模擬訓練


宮藤は午前の模擬訓練が終了すると、真っすぐにサーニャの所に向かった。
「ねぇ、エイラさんって弱点ないのかなー?」
宮藤の服はペイント弾のインクでベトベトに汚れている。
「いくら撃っても予知魔法で読まれちゃって全然当たらないんだ。エイラさんズルいよ。
サーニャちゃんならエイラさんの弱点知ってるんでしょ?」
「知ってるけど…」
サーニャは少し困った顔をして続けた。
「エイラの弱点を教えることは出来ないわ。だってそれはエイラを裏切るのと同じことだもの…」
宮藤は一瞬ハッとした顔をすると頬を赤く染めて恥いるように下をむいた。
「そ、そうだよね。ゴメンね変なこと訊いちゃって…」
宮藤につられるようにサーニャも頬を赤らめてうつむく。
「ううん。こっちこそ役に立てなくてゴメンね…」


午後の模擬戦でサーニャはエイラと対戦することになった。
後ろから執拗にマークしてくるエイラを魔導針で補足しながら、サーニャはぼんやりと宮藤のことを考えていた。

「芳佳ちゃん…エイラを撃墜する方法は本当は沢山あるの。
一つ目は予知しても避けようのない攻撃をする方法。例えばペリーヌさんの雷撃みたいに。
二つ目はエイラの魔法力が消耗するのを待つ方法。鋭い攻撃を続けて予知魔法をずっと使い続けさせる。
三つ目はエイラに予知魔法を使わせない方法。心理的な揺さぶりを掛けるなどしてエイラの集中力を撹乱する。
そして四つ目は…」

サーニャは目の前に浮かぶ大きな雲に飛び込んだ。


サーニャを追ってエイラも雲の中に飛び込んだ。濃密な雲の中は、まるで視界が効かない。
追撃を諦めて雲から抜け出そうとしたエイラは突然顔色を変えた。
「ま、まずい!」
狼狽したエイラの腹部と右肩にサーニャのペイント弾が直撃した。
困惑するエイラに次々とペイント弾がヒットしていく。

「四つ目は…エイラの予知した光景を利用する方法。
エイラは少し先の未来の光景を見ることが出来るわ。
でも濃密な雲で視界が遮られてる状態では、エイラの見てる未来の光景も雲に遮られている光景でしかないの。
エイラは自分が撃たれた場面を知る事はできても、弾がいつどこから何発飛んできたのか『見る』ことは出来ない…
だから、エイラはどの方向に逃げれば良いのか分からないし、予知魔法で逃げる方向を検証してる時間的余裕もないわ。
でも私にはエイラの正確な位置が見えるし、エイラが何を予知しているのか『見える』…」

サーニャは軽いため息をつくと沈んだ表情で呟いた。
「もちろんエイラは私が相手だから手加減してるわ。でもねエイラ、私も手加減してるのよ。
私が本気なら、雲の中に誘い込むようなまどろっこしい真似はしない。
最初からナパーム弾を使って、エイラの周囲1キロ四方を一瞬で火の海にしてるわ」


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