お嫁さんはどっち?
「え? 私とサーニャちゃんが結婚?」
「うん。エイラさんが昨日そんな夢を見たって」
エイラさんの誕生会の後片付けが終わって、リーネちゃんと部屋でのんびりしていた就寝前。
リーネちゃんは、昨日私とサーニャちゃんが夜間哨戒でいなかった時に起こったある事件の話をしてくれた。
「昨日は本当にビックリしたんだよ。寝てたらエイラさんの部屋から突然叫び声が聞こえてきたんだもん」
「あはは……実際、私がサーニャちゃんと結婚するなんて言ったらMG42持ったエイラさんに追いかけまわされそう……」
エイラさんは本当にサーニャちゃんの事、大事に想ってるもんね。
でも、それ以上にサーニャちゃんはきっとエイラさんの事……
「ねぇリーネちゃん、もしエイラさんとサーニャちゃんが結婚したら、どっちがお嫁さんになると思う?」
「え? どうしたの急に」
「私、どっちかって言うとエイラさんがサーニャちゃんのお嫁さんだと思うんだ。サーニャちゃんと一緒にいると、
エイラさんに守られたいんじゃなくて誰よりもエイラさんの事を守ってあげたいっていう気持ちが伝わってくるんだよね」
昨日夜間哨戒で一緒になった時もサーニャちゃんは、エイラさんの事をどんなに大事に想っているかを私に話してくれた。
エイラさんはサーニャちゃんにあんなに想ってもらって幸せ者だね。
「エイラさんがお嫁さんかぁ……何となく分かるかも。それじゃあ……もし、私たちが結婚したらどっちがお嫁さんになるのかな?」
「……へ?」
突然、リーネちゃんが顔を赤らめながらそんな事を訊いてくるものだから私も思わずドキリとしてしまう。
もう、リーネちゃんその表情可愛すぎだよ。
「えっと、私……できるならリーネちゃんをお嫁さんにしたいかな」
私がそう応えると、リーネちゃんも満面の笑みを浮かべてくれた。
「えへへ、私も芳佳ちゃんのお嫁さんになりたいって思ってたんだ。ねぇ、せっかくだからシミュレーションしてみない?」
「シミュレーション?」
「うん。私、今から芳佳ちゃんのお嫁さんになるから、芳佳ちゃんは仕事から帰ってきた旦那さんの役をやってくれない?」
「疑似夫婦になるって事だね……分かった。じゃあ、早速やってみよう」
「ただいまー」
「お帰りなさい、芳佳ちゃん」
私が一旦外に出て、また部屋の扉を開けるとエプロン姿のリーネちゃんが出迎えてくれた。
リーネちゃんのエプロン姿は台所でいつも見てるのに、何だか今私すごくドキドキしてる……
自分のお嫁さんがエプロンをしてるって考えると、こんなにもドキドキしちゃうんだね。
「ご飯にする? お風呂にする? そ、それともわた、私……?」
リーネちゃんが顔を真っ赤にしながら私に三択を迫ってくる。
そんな表情で迫られたら答えは一つしかないじゃん。
「もちろんリーネちゃん! えいっ」
私は今日一番の笑顔でリーネちゃんをベッドに押し倒した。
「きゃっ! もう、芳佳ちゃんったらせっかちなんだから」
「えへへ……リーネちゃん、耳出して」
「う、うん……」
リーネちゃんは私の指示通り魔力を解放して、使い魔の耳と尻尾を出してくれた。
私がその猫の右耳を思いっきり甘噛みすると、リーネちゃんはくすぐったそうに身をよじった。
「ひゃぅっ! 芳佳ちゃん、くすぐったいよぉ~」
「リーネちゃん、ここが弱いんだね」
私が続いて左耳を噛もうとしたその時、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
「宮藤さん、リーネさん」
「「ペ、ペリーヌさん!?」」
振り返るとそこにいたのは、この部屋の3人目の主であるペリーヌさんだった。
「あなた方は一体、何をなさっているのかしら?」
ペリーヌさんは口調こそいつも通りだったけど、背後からは殺気のようなものを漂わせていた。
こういう時は何て答えればいいんだろう……
「……えっと、よ、夜の営み?」
「よ、芳佳ちゃん!」
「え? 間違った事は言ってないよね?」
「あ、あなた方という人は! な、何て破廉恥な~! もう、知りませんわ!!」
ペリーヌさんは顔をりんごのように真っ赤にさせて、その場から去ってしまった。
「あ、ペリーヌさん行っちゃった……」
「もう……どうするの? 芳佳ちゃん。ペリーヌさん、怒りを通り越して呆れてたよ」
「ペリーヌさんには後で事情を説明するよ。それより今は……」
私はさっき噛み損ねたリーネちゃんの左耳を右耳と同じように甘噛みする。
リーネちゃんもさっきと同じようにくすぐったそうに身をよじらせた。
「リーネちゃんの事、もっと知りたいかな」
「はぅ……芳佳ちゃんのえっち……」
――リーネちゃん、私の可愛いお嫁さん。これからもずっと一緒にいようね。