トブルク1943 まみちゃんがおっぱ(ry
「うん、しょ……っと。ケイさん、書類はココでいいですね」
「……ええ、ありがとうね、真美」
冷え込みのきつくなる夜。
お使いを色々頼まれて辿り着いたテントの中、ケイさんは書類に埋もれていた。
そんなところに更に書類束を持ってきたものだから流石のケイさんも「うえー」って表情になる。
そうはなるけれど、お使いを頼んだ対象であるわたしなんかにしっかりと「ありがとう」という感謝の言葉を作れるのは本当に大人だなぁと思う。
そんなケイさんにわたしが出来る事は……そうだ。
「あの、ケイさん」
「なぁに? 真美」
「肩、凝ってませんか?」
「あら、もしかして」
「はい、デスクワークで疲れているでしょうし、よろしければ肩揉みでもと思いまして」
「嬉しいわね。じゃあ、お願いしてもいいかしら? すこし休んだ方が帰って効率上がりそうだし」
「はいっ」
そんなわけで背もたれのある椅子に腰掛けたままのケイさんの肩をもみ始める。
まずは様子見で軽く揉みながら全体を把握します。
うん、とっても硬い。
肩の上のラインから肩甲骨の間辺りの辺りがガチガチになっている感じ。
これは、もしかするともっと下の方まで固くなっているかも。
「ケイさん、ちょっとお願いがあるんですけれど」
「ん? どうしたの?」
「ええと、逆向きに椅子に腰掛けられませんか」
「あら、ずいぶんと本格的になってきたわね。いいわ……よし、これでいい?」
「ありがとうございます」
背もたれ側を抱くようにして座りなおしたケイさんの肩から背中にかけてを改めて触る。
結構下の方まで背骨の両側とか、肋骨よりも下の辺りの腰に硬さがある。
わたしの武器の調達とか、偉いおじ様達に言えば色々持ってきてくれてるみたいだったけれど、代わりに裏では山のような書類が発生してたんですね。
その書類処理のためには結局隊長であるケイさんが机に縛り付けられて頑張ってる。
そんな頑張ってるケイさんの為に、わたしも頑張って肩揉みします!
軽く揉みながら大体の状態を確認できたので、次は懲りの頑固そうな所を中心に軽く叩いてほぐして行きます。
とんとんとん……。
子供っぽいわたしからすると羨ましさを覚える様な女性らしいラインのケイさんの背中を、軽く作った握りこぶしでリズミカルに叩いていく。
その後は手のひら全体で硬さの残る辺りをさするようにして揉み、最後に指で押していく。
で、当のケイさんなんですが……さっきから「んっ」「ああっ」「あんっ」「そこぉ」と、なんだかもしかすると声だけ拾ったらすごくヒワイな事になっている気もします。
ちょっと、こっちまでドキドキしてくるかも……。
指先の感覚としてはまだまだ凝りは奥深いけれど初めに比べると柔らかくなってきていて、すこし汗ばんでも来た様なので、あとあとのもみ返しのことを考えるとこのくらいで止めておくのがいいかもしれません。
「とりあえず、このくらいでしょうか?」
「はふぅ……、あら、もうおしまい?」
「はい、あまりやりすぎると却ってもみ返しで痛くなるかもしれませんし、もう30分近くたっています」
「あら、そうだったのね……私とした事が」
「でも、もっと続けてほしいほど気持ちよかったのなら幸いです」
「ええ、すごく良かったんでまた今度も頼んじゃおうかしらね」
「はい、是非!」
椅子に座りなおしながらそう言って微笑みかけてくれるケイさんに対して、二つ返事を返した。
悦んでくれて笑顔が見れる上に、なんだかちょっと普段聞けないような声を聞かせてもらえるのはこちらも幸せなので、それは非常にありがたい申し出だと思ったから。
――――。
と、そんな事が数日続いたある日。
「ふぅ……真美、帰る前にちょっといいかしら」
「はい、何でしょう?」
「肩揉みの後で申し訳ないんだけど、ちょっとお願いがあるの。あなたの魔法で、試してみたい事があるのよ」
「試したい、事?」
いつに無く真剣なケイさんの眼。
その迫力に押されるようにして、私はゆっくりと頷いた。
「まずは……そうね、この椅子をこうして……」
ケイさんは立ち上がると別の椅子を持ってきて、自分の椅子の後ろにそれを置いた。
「ねぇ真美、あなたの固有魔法って見た目は怪力だけれど、実際は対象物の軽量化なのよね」
「は、はい。そういう風に聞いています。自分ではよくわかりませんが」
「それって言うのは、多分だけど、自分が重量を感じた対象を軽くしているって認識でいいのよね」
「はい、多分」
「よしっ!」
「きゃっ」
ケイさんはわたしがびっくりするほど気合を入れると、自分の椅子に座る。
「真美、後ろの椅子に座って」
「はいっ」
言われるままに後ろの椅子へと座る。
「椅子はぎりぎりまで前に出して……私にくっつくような感じで……そうよ。そのまま腕を前に出して」
「はい。こう……ですか?」
「ええ、いいわ……うん、これで……」
むにゅ。
「えっ!?」
ケイさんの胴体の前側に回した手のひらになんていうかこう……重量感のある柔らかいものがっ……ごくり。
「真美、魔法使ってみて」
「えっ……あっ、はい!」
言われるがままに魔法を使い、手に余る「にくまんじゅう」の重量感を消し去る。
「お、おおおおっ!」
「ひゃ」
ケイさんが変な声を上げたので驚いて思わず手を引っ込める。
「あ、真美」
「すすすすいません!」
「驚かせちゃってゴメンね、真美。ね、もう一度お願い」
「えと……あの、いいんですか?」
「私からお願いしてるのよ。都合悪いなら仕方が無いけれど……」
「い、いえいえっ、そんな事はありません!」
「じゃあ」
「はいっ」
生唾を飲み込みつつ、ケイさんの脇の下から腕を通し、もう一度胸に触れ、大きくて柔らかいものを掴む。
程よい重量感を少しだけ堪能してから魔法を込め、重みを消し去った。
「うう~ん。やっぱり軽いわ~」
軽く頸をかしげるようにして回しながら嬉しそうに呟くケイさん。
「そ、そんなに違うんですか?」
「ええ、かなり違うわ。暫くこうしてもらっててもいい?」
「はい……って、えええ!? あの、いいんですか?」
暫くこうするっていう事は、わたしがずっとケイさんのおっぱを、こう……鷲づかみに状態を維持するという事でして……つまり、なんというか、すごく幸せな気分になってきました。
「え? 私がお願いしてる側よ。魔力も消費してもらってるわけだし、疲れてたり何か他に用事があるんだったらあなたの事を優先して頂戴」
「めめめ滅相もございません!」
こんな機会は逃せません!
でも、下手を打って失礼にならない様にしないといけませんね。
「あら、ふふふ……すこしなら揉んだりして触り心地を楽しんでくれてもいいのよ」
「ええっ、ほほほほんとうですかっ!?」
ううっ、思わず大声で反応してしまいましたが、そんな嬉しい事を言われても欲望に流されるわけには行きません。
こうして触れているだけでも鼻血が出そうなくらい幸せなのに。
「えっと、あの……大丈夫です。変な事はしませんので、お仕事の方を進めてください」
「そう、真美は真面目ね。じゃ、お言葉に甘えて書類を片付けちゃうわね」
ケイさんが机に向かって集中し始めた。
私の手のひらにはただ重量ゼロでひたすら柔らかい、例えるなら綿菓子のようなケイさんのおっぱいがあって、その存在感と体温を私へと伝えてくる。
わたしはと言えば少し、いえ、かなりドキドキしていたりします。
この胸の過剰な高鳴りを気付かれていないか心配になるけれど、なるべく呼吸の間隔を浅く長くしてハァハァ言わないように制御。
無意識に手のひらへと感覚が集中して、このまま手をぐーぱーとは言わないまでも微妙に動かしてというか揉みしだいて、もっと柔らかさを堪能してみたいという欲求が盛り上がる。
そんな邪な思考を難しい事とかを考える事で何とか押さえ込もうとするけれど……うう、やっぱり手のひらの中の存在感が大きすぎて無理っぽいです。
どうにか意識を別のものに向けられないでしょうか?
落ち着き無く周囲を見回していると、視線が止まったのはケイさんのうなじ。
ああ、まずいです。
さらに肩揉み中の色っぽい声が勝手に脳内で再生され始めました。
これは、これは泥沼……。
なんだか頭がくらくらとしてきました。
あれ? 目の前が、暗く……。
――――。
なんだか私を呼ぶ声が聞こえる。
「真美、大丈夫?」
「んっ……。あれ? ケイさん?」
目を覚ますと白い布地の盛り上がりの向こうにケイさんの顔があって、心配そうに私を覗き込んでいる。
後頭部にも体温。
この姿勢って……膝枕?
「よかった。目を覚ましたのね」
「一生懸命になってくれるのは嬉しかったんだけど、私の頼みだからってそんなに消耗するほど頑張らなくて良かったのよ」
あれ、なんだか誤解されている気がします。
「え? あの、いえ……そういうわけじゃなくて……」
「でも、本当に助かったわ。調子がいいときとかにはまたお願いしてもいいかしら」
「は、はいっ! 勿論です!」
口の中でゴニョゴニョと言い訳のようなそうでない様な事を言おうとするも、笑顔で膝枕な上に頭を撫でてながら優しくそう言うケイさんの前にはそうとしか答えられず、何となく手のひらに残る柔らかい体温を反芻する事しか出来なかった。
後日、どこかからその話が流れてポルシェ少佐やマイルズ少佐のデスクワークにもお付き合いするようになるのは別の話です。