イノセント


「おまえ魔女を見たことあるか?」
「いいや、ないね」
「だろうな。魔女の絶対数は少ないし、大抵は軍の中で隔離されてるもんな」
「おまえは見たことあるのか?」
「あるよ。…聞いて驚け。あいつら本物の子供なんだぜ!」
「なんだそりゃ…?」
「だから、本当に子供なんだよ。そこらにいる餓鬼と何もかわらねぇ」
「ふーん…少し飲み過ぎだな、おまえ」
「酔ってねぇよ。…とにかく聞けって」
「さっきから聞いてるよ」
「うん…その子供達が戦場の最前線にいるわけよ。信じられるか?」
「魔女しか対抗できないしな。それに…シールドがあるから平気なんだろ?」
「大本営の公式記録じゃ魔女の死傷率は限りなくゼロに近いってことになってるけどな…」
「違うのか?」
「実態は悲惨なもんだ」
「…そうか」
「中には怯えきってしまい、戦場に出ることを拒否する魔女もいる。
いや…大抵の魔女がそうだな。泣きながら逃げちまうんだ。
まあ…無理もないけどな」
「…」
「そんな子供達を気持ちよく戦場に送り出すために、どーすると思う?」
「さあ…考えたくもないね」
「薬だよ! 子供達に薬を投与すんだ! 信じられるか? 恐怖心を麻痺させて、残虐性だけを引き出すんだ!
中には精神崩壊しちまう魔女もいる。そいつらはお払い箱さ。ただの道具なんだよ!」
「…」
「だから俺達はコアコントロールシステムを開発する。子供達に闘わせないために。子供達を犠牲にしないために…」
「そういえば…お前の娘も魔女だったな。確か戦場で大怪我をして引退したとか…。今はどうしてるんだ?」
「娘の話しは…やめて…くれ…」
男は酒瓶を手から滑り落とすと、テーブルに覆いかぶさるようにして酔いつぶれた。

「しょうがねーな…。だから言ったろ? 飲み過ぎだって。そろそろ帰った方がいい。いま迎えを呼んでやるよ」
男は席を立つと後ろで控えている兵士に声を掛けた。
「マロニー大将のお帰りだ。表に車をまわしてくれ。それと…貴様がこの場で聞いたことは軍の最高機密事項だ。
…わかってるな?」

兵士は青ざめた顔で震えながら敬礼すると、駐車場へと走った。


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