Live in the present


――1947年2月、カールスラント東部カイザーベルク

「お姉ちゃん、ちょっと作り過ぎじゃない?」
「何を言う、今日は年に一度のお前の誕生日なんだぞ。これでもまだ足りないくらいだ」
「あはは……」

――お姉ちゃん達ウィッチの活躍で戦争が終わってから、もうすぐで一年。
あの戦争で失ったものは大きかったけど、今は大好きなお姉ちゃんと一緒に暮らすことができて毎日が幸せ。

「ふふっ、いい匂い……私には勿体ないくらい豪華な誕生会だよ」

今日、2月7日は私の誕生日。
テーブルの上にはお姉ちゃんが作ってくれた美味しそうな料理がいっぱい並べられている。
これ全部食べきれるかな。

「クリス」
お姉ちゃんがオーブンからケーキを取り出しながら、不意に私の名前を呼んできた。
「なに、お姉ちゃん?」
「お前にはずっと寂しい想いをさせてきたな……本当にすまなかった。でも、これからはずっと一緒だ。
誕生日だって毎年祝ってやれるし、夏になったらまた遠くまで遊びに行ける」
「うん……」
お姉ちゃんが優しく頬笑みながら私にそう言ってくれた。
お姉ちゃんの言葉はとても嬉しかったけど、その表情はどこか寂しげな感じがした。
私と長い間一緒にいれなかった事に責任を感じてるのかな。
「ダメだよ、お姉ちゃん。お姉ちゃんがそんな顔してたら、天国のお父さんやお母さんだってきっと寂しがるよ」
私はお姉ちゃんの手をぎゅっと握りしめながら言う。
「お姉ちゃんと離れていた時の事、寂しくなかったって言えば嘘になるけど私、それ以上に誇らしかったんだよ」
「誇らしかった?」
「うん。私の大好きなお姉ちゃんが世界の平和を守るために戦ってるウィッチだっていう事が誇らしくて嬉しかったんだ。
だから、お姉ちゃんが負い目を感じる事なんてないんだよ。それに、一緒にいれなかった分の時間だってこれからいくらでも取り戻せるよ」
気が付けば私はお姉ちゃんの事を抱きしめていた。
優しくて、暖かみのある私の大好きな感触。
「お、おいクリス……」
私がお姉ちゃんの胸に耳を当ててみると、胸の鼓動が激しく動いてるのが分かった。
ふふっ、お姉ちゃんったら顔真っ赤にしちゃって可愛いな。
「ケーキより先にお姉ちゃんを頂いちゃおっかな」
私が冗談混じりでそう呟くと、お姉ちゃんの顔は更に真っ赤になった。
「な!? お、お前はどこでそんな言葉を覚えたんだ!? さては、エーリカかクルピンスキーの入れ知恵だな?」
「えへへ、どうだろうね」

――もし、ネウロイが現れていなかったら、私は今より幸せな日常を過ごせてたのかな。
時々、そんな事を考える。でもいくら考えても、失ったものは戻ってこないんだ。
だから、私は振り返らないで前を見て、『今』を精一杯楽しもうと思う。
大好きなお姉ちゃんと一緒に。

「お姉ちゃん」
「な、何だ?」
「いつもありがとう」

私は日頃の感謝を込めてお姉ちゃんの唇にそっとキスをした。
お姉ちゃん、これからもずっと一緒にいようね。

~Fin~


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