チョコとロマーニャ娘
「シャーリー! あ~んして」
「へ? あ~ん……お、美味いなこのチョコ」
「へへー、でしょでしょ~? リーネが作ってくれたんだよ。もっと食べて~」
2月13日、今日はあたしの大好きなシャーリーの誕生日。
誕生パーティーも終わって、今はあたしとシャーリーの2人きりの時間。
「いっぱいあるからどんどん食べてね。はい、あ~ん」
「あ~ん……うん、甘くて美味しい」
あたしはお皿の上に山盛りに乗ってる一口サイズのチョコレートを1個また1個とシャーリーの口へと運んでいく。
シャーリーはあたしからのチョコを受け取ると、それを1個また1個とテンポよく食べてくれた。
えへへ、やっぱりあたし達って息の合う名コンビだね。
「ところでルッキーニ、なんでこんなにチョコがあるんだ? はむっ」
「えっとね、フェブル……なんだったっけ? とにかく、明日何かの神祝祭があってブリタニアでは
その日は好きな人にチョコレートを贈る日なんだって」
「へぇ~」
「それでね、あたしも大好きなシャーリーのためにチョコ作ろうと思って、リーネに習って、
試しに何個か作ってみたんだけど……やっぱり初めてだと上手くいかないね」
あたしは、チョコレートの山の底にある形がいびつなチョコをフォークでつつきながら言った。
一目で自分が作ったチョコだと分かるくらいリーネの作ったそれと比べると、見栄えが良くないのが分かる。
でも、シャーリーはそんなこと気にせずにあたしの作ったチョコをぱくっと食べてくれた。
「うん、美味い!」
「本当?」
「ああ。なんてったってルッキーニがあたしのことを想って作ってくれたチョコだからな。
あたしにとっては世界一のチョコだよ」
そう言ってシャーリーは優しく頬笑みながら、あたしのことを優しく抱きしめてくれた。
ぱふぱふで、ふわふわしてて、暖かくて、あたしの大好きな場所。
「ありがと、シャーリー。あたし、今度は綺麗な形のチョコ作ってみせるから、その時はまた食べてくれる?」
「おう、楽しみにしてるぞ。そうだ、こんな話知ってるか? チョコレートって食べ過ぎると鼻血が出るんだってさ」
「え? その話本当なの?」
「う~ん、あたしも噂で聞いた話だから本当のことはよく分かんないんだけどね」
「あはは! なにそれ~」
「ははは! ま、こういう時は笑ったもん勝ちってことだよ」
「それもそうだね。あはは……」
あたし達はそれからしばらくの間、2人で笑い合った。
――シャーリー、誕生日おめでとう。
これからもずっと、2人でバカ騒ぎして一緒に笑い合おうね。
あっ、そう言えばジュンジュンも今日が誕生日なんだっけ。
ジュンジュンも今頃フェル達に祝ってもらってるのかな。
あたしはそんなことを考えながら、シャーリーのおっぱいに顔を埋め、眠りの世界へと落ちていった……
―――――――――――
「竹井」
「なーに、フェル?」
誕生会の後、私は1人で竹井の部屋を訪れていた。
うぅ、なんだかすごく緊張してきたわ。
「その……改めて誕生日おめでとう。これ、私が作ったんだけど良かったら食べて」
「ありがとう……わぁ、美味しそう。チョコレートケーキかしら?」
「うん。今日の誕生会でルチアナが作ったケーキと比べると味は劣ると思うけど……」
「そんなことないと思うけど……はむっ」
竹井が私の作ったチョコケーキをフォークで一口大に切ると、それを口へと運んだ。
「ど、どう……?」
「うん! とっても美味しいわ」
そう言って満面の笑みで微笑む竹井。
「ほ、本当?」
「ええ。良かったらフェルも食べてみる?」
と、フォークで切ったケーキを私に差し出してくる竹井。
あ、あれ? これ、私がプレゼントしたケーキよね?
「はい、あ~んして」
「あ、あ~ん……はむっ」
竹井に言われるがまま口を開けて、自分のケーキを食べる私。
豊かな甘みが口の中にふわっと広がって、とても美味しかった。
「本当に美味しいわ……私ったら天才かも」
「ふふっ、でしょ? ねぇ、今度は私にあ~んして」
上目遣いでそう言う竹井を見て私の胸は一層鼓動を早めて行く。
ちょ、ちょっと何その表情、可愛すぎるじゃない。
オ、オーケーオーケー、落ちつくのよフェルナンディア。
「は、はいあ~ん……」
「あ~ん……うん、やっぱり美味しい。じゃあ今度は私の番ね。はい、あ~ん」
それからしばらくの間私たちは、1つのフォークでお互いにケーキを食べさせ合った。
……まるでリベリオンのおしどり夫婦ね。
「ねぇ、竹井」
「どうしたの、フェル?」
2人で1つのケーキを食べ終わった後、私はベッドに腰掛ける竹井の手をそっと握った。
柔らかくて、暖かみのある私の大好きな手。
「明日って何の日か知ってる?」
「ええ。フェブルウス神祝祭でしょ?」
「うん。パティに聞いたんだけど明日は、ブリタニアでは大切な人にチョコレートを贈る日なんですって。
それを聞いて私、竹井にチョコケーキを作ろうと思ったの。竹井は私にとって大切な人だから……」
私がそう言うと、竹井は使い魔の耳と尻尾を出して私に頬笑みかけてきた。
「へ? ちょっと! なんで使い魔の耳と尻尾を出してるの?」
「ふふっ、フェル可~愛い!」
「きゃっ!」
竹井ははち切れんばかりに尻尾を振りながら、私をベッドに押し倒した。
ちょ、ちょっと! 色々とマズいんじゃないかしらこの状況。
「ふ、扶桑のウィッチって、みんなこんな感じなの?」
「ふふっ、どうかしらね……」
悪戯っぽく笑いながら竹井は、私の唇に自分のそれを重ねてきた。
彼女の手と同じくらい柔らかくて暖かみのある唇だった。
「あぅ……」
「フェル、大好きよ」
そう言ってもう一度口付けを落とす竹井。
――フェデリカ少佐、竹井って本当に『出来るオンナ』ね……色々な意味で。
~Fin~