デキる女の一日


「ん………」

5時58分…私は自然に目を覚ます。
1分でボーッとし、残り1分で覚醒させるのだ。

~♪~♪

6時ぴったりに起床ラッパが鳴る。
同時に私はベッドから体を起こす。

「あー…そういや飲みっぱなしだったな」

ベッド近くに置いてあるミニテーブルにはビールの空き瓶が数本転がっている…昨日のうちにやっときゃ良かったかもな。

「仕方ない…」

サイドテーブルに畳んで置いてあった軍服に袖を通す。
あ、私は寝る時は全裸だ!スッポンポン派だ!裸で何が悪い?!

着替えた後、私は空き瓶を回収して食堂近くのゴミ捨て場に捨てる。
そしてそのままの足で私の部屋…つまり隊長室へ赴く。

キイッ...

入って最初にする事…それは朝食前のコーヒーを飲む事だ。
結構こだわる方だ。わざわざコーヒーミルをロンドンのハロッズから取り寄せ、丁寧に豆をゴリゴリと粉砕する。

コポコポコポ...

「うむ、美味しい!」

合格!85点だな、今日の出来は。


***


8時に食堂にて朝のミーティングを兼ねた朝食時間だ。

「…となっている。以上が今日の報告だ。なお、ネウロイはこの間出現されたばかりなので今日は発令されていない。なので各自、訓練等をしておく事」
『はいっ!』

502のメンバーが全員、同じタイミングで返事をする。
思ったんだが、これってなかなか滑稽な光景ではないか?

今朝の朝食当番はジョゼだ。手作りのクロワッサンに目玉焼き2個、ベーコンにサラダ…と至って普通のメニューだ。
でも美味しいんだ、これが!

「わっ!なんで私のベーコンを取るんだ?!」
「うっせ、これが実際の戦いだったら墜ちてんぞ?!」
「朝食と実戦は関係ないだろ!!」

ニパとナオがケンカをしているな、全く…。
慌ててジョゼがニパにベーコンをやろうとしているが…サーシャが急に説教をし出したぞ。
この部隊は見ていて実に飽きないなー。


***


9時に部屋に戻る。
さっ、仕事だ仕事!

コンコン...

「ロスマンです」
「おっ、入れー」

ガチャッ...

「隊長宛てに来ていた手紙です」
「おぉ、ありがとう」
「そしてこれが…今月分の請求書です」
「…やけに部品代が高くないか?」
「ははあ…あの3人が…」
「なんだ、『ブレイクウィッチーズ』か」
「はい…度々注意しているのですが、すみません…私の力不足で」
「いや、大丈夫だ。心配しないでくれ」
「申し訳ございません…」
「そんな事よりも今夜も一緒に飲むか?」
「はい!喜んで!」

うむ、やはりロスマンは笑顔が一番だな。

「さて…と、私の仕事はっと」
「上層部に送る書類作成、ストライカーユニット部品の発注書、援助物資のリスト作成ですね。あ、でも全て私がもうやっています」
「え…?」

驚いた…仕事早いな、ロスマンは。

「じゃあ私の仕事は…?」
「えっと…あ、領収書の整理お願いします。あのエセ伯爵、経費を私用に使ってるんですよ!あり得ないですよ!」
ははは…わかった、じゃあハンコ押しぐらいは私がやる」
「助かります」













「ふう…」

領収書のハンコ押し完了。
ただ、ほとんどクルピンスキー関連の物だったなあ…アイツには一回、話し合いの機会を設けないと。
まあ予算が欲しいからじゃんじゃん使うのは良いんだけどな。

ゴリゴリゴリ...

とりあえずする事がないから本日2回目のコーヒー。

「うむ…美味しいな!」


***


時が流れるのは早いもので、既に12時を回っていた。
昼食の時間なため、食堂へ赴く。

昼の当番もジョゼで、ふむ…今日はパスタなのにリべリオン生まれのメニュー…『カルボナーラ』か。

「わっ!なんで私の麺を取るんだ?!」
「うっせ、これが実際の戦いだったら墜ちてんぞ?!」
「昼食と実戦は関係ないだろ!!」

…おいおい、朝とまるっきり同じやり取りをしているぞ?!あの2人!!


***


「なあロスマン…」

昼食後、廊下を歩いていたロスマンに声をかける…が、

「すみません、ちょっと今仕事が忙しいのでまた後でお伺いします!」

…おいおい、それって本来私の仕事じゃあ…?

モヤモヤしながらも、本日3回目のコーヒーを煎れる。

ゴリゴリゴリ...

「…うむ、やはり美味しいな」
















15時過ぎ、あまりやる事がない…いやこの言葉だと語弊があるな;;
仕事が落ち着いたので、格納庫へ行ってみる。

そこにはチェック表を手にしたサーシャと、傍にクルピンスキーが居る。
しかし、何から言い争い?お説教?をしているようだなあ…;;;

「ったく!あなたは何遍言わせればわかるんですか??!!」
「困るなあ熊さん、別にボクだって好きで壊してるワケじゃないよ」
「良いですか??!!湯水のようにお金があるんじゃありません!!」
「え、でもちゃんと税金は納めてるよ?」
「あなたは自分が払ってる金額以上のストライカーユニットを破損しているんです!」
「いや、違うよ…飛んだら勝手に壊れるんだよ。リコール?これ、製造元の本社へ早速電話しなくちゃなあ」
「そんな情報は私の耳に入って来てません!!!!」
「何せ10分前に耳に入った情報だからね」
「…っ!!」

「まあまあまあ」
「たっ、隊長!」
「隊長、聞いてよ~…熊さんがボクの事を虐げるんだよ」
「なっ??!!」
「クルピンスキー、お前はもっと破損するのを控えろ」
「控えろって;;」
「『ブレイクウィッチーズ』姉妹の長女だろぅ?1人減っただけで、注文書の紙が1枚減るんだ」
「…は~い、気をつけま~す」
「エセ伯爵!!あなた上官に向かって…っ!!!」
「サーシャもそんな怒るな、国民だって世界を守っている実績があるからお金を出してくれてるんだ。そもそもクルピンスキーに実績が無かったらとっくに自腹だぞ?」
「すみません…」
「2人ともケンカはするなよー」
「熊さんごめん…この後、仲直りとしてエッチしないか?」
「こここここの変態っ!!!!」







部屋に戻る。
2人のケンカを仲裁した所でまた、

ゴリゴリゴリ...

本日4回目のコーヒーを煎れる。

「うむ、美味だ」


***


17時、今さらながら新聞を読む。
おっ、なんだ…今回の特集はマルセイユ特集か。
思えば彼女と一番最初に出会った時は荒れていたなあ…でもあの時、注目しなかったらこんな活躍は出来なかっただろう。
そう思いながら、本日5杯目のコーヒーを飲む。

「うむ、素晴らしい」

しかも…この写真、撮ったのは扶桑の加東圭子…え?!隊長になったのかぁ…。
そういや入院している時、私に取材しに来たなあ。あの時はカメラマンだったが復帰したのか。
そう思いながら、本日6杯目のコーヒーを飲む。

「うむ、エクセレント」

そういや、501部隊のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐もこんなんだろうか…?
こんなに時間を持て余しているのだろうか?…今度聞いてみるか。そもそも彼女とは…JG53に所属した以来会ってないなあ…。
そう思いながら、本日7杯目のコーヒーを飲む。

「うむ………ゴホゴホッ!気管支に詰まった…っゴホッ!」


***


19時、ミーティングを兼ねた夕食だ。

「…本日異常なし。で良いか?」
『はいっ!』

502のメンバーが全員、同じタイミングで返事をする。
思ったんだが、これってなかなか滑稽な光景ではないか?
…あれっ、もしかして朝と同じ事を言ってるか…?まあ良いや。

今晩は、下原が当番だ。何なに…扶桑の鍋料理で『すき焼き』と言うのか。
肉やら野菜…この白い物体はなんだ?チーズか?とにかく色々な物を煮込んでいる。
しかもそれを、生卵を付けて食べると言うからまた不思議だ。腹は壊さないのか?
最初はこの扶桑の鍋料理に、みんなの箸でつつくと言う行為に抵抗があったが今では全くない。扶桑ナイズされてきたなあー

「わっ!なんで私の肉を取るんだ?!」
「うっせ、『すき焼き』は戦争だ!お前の捕虜はもらうぞ!」
「夕飯と戦争は関係ないだろ!!」

…うん、あの2人…朝と昼で言葉を変えてるが全く意味は変わってないぞ。


20時過ぎ、私は部屋に戻る。
レコードをかけるとするか…今夜はモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」だな。
ちなみに私は第三楽章が好きだ。

そして日課である、オオカミの剥製の手入れをする。私の使い魔はオオカミで、非常に尊敬している動物だ。
彼らの行動を見ていると時々、戦術の勉強になる時もある。そうした彼らに感謝の意を込めて、ピッカピカにする。

「ー♪ー♪」

椅子に腰かけ、モーツァルトを口ずさみながらピカピカになったオオカミを見る。
そうしながら、本日8杯目のコーヒーを飲む。

「うむ…流石に胃が痛い…」

なんだ、私はバリスタにでもなりたいのか??!!


***


22時過ぎ、私は自室で本を読んでいる。

コンコン...

「ロスマンです」
「入れ―」

ガチャッ...

「失礼しま~す」
「『カールスバーグ』で良いな?」

と緑色のビール瓶をロスマンに見せる。

「はい、もちろん!と言うか隊長、それしか飲まないじゃないですか」
「…そうだな、考えてみれば」

そうして戦術の事、メンバーの事、時には…『ガールズトーク』に花を咲かせる。
23時を少し過ぎた頃、

コンコン...

「夜分遅くにすみません、下原です」
「おっ、どうした?入れ」

ガチャッ...

「あれっ、ロスマンさんもいたんですか?!」
「そうよ、何なら私たちの『グータンヌーボ』に加わる?」
「え?!良いんですか??!!あ、扶桑から援助物資としてこんな物が届いたんですが」

と下原が持っていた瓶を手にする。

「ふむふむ、これはなかなか良い代物だな………って扶桑語読めんわ!!!!」
「出たっ!隊長のノリツッコミ!」
「あ、扶桑で有名な芋焼酎です。『魔王』って言う幻の酒なんですが」
「よし、ロスマンと下原!飲むぞ!」
「ラジャ~!」
「え、私まだ未成年…」
「隊長命令だっ!!!!」
「はっ、はいぃ…」


***


チュンチュン...

「むむっ…」

5時58分…私は自然に目を覚ます。
1分でボーッとし、残り1分で覚醒させるのだ。

~♪~♪

6時ぴったりに起床ラッパが鳴る。

「…えっ?」

ビックリした…何故なら私は壁に寄り掛かって寝ているのだから。
そしてその上に毛布が掛けられている。

とにかく私は立ち上がり、着替えて散乱している空き瓶を回収して食堂近くのゴミ捨て場に捨てる。
そしてそのままの足でロスマンの所へ。

「起きてるか?」
「あっ、はい…ちょっと待ってください」

といかにも今起きたばっかりのロスマンが部屋から出てくる。

「あの…私…」
「大丈夫です、誰にも言いませんから」
「へ…?」
「記憶にないんですね…」
「ああ」
「昨日…一瓶開けちゃって、隊長…急に服を脱ぎだしてですねえ」
「…はっ?!」
「急に全裸で正座しだして『裸で何が悪い』と…」
「………」
「そしてそのまま寝ちゃったんです」
「…すまんな」

それだけを言い残して、廊下を歩く。しかし何故か早足になっている…。

グンドュラ・ラル

カールスラント空軍第52戦闘航空団第8中隊、カールスラント空軍第52戦闘航空団第3飛行隊司令を経て、こう見えても私は502JFWの隊長を務めている。
エーリカ・ハルトマン、バルクホルンに次ぐカールスラント空軍第三位撃墜記録を持つグレートエースであり、芸術的な空戦技能を持っている。
さあて、今日も一日仕事だ。



【おわれ】


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