listless feelings


 午後の薄日が差すミーティングルーム。
 誰も居なくなったその部屋で、窓際のソファに深々と腰掛け、そっと肩を寄せ合う二人。
「トゥルーデ」
「どうしたハルトマン」
「もう二人っきりなんだから、カタくなくていいんだけど」
「ああ……そうか。そうだったな。エーリカ」
「そそ。ちゃんと名前呼んでくれれば良いの」
「すまない。どうも……」
「? どうかした?」
「いや、何でもない」
「顔赤いよ。照れてる? 可愛い、トゥルーデ」
「こら。人をからかうんじゃない」
「……その辺は、昔も変わらないよね」
「仕方無い。私は私だ。急に変わるなんて、無理だ」
「でも、私と一緒に過ごす時間が増えてから、大分変わって来たと思う」
「そうか? 私には解らないが……」
「自覚無しか……。まあ、その辺も変わらないよね」
「悪かったな」
「別に怒ったり悲しんだりしてるんじゃないよトゥルーデ、安心して」
 微笑むエーリカ、ちょっと物憂げな表情のトゥルーデ。頬にそっと手をやり、唇を重ねる。
 お互いの気持ちを通じ合わせ、確かめる為のちょっとした“儀式”。

 二人は横のテーブルからカップを取り、粗めに挽いたコーヒーの香りを楽しみ、一口飲む。
 ミルク入りも良いかもね、などと雑に会話を交わしたところで、ふとエーリカが思い出したかの様に呟いた。
「人には色々有るから。急に変わるなんて無理」
「さっきの、私の台詞だぞそれは」
「反芻してみただけ。確かにそうだよね」
「ああ」
「でも、少しずつだけど、変えていける部分も有るよね」
「それは、確かに有ると思う」
「例えばクリスの事とか。元気になって、随分と……」
「クリスの事は良いんだ」
「また照れてる」
「と、とにかくだ。時間は過ぎて行くから、嫌でも変わってもいくし、変えていかなければならない部分も有るだろう」
「トゥルーデ、言ってる事固い割には結構進歩的? だね」
 肘をついた格好のまま、エーリカはふふっと笑った。首を傾げるトゥルーデ。
「そう言う問題か?」
「まあ、私とトゥルーデの間については、もっと進歩的であって欲しいと思うよ」
「これ以上どう進歩しろと」
 ひそひそと耳元で囁くエーリカ。言葉を最後まで聞き終わらないうちに、トゥルーデは頬だけでなく耳まで真っ赤になる。
「ばっバカっ! そんな事出来るか!!」
「えー、やってみないと分からないよ」
「たまに、お前についていけなくなる時が有るから困る」
「冷静になられても。これも全部トゥルーデを愛しての事だから」
「こっこらっ! 皆に聞かれそうな所で、軽々しく『愛してる』とか言うな」
「えーなんで? 事実だし」
「だって、その、私としては……」
「分かってるよトゥルーデ」
 そっとトゥルーデの手を握るエーリカ。少しがさつで、骨太で。でも愛おしいその手をぎゅっと握って、エーリカは笑う。
「手を握るだけで分かるもの。トゥルーデの気持ち」
「何故? 超能力でも有るのか?」
「手、汗かいてるから」
「……っ!」
「じゃあ、そろそろ行こうかトゥルーデ。今夜が楽しみだよ。トゥルーデは?」
「……まあ、その」
「無理しちゃって。聞きたいな、トゥルーデの……」
 観念したかの様に、エーリカをそっと抱き寄せ、耳元で囁く。
「分かった。愛してる、エーリカ」
 そこで、誰かが部屋に来る気配を察するカールスラントのエース二人。
 空になったカップを手に、腕を組んで部屋を出る二人。
 行き先は……。

end



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