流れ星


冬の夜空はぶ厚い鉛色の雲に覆われていて、気持ちまで暗くさせる。
気持ちが滅入っている時は尚更だ。
こんな夜は夜間哨戒なんて放り出して、暖かなベッドの中で眠りたい。
魔法力で寒気を緩和できるとはいうものの、身を切るような夜風の中に長時間いるのは、
正直つらいものがある。
サーニャはフッと白いため息をつくと、今日の出来事を思い出していた。

今日、サーニャはエイラと喧嘩した。軽い口喧嘩に過ぎないけど喧嘩には違いない。
…喧嘩の原因は忘れた。
たぶん、エイラの纏わりつくような保護者ぶった言動にイラついたのだと思う。
エイラは私の保護者じゃないし、私はエイラに何かを頼った覚えなどない。
私はどんな事だって独りで出来るし、実際に今までだって独りでやってきたのだ。
「私のことはかまわないで! だいたいエイラは過保護すぎるのよ!」
思わず口にした自分の言葉に、誰よりも自分が驚いた。
もしかしたら…エイラは私以上に傷付いただろうか?

鉛色の雲の下を飛んでいると気持ちまで滅入ってくる。
サーニャはおもむろに雲の中に飛び込むと、そのまま真っ直ぐに上昇した。

唐突に視界が開けて、サーニャの体が雲を突き抜けた。
雲の上は何処までも空気が澄んでいて、満天の星空が広がっていた。
サーニャはハッと息を飲み込むと、息をする事さえ忘れて茫然と星空を眺めた。
今まで見たこともないような荘厳ささえ感じる星空に、サーニャの身体が微かに震える。
流れ星が一瞬だけ輝いて空を横切って消える。
そして、無数の流れ星がいっせいに星空の中を泳ぎだした。
「しし座流星群…」
時がたつのも忘れて、ひたすら流れ星を眺め続けていた。

あした帰ったら素直な気持ちでエイラに伝えようと思う。
「ごめんなさい」って…


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