スオムス19XX 遅刻の理由
廊下で視線があった。
何となく見つめ返したその深い瞳が音も無く間合いを詰めてきて、おもむろに腕を掴まれた。
「え?」
わたしの疑問符を無視してビューリングさんが囁く。
「キスがしたい」
「え……ええっ!?」
あまりにも唐突なその一言に焦る。
だってここは廊下のど真ん中ですよ。
誰かに見られちゃうかもしれませんよ。
等といった抗議を声を上げようと口を開いた矢先にそこを塞がれる。
「!?」
もちろん塞いだのは、彼女の唇。
けだものさんとしか言いようの無い、問答無用な勢いだった。
「んっ……」
「んむっ……ぁっ」
流されて、重ねられてしまった唇に、舌先が入り込んでくる。
タバコとコーヒーのものが入り交じった彼女のキスの香り。
初めはそんなに好きじゃなかったのに、いつの間にか馴らされてる自分がいる。
好きな人のものだとアバタもエクボで、"臭い"も"香り"に変わるんだなぁ、ってしみじみと思ってみる。
舌を絡めると、彼女のその香りももっと強くなってくる。
その腕の拘束は弱い。
抵抗して、振り払って逃げようと思えば簡単にできそうな力加減。
でも、逃げる気は起きなかった。
このキスを、続けたい。
「んんっ……」
「んくっ……っ……」
舌を絡めあう、大人のキスが続く。
唇を重ねた分だけ、心が近くなる気がする。
いつのまにか拘束は抱擁に変わって、私の方からも彼女を抱き返していた。
だって、どうせ流されるなら、気分よく流されたい。
密着した分だけ、RAFの革ジャンの下に隠されたふくよかな感触が私の胸へと返ってくる。
密着した分だけ、きっと私のドキドキも伝わってる。
密着した分だけ、普段は人に考えを読ませないクールな彼女の感情が、たくさん流れこんでくる。
好きだ、って。
わたしの事をいつまでだって守りたい、一緒にいたい、って。
わたしもですよ。
わたしもあなたの事を守りたい。
「……ふぅ」
「……はうぅ」
唇が離れる。
熱っぽい目で見詰め合って一呼吸。
なんだか一拍置いたらまた恥ずかしさが募ってくる。
っていうかここは廊下ですよ。
いつ誰が来て見られてしまうかもわからないわけで……そ、それにこのあと会議があってみんなで集まらなきゃいけないし、そもそもわたしはその前にお花摘み的な用を足して置くついでにビューリングさんを呼びにきたわけであって……。
「ビュー……」
「続きをしよう」
「へっ?」
わたしの声を静かな一言で両断し、再び間合いがゼロになる。
クールな瞳がもう一度迫り、キスの時の軌道ずれて、首筋へと唇が落ちる。
「んぁっ……」
壁に追い詰められて、胸元を開かれ、首周りにつつーっと舌を這わせられる。
「だ、だめですよっ……こ、こんなっ……と、ころ……でっ……」
さっきからわたしが主張してると折りココは廊下……って、まともに主張できていませぇん!
「大丈夫だ。みんな既に会議室に移動している」
って、状況と動向把握されてるしっ。
「で、でもっ……」
わたしはそもそも、その……おトイレに行きたくて……。
と、続けたいのに、わたしの呼吸を熟知したビューリングさんは自然に割り込んで一方的に思いを伝えてくる。
「エルマのかわいい姿が見たくなった。自分まで満足しようとは思っていない。お前なら感じやすいからすぐに済む。よって会議には遅れない。問題無いな」
よく整った、デキル美人な顔を幾分上気させて、とんでもない事を告げられた。
わたしのかわいい姿が見たい……それだけで胸の奥がきゅんきゅんする。
自分まで満足しようとは思っていない……それってつまりわたしだけが一方的に……その、されるって事です?
わたしが感じやすいからすぐ済む……って、べ別にそういうわけではなくて、ビューリングさんが凄く的確なだけです!
よって会議には遅れない……と言われても問題がなくなるわけじゃありませんよぉ。
「えっ、ちょ……ひゃんっ」
色々と伝えたい事を声に出して主張すると言う行為に度々失敗し、流されて身体をまさぐられる。
で、出来れば部屋の中でっ!
っていうか先におトイレっ!
「声を出せば気付かれるかもしれないぞ」
「んくっ……」
更に声を出しちゃいけないと思うと、今度はどうしようもない喘ぎが漏れないように両手を使って自分の口を塞ぐ。
そうなると、身体の守りが疎かになってしまう。
膝をわたしの脚の間に分け入らせつつ胸をまさぐっていたビューリングさんの腕が、わたしのガードが上がった事を確認すると股間へと這わせられる。
「んむっ!」
い、いまそこを触られたら漏れちゃう!
「湿っているぞ、私を歓迎してるならもっと喜んでくれていいんだが」
「あぁんっ……そ、それ、はぁ……はぁんっ!」
喋ろうとすると高い喘ぎが廊下に響いてしまうので、恥ずかしくて上手く出来ない。
でも、ちゃんと伝えないと本当に漏れちゃう。
どうしよう!? どうしよう!? とオロオロ狼狽する間に、股間をまさぐる手が大胆になって、重ね穿きズボンどころか下のズボンの中まで一気に侵入してくる。
「っっっ!!!」
「どんな表情でも、エルマはかわいいな」
どんな表情でも良いんならわざわざこんな事しないでくださぁい。
と、そんな思いを込めて涙目で睨み付けるけれど、どうやらそれは逆効果だったようで、指先が本格的に私の敏感な粘膜をこすり始める。
「ひっ、んっ……くぅっ! んんっ、んっ、んんんっ!!!
そもそもが怖くて自分で触れないような所ばかりを執拗に責めて来るなんて、ひどいですビューリングさん。
敏感すぎて辛いからその手の動きを邪魔したい。
脚を閉じれば簡単にそれは出来るはずなんだけど、出来ない。
壁に追い詰められた上に膝を挟み込まれているせいだ。
空戦と同じで、どこまでも抜け目無く先に布石を打ってくる。
でも……だめ……そんなにそこをつんつんぐりぐりされたら……はうぅ。
「手で口を塞ぎ続けるのが辛いなら、もう一度キスで塞いでやる」
耳たぶを甘がみされながら、少し熱っぽい声でそんな事を囁かれた。
うう、どんどん抵抗力が失われていくのがわかる。
わかるけど、本当に漏れちゃう。
「ひんっ!」
いつの間にか、制服のボタンが全開にされていて、その隙間から忍び込んだ左手が直接おっぱいへと触れた。
「ビュ……あ、あのぅ……んんっ! お、おしっ……んむっ……」
「んっ……」
なんとか気力を振り絞って現状を伝えようとしたら、キスで口を塞がれてしまった。
こ、これは、本当にまずいかもしれません!
「んふっ……んんっ……」
キスと同時に、ビューリングさんの動きも加速する。
胸は乳首を挟んで全体を揉み、下のほうは中指を浅く女陰へと差し入れつつ親指で陰核を強くこするようにしてきた。
特に親指の動きが辛かった。
その動きによって時折包皮がめくり挙げられて本体へと触れ、その度に痺れるような快感のパルスが背を駆け上る。
きっとキスで口を塞いでもらっていなければはしたない喘ぎ声を廊下いっぱいに響かせてしまっていただろうと思う。
でも、わたしはといえば抵抗するどころかただその皮ジャンへと縋りついて身を任す事しかできない。
イッたら、漏らしてしまう。
そんな確信がある。
あるけれど、キスが心地よくて、指使いが気持ちよくて、このまま愛しいこの人にイかされたいという思いが強くて、流される。
「んっ、んっ、んっ、んぅ、んぅぅ、んっ、んっ、んんっ、んんんんっ!」
指の動きが更に強く、早くなって、トドメとばかりに包皮をめくり挙げる動きへと変わる。
あらわにされた一番敏感な場所に、強く指が押し付けられ、ギュッと擦られた。
ああ、わたし、もう駄目です。
「んんんんんんんんんんん~~~~~~~~~!!!!!!!!」
ぷしっ。
ああっ、やっぱり……。
大きな快感がはじけると共に、下半身が弛緩して、思い通りにならない動きが生まれてしまう。
ちょろちょろ……じわーっ。
一度決壊したそこは、止まらない。
ビューリングさんの手を汚し、そこと太腿を伝ってズボンへと染み込み、情けない跡を刻んでいく。
はぅ……おもらし、しちゃいましたぁ。
「はぁぁっ……、こんな……ところ、でぇ……」
緩んだままの下半身から迸る物は、止まる気配を見せない。
きっと落ち着くまで流れ続けてしまうだろうと思う。
「エルマ?」
「んんんっ……と、とまりませぇん」
「ふっ、仕方の無いヤツだな……」
「びゅ、りんぐ……さぁん……ひっく、うぇ……」
恥ずかしくて、泣いてしまう。
「すまなかった。さっきから何かを伝えようとしてたのは、こういうことだったんだな。こうなったのも私のせいだ。ちゃんと片付けも手伝ってやるから、今は全部出して楽になってしまえ」
その左手で頭を胸に抱きこんでくれて、軽くぽんぽんしてくれた。
その優しさに嬉しくなった私は、下手に力を入れるのを諦めて、全部出してしまう事にした。
結局、後片付けと着替えをしていたせいで、私たちは会議に遅れる事になってしまった。
――――。
「もー!作戦会議の時間なのに何やってるのよあの二人は!」
ガチャッ
「遅いっ!!」
「ひっ す、すいません……!」
「エルマ中尉が遅れるなんて珍しいネー。何かあったねー?」
「(コクコク)」
「そ、それは……」
「遅れてすまないな」
「全く……ビューリング、貴女も何やってたのよ!!」
「ん?あぁ、ちょっと『休憩』してただけだ」
「ちょっと、ビューリングさん!?」
「な、ななな……なにやってんのよあんた達は!!」
「はぁ……トモコが増えたねー」
「私はそんなんじゃないわよ!!」
「ななな何でバラしちゃうんですかあああぁぁぁぁ~~~!!」
ポカポカポカ。
うう、恥ずかしいです~。