水色の子供用ドレスを着飾り、クマのぬいぐるみを抱いている少々嫌々な顔をした少女が写っていたのだ。

「だっ誰ですか!?ここに写ってるの!!??」
ジョゼも若干興奮気味である。

「確かに可愛いんですが…」
と困り顔のロスマン。

「………なんか怪しい匂いがしねえか?」
と呟く菅野。

「私も思った…これって…」
ニッカも恐る恐る発言する。

ガチャンッ!!

すると突然ラルがフォークを持ちながら立ち上がり、
「これは淫行だっ!!!!」
と叫ぶ。

「…隊長、とりあえず落ち着いてください」
「えぇい、落ち着いてられるか?!今までクルピンスキーの事は大目に見てきた!だが…これはないな!庇いきれないな!」
「ちょっと待ってロスマン先生、伯爵はもしかして…?」
「この未成年に手を出したに違いない!!」
「えぇぇぇぇぇ…」
「…別に良いんじゃね?」

菅野は食べかけのウインナーを頬張る。

「考えてみろ!『世界を守るウィッチーズの実態 中尉(18)が未成年相手に淫行』と言うゴシップ誌が発売されるのかもしれないんだぞ?!」
「えっ?!」
「そのスキャンダルで第502統合戦闘航空団は解散、いや…全世界の統合戦闘航空団は解散になる!!」
「隊長、話が飛躍し過ぎな気が…;;;」
「あぁどうしよう…ロスマン、お前今いくら持ってる?」
「えっ??!!どうしたんです?!」
「これはもう示談だ!相手の親御さんにキチンと話し合いをし、これは無かった事に!」
「隊長落ち着いてください!いつもと若干キャラが違いますよ?!」

必死に止めるジョゼだが、彼女の声はラルに届いてないようだ…。

「…まっ待ってください隊長!クルピンスキーに限ってはさすがに…ほら!手を繋いだだけとか?!」

「そもそも付き合ってると言う前提なのかよ…」
と菅野がまたまた呟く。

「手を繋ぐだと?!…おい、そしたらひと昔前の渋谷ならデート代3万は請求されるだろ!!」
「伯爵だったらデートだけでは済まない…ハズ」

何故かどんぞこに突き落とされるラルとロスマン…。

「どうしましょう…」
「…とりあえず、食器を片づけましょう」
「はい」
この話に飽きたのか、さっさと食器を片づけ始める下原とジョゼ。





「あれぇ、どうしたの?みんな」
「隊長とロスマンさんどうしたんですか?!」

いつの間にかクルピンスキーとサーシャが帰って来ている。

「あ、この写真だけど…」
「あー…見られちゃったかぁ」
「誰なんだ?それ」
「…聞きたい?」
「もしかして一夜限りの関係の女…じゃないよな?」
「何を言ってるのさ!さすがに幼女にまで手は出さないさ!」
「うわあ…説得力ねえ…」
「まあ下は10歳、上は50歳までOKだけどね」
「良い加減、それ誰なんだってば」
「これ?………ボクだけど」














「「ええええええっ!!??」」
「ビッ、ビックリしたあ!!」
「ちょっ…どうゆう事だクルピンスキー!!」
「説明しなさいよ!」
「なんだい2人とも、血相を変えて;;」
「これって…あなたなのっ?!」

コクリと首を縦に振るクルピンスキー。

「あんま知られたくなかったんだよねぇ…今は髪短いけど、小さい頃は髪が長くて…あ!長い髪をバッサリ切る直前に撮ったんだっけなー♪」
「「………」」
「…なに先生、髪長くして欲しいのかい?だったら今日からでも伸ばすけど」
「…バカーッ!!!!」

バシッ!!

「へぶしっ!!??」

とりあえず一発殴ってから退室するロスマン。

「…とりあえずムカつくから、トイレ掃除よろしくな。クルピンスキー伯爵」
ポンと肩に手を置き、笑顔でそう言うラル。

「…ちょっと待ってくださいってばー!何故にボクが!!」
と冗談ながら、ラルを追いかけて行くクルピンスキー。

食堂には下原、ジョゼ、ニッカ、菅野、サーシャが残る。
しかし、サーシャは顔を赤くしてプルプルしている...

「どうしたんです?サーシャ大尉」
「…っ!!」
「熱でもあるんですか??」
「…行きつけの花屋の娘よ、この娘」
「「「「ええっ??!!」」」」
「大事な娘さんだからって…あんだけ手を出すなって言ったのに…っ!!」

と台所から包丁を持ち出すサーシャ。

「ちょっ!!大尉!」
「やめてみんな!私を止めないで!!アイツを刺してから私もっ!!」
「落ち着いてくださいぃぃぃ!!!!」
「やめろって!」

必死に止める下原、ジョゼ、ニッカ。


そんな中、温かい緑茶を啜りながら一言。
「…で結局、手を出したのか?出してないのか?」
一人疑問に思っていた菅野であった…。


【おわれ】


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